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  5. 2006年5月 Vol.10

内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2006年5月 Vol.10

特別インタビュー
「内視鏡の洗浄・消毒も、重要な感染対策として見直したい」

名古屋大学大学院医学研究科教授(機能構築医学専攻 生体管理医学講座 救急・集中治療医学)国立大学附属病院感染対策協議会会長武澤 純 先生

この記事のテーマ
  • ガイドライン
  • ICT活動
[画像] 名古屋大学大学院医学研究科教授(機能構築医学専攻 生体管理医学講座 救急・集中治療医学)国立大学附属病院感染対策協議会会長 武澤 純 先生

平成12年に発足した国立大学附属病院感染対策協議会は、国立大学附属病院の感染対策の標準化をはかるとともに、厚生労働省の事業とも連携して日本の病院感染対策レベルの向上に努めています。同感染対策協議会会長を務めておられる名古屋大学大学院医学研究科教授の武澤純先生から、同感染対策協議会の意義や活動および内視鏡関連の感染対策についてうかがいました。

国立大学附属病院感染対策協議会について

感染対策の標準化をはかるために協議会を発足

国立大学附属病院感染対策協議会の趣旨および発足の背景などをお聞かせください。

武澤病院感染の発生を低下させるために、全国42の国立大学附属病院の病院感染対策の標準化をはかることが感染対策協議会の趣旨です。

感染対策協議会を発足させる契機となったのは、以前、科学技術庁(現文部科学省)でおこなったカテーテル関連血流感染防止のガイドライン作りを担当したときでした。外科とICUを有する全国200床以上の病院でカテーテル感染の調査をおこなった結果、病院によって管理の仕方にバラツキがあることがわかりました。これは、我が国には病院感染対策のガイドラインがないことに要因があり、その必要性を痛感しました。それでガイドラインの作成という形で感染対策の標準化をはかろうとしました。

国立大学附属病院という枠組みで協議会を作ったのは、病院の規模やレベルに差が少なく、連携をとって動きやすいからです。

協議会での主な活動内容を教えてください。

武澤「病院感染対策ガイドライン」の策定のほか、病院感染の発生動向を把握するためのサーベイランスの研修、感染対策に関わる医師、看護師に対する教育システムの構築、医療従事者の血液曝露事故対応システムへの参加、病院感染アウトブレイク時の要因分析・改善支援システムの整備などをおこなっています。それらの活動は、表の各作業部会を中心におこなってきました。

表:国立大学附属病院感染対策協議会作業部会

ガイドライン作業部会 委員長 : 一山智先生(京都大学)
サーベイランス作業部会 委員長 : 荒川創一先生(神戸大学)
教育作業部会(ICD) 委員長 : 賀来満夫先生(東北大学)
教育作業部会(ICN) 委員長 : 加藤祐美子先生(信州大学)
医療廃棄物作業部会 委員長 : 林 純先生(九州大学)
職業感染対策作業部会 委員長 : 森澤雄司先生(自治医科大学)
歯科医師作業部会 委員長 : 栗原英見先生(広島大学)
薬剤師作業部会 委員長 : 仲川義人先生(山形大学)

病院感染対策ガイドラインの統合化をはかる

ガイドラインについてご説明ください。

武澤平成14年に策定し、その後平成15年に改定した第2版を「病院感染対策ガイドライン」(発行:じほう)として発行しています。本ガイドラインは、病院感染防止策の標準化を目指したものです。標準化のためには科学的根拠の強い論文と専門家の合意形成が必要であり、できるだけ多くの論文を引用し、協議会のメンバーの合意によって策定しました。本ガイドラインで示した各対策には、エビデンスレベルに基づいた論文ランク付けと推奨レベルのランク付けをしている点が特徴の一つです。

国立大学附属病院のガイドラインですが、一般の病院でも活用していただきたいと思っています。

病院感染対策ガイドライン

「病院感染対策ガイドライン」
発行:じほう
編集:国立大学附属病院感染対策協議会

厚生労働省でも感染対策ガイドラインを作っていますね。

武澤厚生労働省の研究班とも連絡を取り合っています。最終的には厚生科学研究班で日本の病院感染対策を見直して一つのガイドラインに統合されるだろうと思っています。そして、そのガイドラインが日本の医療における感染対策の標準化を推進し、それと合わせて感染対策の機能評価を行えば、国全体の感染対策のレベル向上になるだろうと期待しています。

病院感染対策におけるICTの課題

ICTには病院感染対策の統一をおこなう権限が不可欠

病院感染対策の組織としてICT(Infection Control Team)が機能するための要件を教えてください。

武澤ICTの構成メンバーには、医師、看護師のほか、薬剤師、検査技師、管理栄養士、事務職員を加えます。病院感染防止に関するコンサルテーション、サーベイランス、インターベンション(介入)、アウトブレイク対応が主な業務ですが、病院感染に関する研究と院内への教育・研修にも力を注いでもらいたいと思います。医師はICD、看護師はICNの資格を持つ方がメンバーになることが望まれます。薬剤師も今年から感染制御専門薬剤師認定制度が発足しましたので、できれば認定資格を持つ方に抗菌薬や消毒薬の適正使用の教育と指導を率先しておこなってもらうことを期待しています。

そして、ICTにとって重要なことは、その上部機関であるICC(Infection Control Committee)とともに病院感染対策に関する権限と責任が付与されることでしょう。消毒薬や抗菌薬の適正使用のほか、清掃法、アウトブレイク時の病棟や手術室の閉鎖・要因分析、医療器具類の洗浄・消毒などの衛生管理に関する権限を持つべきです。病院感染対策は病院全体で統一された対策をおこなうことが重要であるため、診療科や病棟ごとでの別々の衛生管理法や消毒薬、抗菌薬の使用は認められません。

武澤 純 先生

国立大学附属病院感染対策協議会会長
武澤純先生

内視鏡の洗浄・消毒は機械化して標準化をはかる必要がある

ICTが院内の各部署をラウンドする時にも権限を持ってインターベンション(介入)することが望まれるわけですね。

武澤そうです。ICTの命令は病院長の命令であるというようにするといいでしょう。

感染対策協議会では、自施設の感染対策をチェックしてもらうことを希望する大学病院に協議会メンバーが訪問チェックするサイトビジットをおこなっています。2日間くらいチェックすると、標準から逸脱している部分がみえてきます。施設間で相互訪問することによって、自施設の感染対策が客観的に評価される効果があります。病棟や中央診療施設内でおこなっている感染対策を外部の専門職に評価して頂いて見直すことが重要でしょう。

先生が他の医療施設の内視鏡室をご覧になって気がついた点をご指摘ください。

武澤スコープを用手で洗浄した後、薬液が入ったトレイで消毒し、その後、用手にて再度すすぎをしているケースをみかけましたが、用手による洗浄・消毒はどうしても個人差が生じてしまいます。内視鏡診療をおこなう診療科では洗浄・消毒器を導入し、洗浄・高水準消毒方法の標準化を図るべきでしょう。

内視鏡検査を受ける患者さんにはスコープの洗浄・消毒を気にする方も少なくないため、確実に1例ごとに洗浄・高水準消毒を行っていることをアピールしている施設があります。

武澤少なくともスタンダード・プリコーション(標準予防策)に基づいて、感染症の有無にかかわらず全ての患者さんに使用した全てのスコープは洗浄と高水準消毒をおこなわなくてはなりません。

医療安全のなかでも病院感染対策に関する情報公開は社会的ニーズとして高まっている状況もあって、患者さんが病院を選ぶための情報開示を義務づける医療法の改正がいま進められています。

内視鏡関連の感染対策

病院全体の内視鏡機器類は、ICTまたは内視鏡室が一元管理することが理想

内視鏡室での感染対策は日本医療評価機構の評価項目に加わり、その重要性が高まりましたが、まだ院内全体で統一して管理する感染対策として位置づけられていない施設が多いのが現状です。

武澤内視鏡による感染リスクがわかりにくいことが、病院全体で取り組みにくい要因の一つではないでしょうか。外来患者さんが多いため、フォローアップしてデータをとるのは容易なことではないでしょうが、内視鏡に関連した感染は事例報告としてそれなりの数が論文化されているのも事実です。何らかの監視システムでモニターしていくことも検討してもらいたいと思います。

実際、国立大学病院でも内視鏡によると疑われる交差感染が起きています。内視鏡を使う診療は、消化器科だけでなく、呼吸器科、耳鼻咽喉科、心臓血管外科などでもおこなわれている状況からみると、内視鏡による感染防止には内視鏡室だけでなく病院全体で取り組む必要があるでしょう。

武澤 純 先生の写真

国立大学附属病院感染対策協議会会長 武澤純先生

病院全体で内視鏡感染対策に取り組む具体例をアドバイスいただけますか?

武澤まず、病院として各診療科の内視鏡関連機器や薬液などの使用方法を中央管理して標準化する必要があります。たとえばICTまたは消化器内視鏡室が洗浄・高水準消毒方法のマニュアル作成や、物品管理に主導的に関与するなどが考えられます。重要なことは、一元管理することです。

全国統一の病院感染対策ガイドラインに内視鏡関連感染対策の追記を検討したい

軟性内視鏡の洗浄・消毒についていえば、日本消化器内視鏡学会と日本消化器内視鏡技師会から洗浄・消毒に関するガイドラインが出ていますが、消化器以外の分野を網羅した内視鏡全体のガイドラインはありません。

武澤それぞれの学会がガイドラインの作成に積極的に関与していただきたいですね。長崎大学教授の河野茂先生が、気管支内視鏡の洗浄・消毒スタンダードマニュアルの作成を試みた例はありますが、今はそれを更に進める必要があります。また、消化器内視鏡の洗浄・消毒ガイドラインも、随時最新の根拠と推奨を明確化して更にリニュアルされていく事を期待しております。

それらに基づいて、院内で統一したマニュアルを作成し、実践するようにしたらよいと思います。

しかし、マニュアルを作成するだけでは不十分で、内視鏡の洗浄・消毒に関する教育研修を院内において横断的におこなわなければなりません。その場合、責任を持って教育担当者をICTの中に決めておく必要があります。

今後も内視鏡関連感染対策の重要性は増していくと思われます。

武澤内視鏡は粘膜に触れることから考えても感染リスクが高いわけですから、感染対策上重要な医療器具であることを認識すべきです。感染対策協議会の「病院感染対策ガイドライン」には内視鏡関連の感染対策については記載されていませんが、本年、厚生労働省にて作成される予定の全国統一の感染対策ガイドラインには加えられると思います。

この記事はNews Scope Vol.10(監修: 日本消化器内視鏡技師会 安全管理委員会 発行元: ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社)からの抜粋です。