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内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2006年5月 Vol.10

Practice
軟性内視鏡の洗浄・消毒プロセスを院内各部署で標準化

大阪府済生会吹田病院

この記事のテーマ
  • 病院機能評価
  • 耳鼻科
  • 業務改善
[画像] 大阪府済生会吹田病院

昭和20年に開設以来大阪府吹田市およびその周辺の基幹病院として大きく発展している大阪府済生会吹田病院を訪問しました。同院では地域から信頼と正しい認識を得るため、第三者機関の評価としてISO9001およびISO14000とともに日本医療機能評価機構の認証を取得しています。医療機能評価機構については、平成13年に続いてVer.5での更新審査を受審して今年2月に認定証の交付を受けました。受審に際して内視鏡関連の感染対策強化をはかり、洗浄消毒器や消毒剤の院内統一化などをおこないました。そこで、内視鏡室室長の小畑寛純先生をはじめ、耳鼻咽喉科科長の東川雅彦先生、手術室看護科科長の尾上淳子さんから主に内視鏡に関する洗浄・消毒についてお話いただきました。

H.pylori菌の培養・薬剤感受性試験をルーチンで実施

内視鏡室での診療範囲や特徴などを教えてください。

小畑内視鏡室では、健診センターや一般外来の内視鏡検査だけでなく、EMR(粘膜切除術)、ESD(粘膜下層剥離術)、EIS(硬化療法)、EVL(静脈瘤結紮術)などの治療的内視鏡術、放射線科でのERCPなどの胆道系の処置、など幅広く対応しています。救急センターとは連携して24時間オンコール態勢を敷いており、救急疾患に対する消化管出血の内視鏡的止血術などをおこなっています。

ほかに内視鏡検査での特徴として、内視鏡でのH.pylori除菌療法が保険適応になる以前の平成7年頃から、H.pylori菌の培養・薬剤感受性試験をルーチンでおこなっています。これらをルーチンにおこなうことによって、薬剤耐性のあるH.pylori菌に対しても除菌療法を積極的におこなうことができ、高い除菌率が得られています。また、炎症性腸疾患専門外来を開設しており、難治性の潰瘍性大腸炎患者さんやクローン病患者さんに対して白血球除去療法や免疫療法などをおこなっています。東海、中四国など他府県からの通院患者様もおられます。

小畑寛純先生

(消化器内科)内視鏡検査室室長
小畑寛純先生

平成10年から全例で高水準消毒を励行

内視鏡の洗浄・消毒はどのような方針でおこなっておられますか?

小畑スタンダード・プリコーション(標準予防策)の考え方のもとに、平成10年から全例で高水準消毒を励行しています。未知の感染症もありますし、HIVも簡単に検査することはできませんから、限られた感染症の有無をチェックして洗浄・消毒方法を変えることには問題があります。洗浄消毒器で洗浄・高水準消毒をしていますが、初期の段階では予備洗浄でのブラッシングなど洗浄方法については私の方から具体的に指導していました。近年は、スタッフがよく勉強をして自ら積極的に改善に努めており、私が口を出すことはほとんどありません。看護師4名中、3名が消化器内視鏡技師の資格を取得しており、スタッフ全員の感染防止に対する意識も高くなっています。

小畑寛純先生

先生ご自身が内視鏡の洗浄・消毒方法まで細かく指導されるケースは少ないと思います。

小畑それは、私自身の体験によってもたらされたトラウマのようなものがベースにあります。医師になる前の20歳の時内視鏡検査を受けたのですが、その後しばらくして十二指腸潰瘍に悩まされることになりました。今になって考えれば、あの時の内視鏡検査でH.pylori菌が移ったのではないかと疑っています。また、医師になってから、今ではH.pylori感染が原因と判明している内視鏡検査後に発生した急性胃粘膜病変(AGML)の症例を何例か経験しています。このような経験から、安全な内視鏡診療をおこなう前提として、最善の内視鏡の洗浄・消毒をしなければならないという想いを強く持っています。

内視鏡室内の洗浄・消毒コーナー

内視鏡室内の洗浄・消毒コーナー

院内の軟性内視鏡の洗浄・消毒方法は内視鏡室を基準に統一化をはかる

日本医療機能評価機構のVer.5.0で再審査を受けられましたが、内視鏡室での受審準備はいかがでしたか?

小畑Ver.5.0の内視鏡室の感染対策評価項目をみると、既にマニュアル管理などの項目全てをクリアしていることがわかりましたので、受審のためにあえて準備をすることはありませんでした。

昨年、消毒剤をグルタラール製剤からフタラール製剤に変更し、洗浄消毒器も更新しましたが、それは日本医療機能評価機構の受審のためというよりも、昨年2月に厚生労働省から出された通達「グルタルアルデヒドによる労働者の健康被害防止について」がキッカケでした。空気中濃度の測定を行うにも費用が必要になりますし、測定結果によっては改善措置も必要になってくるため、以前より申請していたフタラール製剤への切替えが認められました。洗浄消毒器については、従来機が老朽化したため、更新を検討していた時期と重なったことが理由でもありました。

一方、日本医療機能評価機構のVer.5.0に内視鏡室の感染対策が加わったことは、内視鏡関連の感染対策意識が院内全体で高まることにつながり、そのことが院内全体の消毒剤と洗浄消毒器の導入・更新を後押ししたといえるでしょう。

耳鼻咽喉科や中央材料室、放射線科においても、同時期に内視鏡の消毒剤と洗浄消毒器を統一されましたね。

小畑日本医療機能評価機構の再審査のための院内医療安全管理委員会が感染対策の強化をはかる一環として、内視鏡室を基準に、院内の軟性内視鏡に関する洗浄・消毒の統一化をはかるべきと判断したためです。内視鏡の洗浄・消毒に関しては、歴史も古く、検査件数も圧倒的に多い内視鏡室の方法に合わせ、その他の部署でも内視鏡室と同じ消毒剤・洗浄消毒器を使えば、院内で使用する内視鏡全ての質管理の統一化が可能になります。当院では、取り扱い方法などは、内視鏡室の看護スタッフが指導しています。

内視鏡室に備えている「洗浄・消毒マニュアル」

内視鏡室に備えている「洗浄・消毒マニュアル」

洗浄・消毒マニュアルについては、消化器内視鏡学会と消化器内視鏡技師会のガイドラインに基づいて内視鏡室でマニュアルを作成しており、このマニュアルに準じた形で、耳鼻咽喉科、中央材料室、放射線科でも洗浄・消毒マニュアルを作成しています。私も、院内の内視鏡に関する感染対策については積極的に相談に乗っています。

耳鼻咽喉科での内視鏡洗浄・消毒対策

耳鼻咽喉科領域での内視鏡による1日当たりの診察件数と内視鏡の本数などを教えてください。

東川1日の内視鏡診療件数は、10〜20件くらいです。内視鏡は全部で6本あり、うち5本が観察用、1本が処置用。

東川雅彦先生

耳鼻咽喉科科長
東川雅彦先生

「従来の鼻咽喉ファイバースコープ用洗浄器では操作部・付属部分が消毒できなかった」

内視鏡診療での感染対策についておうかがいします。

東川耳鼻咽喉科のスコープは、消化器内視鏡などと比べて感染のリスクは少ないだろうと思われがちです。しかし、内視鏡による副鼻腔観察ではMRSAの感染が危惧されるほか、HIVや未知のウイルスなどによる重篤な合併症を引き起こす可能性は否定できません。何かが起こる前に予防することが重要です。当院では、検査前後の手洗い励行の徹底と、内視鏡の洗浄・消毒について改善をはかりました。

改善とはどのようなことですか?

東川以前は、スコープの挿入部だけを筒型容器にいれて消毒する鼻咽喉ファイバースコープ用洗浄器を使っていましたが、それでは挿入部以外の操作部や付属部分は消毒できませんでした。事務サイドに「スコープ全体の洗浄・高水準消毒が出来る洗浄消毒器が欲しい」と掛け合っていたところ、他の部署でも同じように、スコープの洗浄消毒に不安を抱いていることがわかり、院内で統一して導入することになったという経緯があります。やはり、軟性内視鏡の洗浄・消毒については、院内で同じ消毒剤、同じ洗浄消毒器を使用し、マニュアルも統一化した方がよいと思います。

以前は、不十分な消毒をカバーするために、洗浄・消毒マニュアルを作成しており、そのことでスタッフにも大きな負担をかけていたのですが、洗浄消毒器が入ったことで負担の軽減もできました。

手術室、中央材料室での内視鏡洗浄・消毒対策

手術室で主に使用する軟性内視鏡にはどのようなものがありますか?

尾上消化器内視鏡などは消化器科の先生が内視鏡室から手術室へ持参されますので、手術室で常備しているのは2本の気管支スコープです。分離肺換気のための気管チューブ挿入時や挿管困難、咽頭・喉頭部に解剖学的な異常があると疑われる場合の観察のため、又術後の喀痰吸引などに使用しています。ですから1日に何回も使用することもあれば、1、2週間全く使わないこともあります。

尾上淳子さん

手術室看護科科長
尾上淳子さん

「スコープの確実な洗浄・消毒には洗浄消毒器は欠かせません」

洗浄・消毒はどのようにおこなっていますか?

尾上昨年、隣接する中央材料室に洗浄消毒器が1台入りましたので、手術室とICUで使用する内視鏡は、その洗浄消毒器で、洗浄・消毒をおこなっています。以前は、使用した気管支スコープを予備洗浄した後、離れた内視鏡室まで運んで、内視鏡室の洗浄消毒器で洗浄・消毒をしてもらっていました。内視鏡室の状況に関係なく、突然持って行きますので、多忙な内視鏡室ではすぐに処理してもらう事が難しく、手術室やICUのスコープはどうしても後回しになり、予定通りの段取りが組めずに困ったこともありました。

用手洗浄後、消毒剤に浸漬する方法もありましたが、扱う人によって個人差がでてしまうため、確実な洗浄・高水準消毒をおこなうには洗浄消毒器は欠かせません。そこで、手術室およびICUのスコープ専用に洗浄消毒器の購入申請をしていました。昨年、日本医療機能評価機構による再審査の受審準備で感染対策を充実させようという気運が院内で高まったこともあり、病院で統一したスコープの洗浄・高水準消毒を実施するため、新たに洗浄消毒器を中央材料室に導入してもらいました。感染対策は病院全体で取り組む必要性があることを痛感しました。

日本医療機能評価機構による審査で、手術室の感染対策の評価はいかがでしたか?

尾上日本病院感染サーベイランス(JNIS)システムによる手術部位感染(SSI)サーベイランスに整形外科が2年間参加している実績が評価されました。この4月から他科にもサーベイランスを広げるとともに、電子カルテにもリンクさせる予定です。

施設の紹介

大阪府済生会吹田病院

社会福祉法人恩師財団 大阪府済生会吹田病院

大阪府吹田市川園町1-2
病院長 : 安野洋一
病床数 : 500床
1日平均外来患者数 : 1014.7人(H17年度)

社会福祉法人恩師財団 大阪府済生会吹田病院のウェブサイト

大阪府済生会吹田病院 スタッフのみなさん

消化器内視鏡/検査・診療の概要

年間検査件数 : 9,134件(平成17年度)
 (内訳)
  上部 5,315件
  下部 2,744件
  ERCP 227件
  治療内視鏡(粘膜切除術等他) 848件

スコープ本数 : 40本
 (内訳)
  上部 : 23本(EUS×2本、2チャンネル×2本、ERCP用×4本含む)
  下部 : 17本(EUS×1本、2チャンネル×1本含む)

洗浄消毒器設置台数 : 3台
検査ベッド数:3台
医師数: 9名(うち消化器内視鏡指導医2名、内視鏡専門医3名)
スタッフ数 : 看護師4名(うち消化器内視鏡技師3名)、看護助手1名、事務2名