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  5. 2006年5月 Vol.10

内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2006年5月 Vol.10

誌上セミナー
内視鏡室のリスクマネジメント 〜①医療従事者の心得とインフォームド・コンセント

弁護士 中村・平井・田邊法律事務所 中村 隆 先生

この記事のテーマ
  • リスクマネジメント
[画像] 中村・平井・田邊法律事務所 弁護士 中村 隆先生

内視鏡室のリスクマネジメントを考えるとき、医療従事者として法的責任に関する知識を知っておくことも必要です。医療側の弁護士として、医療訴訟に携わる一方、病院関係者からの講演依頼に応えておられる弁護士の中村隆先生に誌上レクチャーをお願いしました。

リスクマネジメントの前提は、職業倫理に対する自覚

日本医療機能評価機構の調査報告によると、大病院では、平成17年度集計で平均して1年間に4件の割合で重大な医療事故が起きています。各病院でリスクマネジメントへの取組みが行われていますが、医療事故は減らないばかりか増えており、医療事故裁判も増加しています。最高裁の統計によると、全国の裁判所に新たに提訴された医療訴訟件数は平成10年1年間で632件だったのが、平成16年には1,107件となっています。

医療事故のうち医療従事者の過失による医療過誤の原因として多いのが、注意力欠如などのうっかりミス、患者・家族との信頼関係の欠如・インフォームド・コンセントの欠如、医学知識・技術の未熟などです。これらは医療従事者の職業倫理に対する自覚の欠如であるといえます。医療法の第1条には、表の通り“良質かつ適切な医療を提供し、適切な説明を行い患者の理解を得るように努める”と、明記されています。これが医療の基本理念であり、院内感染対策や事故防止対策などのリスクマネジメントに取組む際に、根底におくべきことを忘れてはならないと思います。

すべての患者を感染者とみなすスタンダード・プリコーションの考え方をもとに感染対策を講じるなど安全対策を最優先課題としなければなりません。コストを理由に感染対策が不十分だった結果として健康被害が生じた場合、投ずべきコスト以上の多額の医療紛争費用や保険料増加などの負担をもたらすことも医療経営者は知っておくべきでしょう。

事後の説明もインフォームド・コンセントの範囲

医療事故裁判のほとんどでは説明義務違反が問われています。インフォームド・コンセントが不十分で、医療法の第1条にある医療従事者と患者との信頼関係が欠けていることが患者サイドから医療事故裁判を起こした大きな要因になっているといえます。

内視鏡診療でのインフォームド・コンセントの現状はどうでしょうか? 内視鏡による手技は標準化されていますから、ポリペクトミーなどの処置をする場合は、定型文書による説明文を作成して、説明内容を充実することが求められます。説明文には、日本消化器内視鏡学会から発表された偶発症率も書くようにしましょう。危険性の説明をしないと、説明義務を尽くしたことにはなりません。もちろん、文書を渡すだけでなく、平易な言葉で判りやすく説明しなければなりません。

適切な説明をするには、その前提として、患者固有の情報を吸い上げることが求められます。問診の充実がインフォームド・コンセントには重要な要素になりますので、既往歴や薬剤などのアレルギー歴は必ず確認するようにします。

検査や治療前の説明と理解だけでなく、副作用や危険が発現したときの事後説明と理解もインフォームド・コンセントの範囲になります。患者側の目線から予想しない事態が起きたときや医療事故が発生したとき、事故後の初期対応や説明が不十分で理解が得られなかった時に、医療訴訟を起こされることが多いのが現状です。内視鏡室では、患者への説明は主に内視鏡技師をはじめとするコメディカルが担っていますので、患者との信頼関係をつくりながら、患者の目線に立って丁寧に問診及び説明をしていただきいと思います。

<表> 医療法抜粋

【医療法第1条の2(医療提供の理念)】
医療は、生命の尊重個人の尊厳の保持を旨とし、医師、看護師その他の医療従事者と患者との信頼関係に基づき良質かつ適切なものでなければならない。
【医療法第1条の4(医師らの責務】
医師・薬剤師・看護師ら医療の担い手は、第1条の2の理念に基づき、良質かつ適切な医療の提供を行うように努め、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るように努めなければならない。

* 下線は筆者加筆