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内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2006年10月 Vol.11

座談会
”消化器内視鏡看護”を考える 〜内視鏡看護業務の確立に向けて〜

富山大学医学部 光学診療部・部長 富山大学医学部 臨床看護学・教授 日本消化器内視鏡技師会看護委員会顧問
田中 三千雄 先生

日本消化器内視鏡技師会副会長・看護委員会委員長(多賀須消化器科・内科クリニック看護師長・内視鏡技師)
堀内 春美 さん

日本消化器内視鏡技師会・看護委員会副委員長(看護学修士、富山赤十字病院看護係長・内視鏡技師)
大橋 達子 さん

この記事のテーマ
  • 内視鏡業務
  • ガイドライン
[画像] 田中 三千雄 先生、堀内 春美 さん、大橋 達子 さんの写真

消化器内視鏡検査の普及と治療的内視鏡術の進歩に伴って、内視鏡室における看護業務の重要性が高まっています。そこで、消化器内視鏡看護業務の確立に指導的役割を担っていただいている富山大学医学部・田中三千雄教授と消化器内視鏡技師会看護委員会委員長を務めておられる堀内春美さん、同副委員長の大橋達子さんから、内視鏡看護委員会の活動趣旨、消化器内視鏡看護(以下、内視鏡看護と略)の確立に求められる点などをお伺いしました。

内視鏡看護業務確立の必要性

1999年の技師会研究会で、内視鏡看護を採り上げた

日本消化器内視鏡技師会(以下、技師会と略)に内視鏡看護委員会が設置された経緯を教えてください。

田中第42回日本消化器内視鏡技師研究会が、金沢市で1999年に開催された時でした。私が勤務する富山医科薬科大学附属病院(当時)の江口富子婦長(呼称:当時)が当番会長だったことから、ワークショップのテーマについて相談を持ちかけられ、即座に「今こそ“内視鏡看護”だ!」と答えたことが契機になったようです。内視鏡看護という言葉が初めて公に使われたのが、その研究会でした。ワークショップは、堀内さんと堀川幸枝さん(福井医科大学附属病院・当時)の司会のもとで、大橋さんが演者の一人として内視鏡看護の概念について発表されました。いずれの発表も私の期待に違わない素晴らしい内容でした。ワークショップの最後に特別発言を仰せつかった私は「今、“内視鏡看護”は大きな産声を上げました。今後、技師会で、この“内視鏡看護”を大切に育ててほしい」と述べました。

田中三千雄先生

富山大学医学部 光学診療部・部長 富山大学医学部 臨床看護学・教授 日本消化器内視鏡技師会看護委員会顧問
田中 三千雄 先生

「内視鏡看護の原点は、患者さんの心と体を深く思いやることです」

堀内1999年の5月にワークショップがおこなわれた後、同年11月に準備委員会を立ち上げました。翌2000年4月に技師会で内視鏡看護委員会として設置が認められ、私と大橋さんを含めた5名が委員となって活動をはじめました。

堀内 春美 さん

日本消化器内視鏡技師会副会長・看護委員会委員長(多賀須消化器科・内科クリニック看護師長・内視鏡技師)
堀内 春美 さん

「専門性が高い内視鏡看護業務の一層の確立をはかっていきたい」

医師の立場からも内視鏡看護業務の確立が望まれた

先生が、内視鏡看護を採り上げる提案をされた理由をお聞かせください。

田中消化器内視鏡技師資格者の8割以上が看護師の資格を持っています。したがって、内視鏡室では、看護師さんが“内視鏡技師”の仕事と“内視鏡看護”の仕事を同時におこなっているのが現状です。しかし、高度化する内視鏡診療において、看護業務と技師業務を同時におこなうことは難しくなります。患者さんの立場やリスクマネジメント面、感染対策面からも看護業務と技師業務は分業化すべきです。

とくに治療内視鏡では、医師の立場からすると治療を成功させることに集中しなければならず、治療中にバイタルサインや患者さんの精神的な状態を専門的な知識をもった看護師さんに看てもらわなければなりません。そのためにも内視鏡看護業務を確立してもらいたい、と願っていました。

大橋内視鏡室での業務としては、看護的業務と技師的業務、事務的業務の3つに分類できますが、内視鏡看護という言葉は一般的にはありませんでした。

大橋 達子 さん

日本消化器内視鏡技師会・看護委員会副委員長(看護学修士、富山赤十字病院看護係長・内視鏡技師)
大橋 達子 さん

「内視鏡看護業務は、看護師としてやりがいのある仕事だと自負しています」

内視鏡看護業務確立に向けた活動

消化器内視鏡看護セミナー開催にあわせて本を出版

内視鏡看護委員会の目的と活動の概要を説明してください。

堀内主な目的は、内視鏡看護の質の向上と専門分野としての内視鏡看護の確立であり、そのためには内視鏡看護業務を文章化していくことが重要になります。具体的な活動として、先ずおこなったことは、2003年4月に開催した第1回消化器内視鏡看護セミナーでした。内視鏡看護の確立のために、安全で安楽な内視鏡検査を受けていただくための看護を基礎から学習しましょう、と呼び掛けたセミナーでした。大橋さんからは、内視鏡看護とは何か、をまとめた「内視鏡看護・総論」を講義してもらい、田中先生に総括していただきました。その後、セミナーは毎年開催し、今年は兵庫県淡路島で第4回を数えました。

大橋第1回のセミナーの開催に合わせて、文章化作業を進めてきた成果を本にまとめて、『消化器内視鏡看護』(日総研)と題して出版しました。内視鏡看護業務に関する教科書的な本として多くの方々に活用していただいており、看護関連の本としてはよく読まれているようです。

「「消化器内視鏡看護」 監修:田中三千雄 編者:堀内春美、大橋達子」

「消化器内視鏡看護」
監修:田中三千雄
編者:堀内春美、大橋達子
日総研刊、2,800円(税別)

内視鏡看護に関するエビデンスの構築が必要

内視鏡看護業務をどのように体系化されたのでしょうか?

大橋内視鏡看護業務を、大きく①直接看護、②間接看護、③診療の補助・専門的看護、④管理の4つに分類しました。そして、筒井の看護業務分類コードを参考に、各内視鏡看護業務の分類コード化を進めていきました。内視鏡看護について共通の言葉があってこそ、情報交換が可能になります。

一方、日本看護協会や病院の看護部などへも内視鏡看護について認知と理解を促すために、内視鏡室の看護業務量調査をおこなって、日本看護学会の看護管理の部門で2年連続して発表しました。内視鏡室にしかない看護業務の専門性や特殊性を看護部長さんなど看護部門の管理者の方にある程度訴えることができた、と思います。

堀内「内視鏡室は忙しいから看護師を増員して欲しい」というだけでは十分に説得できませんが、大橋さんがまとめたように自分たちがおこなっていることをデータに示し可視化することが大事です。第3回の消化器内視鏡看護セミナーでは田中先生から、エビデンスの構築について講義していただきました。

田中内視鏡室における、看護師、内視鏡技師、あるいは医師の臨床現場で培ってきた経験と勘は貴重で重要なものです。それを何らかの形で科学のレベルまで高めることができればより広く伝えていくことができます。そこで内視鏡看護についても科学的根拠に基づき論文作成していくことが重要になります。

内視鏡技師業務との業務整理はどのようにされていますか?

大橋内視鏡看護には、看護師でなくてもできる部分と看護師でなければできない部分に分けられます。そこを明確にしていくことで業務整理ができると思っています。とくに直接看護は看護師が担うべき業務でしょう。

田中内視鏡技師制度と看護師制度では、お互いにマ ッチしない部分が少なからずあるのが現状ではないでしょうか。内視鏡室では、内視鏡技師、看護師、医師がそれぞれ専門性を高めて、3者が中心となったチーム医療の体制を強固にしていくことが望まれます。(図参照)

図 内視鏡におけるチーム医療

図 内視鏡におけるチーム医療
田中三千雄、「内視鏡看護」(日総研)より

今後の内視鏡看護業務に求められること

安全な内視鏡看護のために洗浄・消毒体制を確立した

技師会の安全管理委員会からは洗浄・消毒に関するガイドラインを作成して普及に努めていますが、内視鏡看護委員会でも感染対策や安全は共通した課題ですね。

堀内そうです。私たちが目指していることは安全で安楽な内視鏡検査を受けて いただくための看護ですから、安全管理委員会とオーバーラップするところは多いですね。スタンダードプリコーションに基づいた内視鏡の洗浄・消毒を行なうなど、感染管理・対策がしっかりとできていなければなりません。今後は、安全管理委員会と共同で活動していく必要性を感じています。

大橋私の施設では、日本医療機能評価機能のVer.5を受審するために、洗浄・消毒体制の見直しと確立をはかり、看護に費やす時間を増やすようにしました。直接看護の部分では検査中の患者さんの状態を看るほか、抗凝固剤のチェックやセデーションした後の患者さんの状態を管理するなど安全な内視鏡検査・治療に関わる重要な仕事は多いですね。したがって、内視鏡の洗浄・消毒は洗浄消毒器でおこなうようにして、患者さんに関わる時間を少しでも増やすことが望まれます。

看護基準と教育に関するガイドラインを作成中

看護委員会の今後の活動について教えてください。

堀内昨年「内視鏡看護記録ガイドライン」を作成して発表しましたが、現在、内視鏡看護教育と内視鏡看護基準に関するガイドラインを作成するためにワーキンググループを組んで取組んでいるところです。今後は各施設でそれをもとにマニュアルを作ってもらいたい、と願っています。

第4回消化器内視鏡看護セミナーでは、上田道子さん(西神戸医療センター・看護師長)から「内視鏡における新人教育」と題する講義をおこなってもらいましたが、看護師長さんも多く聴講されて「役に立った」といわれていました。教育に関するガイドラインのニーズは高いようです。

大橋内視鏡看護師を日本看護協会の認定看護師として認めてもらうようにアプローチしていくことも、今後の課題です。実は、1度申請をしたのですが、内視鏡看護に関する社会的認知が不十分であるという理由で却下された経緯があります。

最後に今後の抱負などをお聞かせください。

堀内いつも内視鏡看護セミナーにはたくさんの方々が参加され、熱心に聴講されています。その期待にお応えするためにも、専門性が高い内視鏡看護業務の一層の確立をはかっていきたいと思っています。

大橋内視鏡看護業務は、患者さんとは短い時間の関わりですが、前処置からお帰りになるまで一貫した対応ができます。また、患者さんにとってつらい時間を共有しケアできることなど、看護師としてやりがいのある仕事だと自負しています。今後も内視鏡看護の特殊性や大切さを多くの看護師と分かち合って高めていきたい、と思っています。

田中内視鏡検査によって“がん”かどうか最終的な診断を迫られるなど、内視鏡室は患者さんにとってはシビアな場所です。内視鏡看護の原点は、患者さんの心と体を深く思いやることにあり、それによって得られる喜びも大きいところだと思います。