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内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2006年10月 Vol.11

誌上セミナー
「内視鏡リスクマネジメント」 〜②医療従事者の過失責任と注意義務

弁護士 中村・平井・田邊法律事務所 中村 隆 先生

この記事のテーマ
  • リスクマネジメント
[画像] 弁護士 中村・平井・田邊法律事務所 弁護士 中村 隆先生

内視鏡室のリスクマネジメントを考えるとき、医療従事者として法的責任に関する知識を得る必要があります。医療側の弁護士として、医療訴訟に携わる一方、病院関係者からの講演依頼に応えておられる弁護士の中村隆先生に誌上レクチャーをお願いしました。

過失責任とは、行為責任であり結果責任ではない

医療裁判事例では過失責任が問われます。過失責任の認否は、当該医療行為そのものが医療水準に適った注意義務を尽くして行われたか否かにより判断されるのであり、結果として思わぬ不幸な転帰になったから責任を問われるのではありません。つまり、過失責任とは、行為責任であり結果責任ではないのです。

問診や検査、安全性情報の収集を適切におこなって、注意義務、予見義務を尽くしたが、結果として起きた合併症や副作用を予見できなかった場合、過失は問われません。しかし危険性の発現が予見できる可能性があった場合は、結果について回避義務を尽くしたかどうかが問われます。結果を回避するために適切な治療や対処をしたと認められない場合は過失責任が有るとされます。

過失責任に対する訴訟は、患者が医療過誤との因果関係を蓋然的に証明すれば足りますが、医療側は因果関係がないことを積極的に証明しなければなりません。過失がないことをカルテ、看護記録等で示す(診療経過の証明)とともに、医療行為の医療水準適合性の証明(科学的根拠の証明)ができなければ敗訴になります。

医療水準に則した注意義務を尽くす

危険防止のための適切な注意義務かどうかを判断する基準は、“医療水準”がキーワードになります。最高裁の判例では「臨床医学の実践における医療水準とは全国一律の絶対的基準として考えるべきものではなく、当該医師の専門分野、所属する医療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等を考慮して判断する」とあります。たとえば設備が整った施設と不足した施設では、注意を払うべき義務の内容が異なるためです。

内視鏡の洗浄消毒に関していえば、日本消化器内視鏡技師会のガイドラインは最大公約数的指針ですから、それを物差しに各施設の実情にあった個別のマニュアルを作成することが必要になります。当該施設に則した医療水準となるマニュアルがあり、マニュアルに基づいて実効していれば、感染が起きても責任は問われないことになります。

医師がおこなっている医療慣行も医療水準には必ずしも合致しません。「医療慣行に従った医療行為を行ったからといって直ちに医療水準に従った注意義務を尽くしたことにならない」という最高裁の判例があります。内視鏡消毒についていえば、ガイドラインで推奨していない強酸性水を使用するのは、医療慣行として医師の自己判断と自己責任下でおこなったことになり、医療水準に従った注意義務とはなりません。

もう一つ、能書や使用説明書に従って医療行為をおこなったかどうかも、医療水準としての判断基準になります。使用説明書にシングルユースと記載されている鉗子を再生処理して使った場合や消毒液を使用説明書に示されている交換時期を遵守せずに使い続けた場合、もし感染事故が起きると無条件で医療側の責任になります。

コメディカルは安全性情報などを医師に報告して指示を求める義務があり、医師はコメディカルに報告を求めて指示する義務があります。医師からの指示が医療水準に適ったものでなければ、積極的に意見を述べて医師の注意を喚起することが求められています。医師だけでなくコメディカルの責務を問われる事例が多くなっていますので、コメディカルの方々が進んで安全対策に取り組まれることを期待します。