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  5. 2007年5月 Vol.12

内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2007年5月 Vol.12

対談
内視鏡室における「洗浄・消毒記録」と「薬液濃度管理」の重要性

ほしの内科クリニック 院長星野 洋 先生

弁護士 中村・平井・田邉法律事務所 所長中村 隆 先生

この記事のテーマ
  • 洗浄消毒記録
  • 消毒薬濃度管理
  • リスクマネジメント
ほしの内科クリニック 院長星野 洋 先生、弁護士 中村・平井・田邉法律事務所 所長中村 隆 先生の写真

昨年、四国内視鏡技師会がおこなった「内視鏡室の感染対策に関する自己調査」の結果、多くの施設が「内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン」をほぼ遵守しているものの「洗浄・消毒記録」と「薬液濃度チェックの記録」の項目に対する遵守率の低さが課題の一つとして残りました。そこで、内視鏡室における「洗浄・消毒記録」と「薬液濃度管理」の重要性について、お二人の先生にお話いただきました。消化器内視鏡医師の立場から、元・愛知県厚生連加茂病院消化器科部長で現・ほしの内科クリニック院長の星野洋先生、法律家の立場から医療問題に詳しい弁護士の中村隆先生に話を伺いました。

内視鏡室における記録の重要性について

洗浄・消毒記録は診療記録に準じる意味を持つ

四国内視鏡技師会が「内視鏡室の感染対策に関する自己調査」を実施しましたが、そのことについて、星野先生の感想をお聞かせください。

星野内視鏡室で実際におこなっている洗浄・消毒の質を維持するには自己調査によるチェックが効果的ですので、大変に良い企画だと思います。ただ、洗浄・消毒記録をとっていない施設が多かったことには問題が残ります。また、できれば自己調査に参加しなかった施設も、これを機に自己調査を実施してみることを望みます。重要なことは、こうした技師会活動の裾野を広げていくことだと思います。

星野  洋 先生

ほしの内科クリニック 院長
星野 洋 先生

「どこかでミスが起こらないかどうか、チェックして記録することが求められます。」

自己調査の結果、「洗浄・消毒記録」の遵守率は38%と低かったのですが、このような記録は法的にはどんな意味を持つのでしょうか?

中村診療録や助産録は、法律上作成が義務づけられ、看護記録など診療に関する記録は、医療法施行規則などで施設基準として定められていますが、洗浄・消毒記録の作成についての法的規定はありません。洗浄・消毒記録は、手術器具の使用記録などと同じ病院内の自主的な記録の一つという位置付けになるでしょう。しかし、この記録は患者様の安全確保に直結するものですから、診療に関する記録に準じた位置付けができるだろうと考えます。

洗浄・消毒行為の適切性を担保するためにも記録する

星野先生は、加茂病院で感染対策委員長も務めておられましたが、病院内で洗浄・消毒記録などを検討されたことはありましたか?

星野中央材料室での滅菌に関する記録が不十分であった、という点を感染対策委員会で問題にしたことがあります。滅菌しているのは当然ですが、どこまで化学的インジケーターおよび生物学的インジケーターで確認作業をおこなっているのかを記録として残すように病院内のマニュアルを修正しました。

記録が残っていなければ、証明するものはありません。せっかく滅菌や洗浄・消毒をした人たちの労力が報われないことも重要な問題点です。

内視鏡室において洗浄・消毒に関するシステムができていても、洗浄消毒器で行う工程以外は使用直後の予備洗浄と乾燥から保管まで、ほとんどが人の手を介します。どこかでミスが起こらないかどうか、チェックして記録することが求められます。

洗浄・消毒に関するマニュアルがあっても、それだけでは不十分ということですね。

中村マニュアルに定められた通常の洗浄・消毒作業をおこなっていても消毒不良となり、交差感染を起こした事例があります。滅菌・消毒したはずの器具を介した感染例は実際には少なくないのかもしれません。そこで、ガイドラインでは、無作為に抽出した消毒済みの内視鏡機器などの細菌検査を年1〜2回行って消毒効果をチェックし、細菌が検出されたときはマニュアルを見直すことを指摘しています。

内視鏡室で交差感染が起きたケースを想定すると、色々な面での可能性が考えられますが、洗浄・消毒作業自体に関していえば、医療水準に適合したマニュアル、および消毒剤や使用器具の添付文書の通りおこなっていたことが証明できれば、洗浄・消毒担当者に過失責任は生じません。したがって、消化器内視鏡技師さんや看護師さんは、自らの洗浄・消毒行為の適切性の証明を担保するためにも記録化することをおすすめします。

消毒剤の濃度管理について

個々の施設ごとに洗浄消毒器に合った薬液交換時期を定める

星野先生が指摘される、消毒剤の濃度管理の必要性についてお話いただけますか?

星野実は、グルタラール製剤を内視鏡室で使いはじめたときは、消毒剤の使用期限を守ればいいものと考えていました。ところが、使用回数に比例して濃度が低下するという研究発表を知ったのを機に自施設で調べてみることにしました。その結果は、研究発表の通り濃度が低下していることがわかったので、濃度のチェックをして消毒剤交換の目安を作りました。その後、フタラール製剤に切り替えたときは、洗浄消毒器ごと、使用回数別に薬液サンプルを消毒剤メーカーへ渡して濃度測定をしてもらい薬液交換の目安となる洗浄消毒器の使用回数を定めるとともに、テストストリップで濃度をチェックするようにしました。もちろん、記録もとっています。

いくら洗浄消毒器の運転記録をつけていても、肝心の消毒剤の有効濃度が維持されていない状態で使用していてはその記録に意味はありませんから、個々の施設でどのくらいのペースで濃度が低下するかを調べて、洗浄消毒器ごとに薬液交換の目安を設けておくことと、使用時の濃度が適正かどうかをチェックし記録する必要があるでしょう。

中村 隆 先生

弁護士 中村・平井・田邉法律事務所 所長
中村 隆 先生

「裁判では消毒剤や器具メーカーの添付文書の方が重視されます。」

日本消化器内視鏡技師会の「内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン」にも“有効濃度と期限を守って使用する”と明記されていますが、エビデンスを持ったうえでそれを実践されたわけですね。

中村消毒剤の添付文書もよく読んで遵守する必要があります。たとえば、フタラール製剤の添付文書には、「テストストリップ等により、濃度が0.3 %以上であることを確認し、14日間を超えて使用しないこと」、と書かれています。また、「消毒剤に浸漬する前に十分に洗浄すること」、「消毒した後は十分にすすぎ水切りをすること」、といったことも記されています。ガイドラインも消毒剤の添付文書などをもとに作成されているのですが、裁判では消毒剤や器具メーカーの添付文書の方が重視されます。

実効性を高めるには病院内教育をおこなう必要がある

洗浄・消毒記録と消毒剤の濃度管理は切り離しては考えられない重要な問題だということがわかりましたが、遵守率を上げるためにどうしたらよいでしょうか?

星野洗浄・消毒記録や消毒剤の濃度管理の重要性を啓発していく必要があるでしょう。消毒剤には濃度低下があることを知っていても、スタッフによっては濃度管理の重要性の認識度合いには違いが生じるという問題もあります。それらが、遵守率が低かったことの背景にあるのではないでしょうか。すべてのスタッフに重要性をきちんと認識してもらうためには、病院内での継続的な教育しかないように思います。

星野先生、中村先生

中村今回、四国内視鏡技師会がおこなった「内視鏡室の感染対策に関する自己調査」の末尾に、スタッフの教育システムに関する項目があります。自己調査結果をみると、病院内における教育の機会は65%、さらに新人教育体制は61.9%しかないことがわかります。たとえ、技師会のガイドラインに基づいた病院内マニュアルを策定したとしても、病院内教育が浸透しないと実効性は得られないでしょう。さらに今日のテーマである洗浄・消毒記録と消毒剤の濃度管理の必要性については、今後、感染管理面で重要度が増してくると思われます。是非、スタッフ間で教育や研究をして施設に合った方法で実施してもらいたいと思います。