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  5. 2007年10月 Vol.13

内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2007年10月 Vol.13

座談会
内視鏡の洗浄・消毒に関する履歴管理について
〜なぜ履歴管理が必要か、履歴管理に何が求められるか、を考える〜

日本消化器内視鏡技師会会長(平塚胃腸病院・検査部)田村 君英 写真右

日本消化器内視鏡技師会・安全管理委員会委員長(NTT東日本関東病院・内視鏡部)佐藤 絹子 写真中央

東邦大学医療センター佐倉病院 消化器センター猪俣 美保子 写真左

この記事のテーマ
  • 洗浄消毒記録
  • 消毒薬濃度管理
[画像] 田村 君英 氏、佐藤 絹子 氏、猪俣 美保子 氏の写真

日本消化器内視鏡技師会発行「内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン」の遵守率が向上してきたことに伴い、洗浄・消毒の履歴を管理して記録する必要性が論議されてきています。そこで、日本消化器内視鏡技師会・会長の田村君英氏、同会安全管理委員会・委員長の佐藤絹子氏、現場の内視鏡技師の立場から、東邦大学医療センター佐倉病院の猪俣美保子氏にお集まりいただき、消化器内視鏡の洗浄・消毒に関する履歴管理の目的や実施する上での課題などについてうかがいました。

洗浄・消毒に関する履歴管理が議論されている背景

“洗浄・消毒した質の保証を提供するものがない”ことに気がつきはじめた

なぜ、内視鏡の洗浄・消毒に関する履歴管理が議論されるようになったのでしょうか?

猪俣私が内視鏡業務に携わったのは13年ほど前からになりますが、当時は洗浄・消毒の手順を感染と非感染に分けて実施する方法などがとられていました。その後、日本消化器内視鏡技師会から発行された洗浄・消毒に関するガイドラインや技師会活動を通じて、使用したスコープは全例で高水準消毒を行う必要性を知るなど、私自身の意識が変わりました。技師会活動に参加している施設の多くは、このように意識が高まって、洗浄・消毒の質が上がってきたのだと思います。そうした変化がベースになって、最近では、一生懸命に洗浄・消毒をしたことを証明しようという気運が高まっているのではないでしょうか。

田村ガイドラインに基づいて各施設でマニュアルを作っていくことを啓発してきましたが、“洗浄・消毒した質の保証を提供するものがない”ことに気がつきはじめた段階にあるのだと思います。

佐藤絹子 氏

日本消化器内視鏡技師会・安全管理委員会委員長(NTT東日本関東病院・内視鏡部)
佐藤絹子 氏

「安全管理委員会として、履歴管理に関する指針を出せるように検討しています」

患者様に安心してもらうための証明がない

履歴管理に対する意識の芽生えには、外的な要因もあるのではないでしょうか?

佐藤そうですね。一般的に消化器内視鏡室の感染対策は、他科に比較して進んでいると思いますが、中央材料室で滅菌したものにはインジケーターなどの滅菌を確認する手段がありながら、内視鏡室で消毒した場合には消毒済みを確認する同じような方法がありません。その一方で、患者様の感染に対する意識は高まってきています。

例えば、内視鏡検査でも「内視鏡は消毒されていますか?(検査で病気がうつりませんか?)」と聞かれるようになりました。患者様に安心して内視鏡検査を受けてもらえる保証をするために、消毒した証明を残そうという意識が高まってきたこともあるのではないでしょうか。

田村内視鏡室は循環動作であり、手術室のように完結した動作ではありません。たとえば、手術器材は滅菌済みを確認して器材を袋から出して使いますが、内視鏡室ではスコープを見ただけで消毒済みであるのかを確認することは困難で、消毒していないスコープを使おうと思えば使える状態にあります。したがって、きちんと消毒して完結した動作であることを明示し、区切りをつける必要があります。それもまた履歴管理が求められてきた背景の一つといえます。

履歴管理をおこなう目的と問題点

洗浄・消毒の履歴管理は、患者様のためであり、医療従事者のためにおこなう

履歴管理をおこなうにあたって、なぜ、何のために必要かという点についてお考えをお聞かせください。

佐藤何かあったときに、口頭で消毒したことを伝えても納得してもらえません。洗浄・消毒の履歴管理した記録があれば証明になり、原因を追及するのには有効な手段になります。ただし、履歴管理は、感染事故の責任追及のためにおこなうのではなく、私たちがきちんと洗浄・消毒したことを証明することに意義があります。

猪俣私もそう思います。たとえ履歴管理記録を使って原因を追及しても、原因を特定するのは容易ではありません。私はコンビニのお手洗いに掲示している掃除記録を見て、これはお客様に安心してもらうための自己証明か、それとも、もし汚れていたら担当者の責任を明らかにするためなのかと考えてしまうのです。少なくとも内視鏡室での履歴管理は責任追及のためだけのものであって欲しくないですね。

田村洗浄・消毒に関する履歴管理は、誰のためにおこなうかといえば、患者様のためであり、そして、洗浄・消毒をおこなっている医療従事者のためです。さらには、各施設のためでもあります。ですから、履歴管理の目的を集約していえば、患者様に聞かれたときにきちんと洗浄・消毒したことを提示できるようにすることだと考えます。

猪俣美保子 氏

東邦大学医療センター佐倉病院 消化器センター
猪俣美保子 氏

「履歴管理は、責任追及よりも、自分たちがきちんと洗浄・消毒を行ったことを証明するため」

薬液の濃度管理は、履歴管理をおこなうための必須条件

履歴管理をおこなうための条件をあげてください。

佐藤洗浄・消毒がきちんとできていない施設では、履歴管理をするのは難しいですね。洗浄・消毒に関するガイドラインを遵守して、マニュアル通りにおこなっていることが条件になります。そのためには、スタッフ教育・研修をおこなって、誰もが同じ方法と手順で洗浄・消毒ができるようにしておくことが重要になります。外注スタッフの方が洗浄されている場合も同様です。

猪俣私の施設では、ヘルパーさん6名が交代で、洗浄をおこなっていますが、洗浄するボタン一つでもどんな役割かを意識するかしないかで、扱い方は変わるだろうと思っています。内視鏡検査や内視鏡器材などに関する知識を持って洗浄してもらうように、教育を行うのは内視鏡技師の役目になるでしょう。

四国消化器内視鏡技師会がおこなった第1期の「内視鏡室の感染対策に関する自己調査」結果をみると「薬液濃度チェックの記録がある」施設は33.3%でした。

田村薬液の濃度チェックは、洗浄・消毒の履歴管理の問題以前に、履歴管理をするために欠かせない必須条件になります。それは、消毒という行為の記録だけでなく、その薬液有効濃度内で行われたことの記録がなければスコープが確実に消毒されたという保証にはならないためです。

佐藤ガイドラインでは、薬液濃度の記録については触れていませんが、それぞれの消毒剤の添付文書をもとに各施設で基準を決めて濃度チェックしていく必要があります。過酢酸は頻回に濃度チェックしなければならないのですが、グルタラール製剤やフタラール製剤のように薬液濃度の安定性が高い消毒剤は、予め洗浄機毎に測定したデータをもとに、安全域をみて濃度チェックしていくと良いと思います。

履歴管理の今後について

履歴管理の方法と項目については、質の保証を目標に内容を固めていく

履歴管理の方法については、どのようにお考えですか?

佐藤履歴管理の記録方法については、各施設のITインフラ状況などに考慮して検討した方がよいと思いますが、必ずしもパソコンで管理する必要はなく、手書きでも十分だと思います。

猪俣私が以前、勤務していた施設では、手書きで履歴管理をしていましたが、それで十分だと考えています。内視鏡室のスタッフには“忙しい最中に履歴記録を書く作業が増える”という抵抗感がありますが、原因追及のためだけでなく、自分たちがきちんと洗ったことを証明するためであることを理解すれば、忙しくても受け入れてもらえると思います。

田村君英 氏

日本消化器内視鏡技師会会長(平塚胃腸病院・検査部)
田村 君英 氏

「洗浄・衝動効果を確認するほか、プロセスを示すレベルも履歴管理に必要」

履歴管理して記録する項目についてはいかがですか?

佐藤履歴管理を記録する必要性はわかっても手間がかかることから、最低限必要な項目は何なのかについて日本消化器内視鏡技師会内で議論していますが、まだ固まっていない状況にあります。

田村 履歴管理の目標である内視鏡の洗浄・消毒の質保証には、2通りあります。一つは、洗浄・消毒効果を確認するレベルであり、もう一つは、洗浄・消毒のプロセスがきちんとできたことを示すレベルです。それをもとに、いつ、誰が、どこで、どのスコープを、どのように、といった記録項目が固まっていくことを期待しています。

履歴管理の方向性を示して、ガイドラインへの明記を検討していく

日本消化器内視鏡技師会では、今後、履歴管理について洗浄・消毒に関するガイドラインで明記されるのでしょうか?

佐藤四国消化器内視鏡技師会の「内視鏡室の感染対策に関する自己調査」結果で、洗浄・消毒記録の実施率が低かったのは、ガイドラインで明記されていないということもあると思います。履歴管理については、積極的に推奨してきたわけではないのですが、内視鏡技師会の内部では2年ほど前から採り上げてきており、安全管理委員会として、そろそろ指針を示す時期が来ていると思っています。

猪俣ガイドラインに明記されれば、施設の上層部に対して履歴管理をおこなうことについて説得するための強力な材料になります。

田村今秋、大阪で開催される第59回日本消化器内視鏡技師学会(会長:高橋陽一氏)でもワークショップで履歴管理がテーマになっていますが、その結果を受けて、安全管理委員会で履歴管理の方向性を示せればいいと思っています。ガイドラインに明記するには、科学的な裏付けが求められますので、その検討も必要になります。

佐藤米国消化器内視鏡看護者協会(SGNA)のガイドラインなどアメリカやヨーロッパの洗浄・消毒に関するガイドライン等では、記録を残すことが明記されています。薬液濃度管理について明記しているガイドラインもあります。そういった諸外国のガイドラインも参考にして、明記する内容をまとめていきたいと考えています。

四国消化器内視鏡技師会の方々