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  5. 2007年10月 Vol.13

内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2007年10月 Vol.13

特別インタビュー
EMR・ESDにおける局注材の選定と粘膜隆起のコツ
〜粘膜の十分な隆起形成と維持に欠かせないヒアルロン酸ナトリウム〜

自治医科大学内科学講座消化器内科学部門(フジノン国際光学医療講座)教授山本 博徳 先生(医学博士)

この記事のテーマ
  • ESD/EMR手技のポイント
[画像] 自治医科大学内科学講座消化器内科学部門・教授 フジノン国際光学医療講座・教授山本 博徳 先生(医学博士)

胃がん、大腸がんの治療にEMR(内視鏡的粘膜切除術)やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を施行する施設が増えています。そこで、自治医科大学消化器内科・教授の山本博徳先生から、安全、確実に手技をおこなうために欠かせない粘膜隆起のコツを中心にうかがってきました。山本先生は、十分な粘膜隆起形成をして隆起を長時間持続させるために、ヒアルロン酸ナトリウム0.4%溶液を局注材に用いることを考案されました。また、消化器内視鏡的治療での看護のポイントなどを自治医科大学附属病院内視鏡室の主任看護師の葉山まつえ氏と看護師(内視鏡室リーダー)の加藤佳瑞子氏からうかがいました。

局注用ヒアルロン酸ナトリウムを開発した経緯

消化器内視鏡下でのEMR(内視鏡的粘膜切除術)とESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)用の局注材としてヒアルロン酸ナトリウムを開発したのは、私自身の経験によります。自治医大卒業後に地域医療に従事して、大学に戻って本格的に消化器内視鏡治療をはじめたときに、生理食塩水を使ったEMRで、分割切除になったり、局所再発が起きたりしました。そこで自分の技術力を棚に上げて、粘膜隆起が長時間持続し、手技を慌てずにできる方法を模索しました。その結果、粘膜隆起形成と維持に関わる局注液は粘性のあるものが良いと考えて、生体への安全性が確認されているヒアルロン酸ナトリウムを使うことを考えました。

整形外科領域での関節内注射剤として使われているヒアルロン酸ナトリウムをベースに、内視鏡で使う注射針を通って、粘膜隆起が長持ちする粘度について検討を重ねてきました。そして、生理食塩水で0.4%に希釈したヒアルロン酸ナトリウムが最適であるという結果を得ることができました。それをもとにメーカーで開発した製品は医療機器として製造承認を受け、「ムコアップ®」という製品名で市販化されています。

ヒアルロン酸ナトリウムを使った粘膜隆起の手技

ヒアルロン酸ナトリウムは、その後、EMRだけでなくESDを施行する際にも必須になっていますが、以下に、ヒアルロン酸ナトリウムを使った粘膜隆起での留意点を紹介します。

(1)EMRとESDの適応

胃の場合は、小さな病変では当初、EMRでおこなっていましたが、現在は病変の大きさにかかわらず、ESDで施行しています。EMRでは、スネアをかける位置がずれたりする恐れなどがあるためです。一方大腸の場合は、小さい病変はEMRでおこない、ESDの方が難易度は高くなります。大腸の粘膜は薄く柔らかいので、局注液以外の粘膜を把持する処置具はなくても、スネアが掛かります。2cm以下ではEMRとしていますが、スネアがうまく掛からない場所や、瘢痕や病変の種類によって隆起形成が悪くてスネアリングが難しいケースでは、小さな病変でもESDで施行します。大腸の場合、粘膜隆起が十分に形成できないと治療は不可能になりますが、ヒアルロン酸ナトリウムの局注材でかなり容易に粘膜隆起ができて長持ちするようになりました。

(2)確実な粘膜の隆起形成

局注材としてヒアルロン酸ナトリウムを使うときには、粘度が高いので、注射針はチューブ内径が太めのものを選択します。注射器の方は外径が大きいと圧がかからないので、私たちは5ccの注射器で、注射針とのつなぎ目にロックが付いたものを使っています。

粘膜下層に局注して隆起するときは、病変部の脇に斜め30〜45度程度で刺します。粘膜を貫いたら、いったん穿刺針を引いて、消化管の内腔側に持ち上げる形にして注入します。筋層から離すようにすれば、確実に粘膜下層に注入できます。そのとき、局注材を注入する介助者は、必ずモニター画面をみて粘膜の隆起形成状態を確認します。うまく穿刺できていれば、ちょっと注入しただけで隆起しますが、隆起形成がうまくいかないと、針の位置調整などが必要になります。EMRでヒアルロン酸ナトリウムを使うときは、病変部が隆起の頂上にくるようにします。なお、大腸のLSTのような腺腫性病変は、病変部の中央を穿刺すると、頂上にきます。

その他、EMRとESDを施行するにあたって、確実な範囲診断と深達度診断が重要になります。また、病変部の剥離では縦方向のセーフティマージン(安全領域)が十分にあることが大事です。リンパ節転移に最も関与しているのが深達度だからです。したがって、局注材としてヒアルロン酸ナトリウムを使用することは、手技を容易にするだけでなく、病理診断面でもきれいな標本をとるために欠かせなくなっています。

ムコアップ®で十分隆起された大腸LST

ムコアップ®で十分隆起された大腸LST

内視鏡治療での看護について    自治医科大学附属病院 内視鏡室  主任看護師葉山まつえ氏、看護師(内視鏡リーダー)加藤佳瑞子氏に聞く

内視鏡室の看護面で留意されていることを教えてください。

葉山当院は内視鏡検査件数が多いため、件数をこなす意識が出て、流れ作業になってしまわないように留意しています。そうなると、患者さんの都合や気持ちよりも、医師の都合が優先してしまうからです。本来は患者さんを主体に内視鏡検査をおこなっていることを忘れずに、患者さんサイドに立って看護することがモットーです。

加藤患者さんは、どんなに辛くても医師にはなかなか言えません。しかし、私たち看護師には言えますので、患者さんの声として医師に伝えるように努めています。

EMR、ESDといった内視鏡的治療では、看護師さんとしての関わり方は違ってきますね。

葉山以前は外科的手術でおこなっていた病変も内視鏡的治療が可能になったために、治療の割合が増えています。他施設からの紹介で治療を受ける患者さんも多くなっています。内視鏡的治療では、看護師としての役割が増え、責任も重くなります。

加藤全身麻酔ではないため、麻酔医の役割を看護師が担うことになります。ESDなどは治療時間が時には長時間に及ぶこともあり、セデーションを追加してかけることになりますが、患者さんの抑制がとれたり効き過ぎてもいけません。

心電図やパルスオキシメーターなどをモニタリングすることは勿論ですが、私たちは、モニターよりも患者さんの表情や顔色、呼吸状態、ちょっとした動きをよく観察するように心がけています。

葉山医師は手技に夢中になっていますので、患者さんの全身状態をしっかり看ることが役割です。患者さんの状態によっては、治療の中止を医師に申し出ることもおこなっています。常に患者さんを注意深く観察してきた経験からの看護師の直感も大切だと思っています。

主任看護師  葉山まつえ氏
看護師(内視鏡リーダー)  加藤佳瑞子氏)

施設の紹介

[画像] 自治医科大学附属病院・消化器センター

自治医科大学附属病院・消化器センター

〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1
院長 : 島田和幸
病床数 : 1,082床

消化器内視鏡/検査の概要

年間検査件数 : 約13,429件(平成18年度)
 (内訳)
  上部消化管 6,026件
   うちESD 106件
  下部消化管 2,639件
   うちESD 65件
  ポリペクトミー 645件
  ダブルバルーン 330件