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内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2007年10月 Vol.13

施設レポート
内視鏡の洗浄・消毒記録に関する取り組み 京都大学医学部附属病院・内視鏡部の事例

京都大学医学部附属病院 内視鏡部

この記事のテーマ
  • 洗浄消毒記録
  • ICT活動
[画像] 京都大学医学部附属病院 内視鏡部

近年、内視鏡に関する洗浄・消毒の履歴管理について議論されていますが、京都大学医学部附属病院・内視鏡部では、7年前の平成12年から記録表による洗浄・消毒の履歴管理を実施しています。そこで、同院内視鏡部・臨床工学技士の新田孝幸氏から、履歴管理をはじめた動機および履歴管理の要点や効用、さらには新しくはじめた一部ITを絡めた履歴管理についてうかがいました。また、同院ICT(Infection Control Team)メンバーで日本看護協会認定感染管理看護師の井川順子氏から、内視鏡部での洗浄・消毒に関する履歴管理について感想などをうかがいました。

洗浄・消毒管理は目に見えるようにする必要がある

内視鏡部で洗浄・消毒に関する履歴管理をはじめたのはいつですか?

新田専任の内視鏡洗浄員体制を敷いた平成12年にはじめました。複数の洗浄員がいるので、誰がスコープを洗浄し、誰がそれを洗浄消毒器にセットし、取り出したかというフローがわかるように記録表に名前を書き、自分が実施した業務を記録に残そうという発想からはじめました。その記録が結果として履歴管理になったといえるでしょう。

新田孝幸 氏

京都大学医学部附属病院・内視鏡部
臨床工学技士・消化器内視鏡技師
新田孝幸 氏

記録を付けはじめた動機を教えてください。

新田私は以前、企業の品質管理課に勤務していた経験から、管理とは記録を残して目に見えるようにすることであるという認識を持っていました。それで、内視鏡の洗浄・消毒を管理するためには目に見えるようにする必要がある、と感じていたことが動機です。

業務の忙しさから履歴を記録する作業が増えることに抵抗感はありませんでしたか?

新田まず導入してから検討しようということではじめました。記録する作業が増えることに躊躇するスタッフもいましたが、1週間ほどで慣れてもらえるようになりました。作業工程が今、どこまで行われているか目に見えてわかるので、安心して次の作業に取り組めるなど、各洗浄員がその便利さに気づいたからです。さらに、自分の名前を書くことによって、自己責任で洗浄・消毒をする意識が強くなりました。自己責任というと、何かあったときに自分のせいにされるのではと思われがちですが、自分たちがしっかり行ったことを記録として残すことは、正しい作業の証明となり、“これだけやっているんだ”という洗浄員の自信につながります。実際、約7 年経った今日まで、誰からも“記録することを止めたい“といった声はありません。記録表に記入することはスタンダードな業務になっており、記録をしないと不安だと感じているからでしょう。このように記録は、一番安全で簡単な管理方法なのです。

手書きによる記録表は欠かせない

履歴管理で重視している点はあげてください。

新田滅菌業務とは異なり、軟性スコープは洗浄・消毒した後の取扱いが重要になります。したがって、記録表には予備洗浄して洗浄消毒器にセットした人の名前の他に、洗浄消毒器から取り出して保管庫に保管した人の名前も記しています。なお、当院では、洗浄・消毒が完了したスコープを洗浄員が責任を持って患者様に提供したいという意識から、検査室でそのスコープのレンズチェック、送水・送気チェックまでおこなっています。

記録表ではどのような項目を記録していますか?

新田履歴管理は継続することが重要ですから、できるだけ最小限の項目にしています。洗浄員の名前、スコープのほか、洗浄&ブラッシング、防水キャップの装着、漏水チェックの有無を○×で記載しています。(表2参照)手書きの記録表に加えて、今年から新しく一部ITを絡めた履歴管理も併用しました。(表1参照)当院が使用している洗浄消毒器(エンドクレンズ®)から、洗浄消毒開始・終了時間、使用消毒剤回転数・日数、などの情報をパソコンに取り込んで表示する方式です。

洗浄消毒器自体がおこなった工程をパソコンに取り込むことが狙いです。このように前洗浄、漏水検知など、人が介在する業務は実施者の手で記録を残し、洗浄消毒器の運転状況など人が介在しない部分はIT化するのが理想だと考えています。

履歴管理の前提として、「内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン」を確実に遵守する必要がありますが、手書きで記録することによって、内視鏡洗浄員自身で工夫をして、より良い洗浄・消毒を実施しようとする意識が一層高まったように感じています。

洗浄消毒器から取り出したデータを表示したディスプレイを設置

洗浄消毒器の横に、手書きの記録表があり、洗浄消毒器から取り出したデータを表示したディスプレイを設置。

表1. 内視鏡洗浄消毒器の運転履歴をIT化

表1. 内視鏡洗浄消毒器の運転履歴をIT化

表2. 洗浄記録表(火曜日から翌週月曜日まで1週間の洗浄・消毒記録)

表2. 洗浄記録表(火曜日から翌週月曜日まで1週間の洗浄・消毒記録)

病院感染対策面からみた内視鏡部の履歴管理について    ICTメンバー・看護師長 井川順子さんに聞く

CT(Infection Control Team)として内視鏡部をラウンドされていますか?

井川内視鏡部は感染リスクが高い部署だと認識しており、度々ラウンドしています。新田さんをはじめ内視鏡部の医療従事者の感染管理意識も高く、よく勉強されていると感じています。スタンダードプリコーションの考え方や手洗いや防具の重要性、洗浄なくして消毒はあり得ないといった知識など感染管理の基本も徹底されています。

内視鏡部で実施されている洗浄・消毒に関する履歴管理についてご存じですか?

井川よく知っています。滅菌業務は滅菌されたか否かをインジケーターでチェックできますが、消毒業務にはそのようなものはありません。そういう意味で、セミクリティカル器材を扱う高水準消毒では履歴を残すことがエビデンスになりますので重要なことだと思います。履歴管理した記録があれば、万一、感染が発生した場合に対策を講じることもできます。

感染管理での課題の一つに、医療従事者の感染に関する意識を継続していくことがありますが、内視鏡部での洗浄・消毒記録はモチベーションを維持していく効果があるようです。そのモチベーション維持が感染管理対策の一番重要なことであり、各施設で工夫が必要な部分であるともいえると思います。

京都大学医学部附属病院・感染制御部・看護部看護師長、日本看護協会認定  感染管理看護師  井川順子 氏
内視鏡洗浄消毒器蓋部に内視鏡セット方法をイラストで分かりやすく作成

施設の紹介

[画像] 京都大学医学部附属病院内視鏡部

京都大学 医学部附属病院 内視鏡部

京都市左京区聖護院川原町54
院長 : 内山卓
病床数 : 1,182床

消化器内視鏡/検査・診療の概要

年間検査件数 : 7,322件(平成18年度)
 (内訳)
  上部消化管 4,363件
  下部消化管 2,146件
  超音波内視鏡 100件
  ERCP 339件
  気管支鏡 374件