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内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2008年10月 Vol.15

特別インタビュー クリニックでの大腸内視鏡治療とEMR手技のポイント

医療法人隆風会 藤井隆広クリニック 院長 藤井 隆広 先生(医学博士)

この記事のテーマ
  • ESD/EMR手技のポイント

東京・東銀座、歌舞伎座隣のビル7階にある藤井隆広クリニックは、胃と大腸の内視鏡専門クリニックとして全国的にも知られています。とくに大腸内視鏡では拡大内視鏡による検査から診断・治療までおこなっている点が特徴です。院長の藤井隆広先生は、秋田赤十字病院で工藤進英先生(現・昭和大学横浜市北部病院教授)と陥凹型がんの研究と拡大内視鏡の開発に取り組んだ後、国立がんセンター東病院勤務、英国リーズ大学病院で内視鏡指導、国立がんセンター中央病院内視鏡部消化器科医長を経て、2003年に当地で開業しました。藤井先生から、クリニックでの大腸内視鏡診療の要点および大腸EMR(内視鏡的粘膜切除術)手技のポイントについてうかがました。とくに大腸EMRで局注による粘膜膨隆が難しい盲腸と、直腸(Rb)とは異なり腸管穿孔のリスクがある直腸(Ra)カルチノイド、さらに横行結腸のLST-NGに対する内視鏡治療での、局注材ヒアルロン酸ナトリウム0.4%溶液(ムコアップ®)を使用した症例について説明していただきました。

医療法人隆風会 藤井隆広クリニック 院長 藤井 隆広 先生

内視鏡治療後のケアも治療の一環として、24時間電話対応

開業されて、病院勤務で診療されていた時とは異なる点をお聞かせください。

藤井病院勤務の場合、患者さんに対する責任は分散されます。しかし開業医となった今、現在、スタッフ11名(うち看護師4名)を抱えて診療していますが、スタッフの対応も含めて、全責任は私にある点があげられます。とくに診療面で失敗することは許されず、もし何かあったら信用を失ってしまいますが、開業して 5年余り、受診された患者さんの口コミが広がったこともあり、順調に推移しています。

大腸内視鏡診療の特徴をあげていただけますか?

藤井ポリープから組織生検して病理検査をおこなったりすれば治療までに2回の検査を患者さんに課すことになりますが、当院では病変がみつかれば、拡大内視鏡を用いて、診断から治療までを1回の検査でおこなっています。とくに、内視鏡治療可能な表面型腫瘍での組織生検は、なるべく避けたほうがよいと思います。後日行うEMR の局注の際に、non-lifting signとなり、スネアリングを難しくさせることがあるからです。したがって、内視鏡治療には技術はもちろんですが診断学も重要であることを強調させていただきます。

患者さんには、内視鏡検査の前に「大腸内視鏡検査とポリープ切除術―説明と同意書」をお渡しして、腺腫性ポリープあるいはがん化が疑われるポリープが発見されたら切除することに同意してもらっています。その「説明と同意書」には、出血と腸管穿孔に関する一般的なリスクを明示しています。切除術では、ポリペクトミーやEMR のほか、EPMR(分割切除)も施行していますが、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)や外科手術の適応の場合は国立がんセンター中央病院などの専門医を紹介しています。

大腸内視鏡治療後の患者さんへのケアについて教えてください。

藤井当院は入院設備がありませんから、全て日帰りで対応していますが、術後の患者さんへのケアも治療の一環として重視しています。術後1週間の食事制限などの生活指導をおこなって、帰宅後も不明な点があれば遠慮なく尋ねてもらうようにしています。また、術後の患者さん全員に私の携帯電話番号をお渡しして、何か困ったことがあった場合には24時間いつでも対応しています。予め出血対策についても説明していますが、ちょっとした出血でも慌てて電話をされる方も稀におられます。そんな時は私の声を聞いて安心されますが、多くの方は便器が真っ赤になるような出血以外、連絡されることはありません。

大腸EMRでよい膨隆形態を作るためのポイント

大腸EMRの適応と手技上のポイントを教えてください。

藤井拡大内視鏡による確かな診断のもとに、粘膜内(M)がんと粘膜下層(SM1)がんを対象に20mmの大きさまではEMRでの一括切除を試みますが、20mm以上30mmくらいの病変では、一括切除にこだわらずEPMRを施行しています。

EMR の一番のポイントは、粘膜下局注により半球状のスネアリングしやすい良い粘膜膨隆形態を作ることです。大きな病変では腫瘍の中心部を局注する方が良い形にしやすいのですが、そうすると腫瘍細胞を固有筋層に移植してしまうインプランテーションが危惧されます。そこで、腫瘍の辺縁の健常粘膜部から局注して、持ち上げていきます。その際に針の向きを変えたりして半球状の粘膜膨隆をつくるようにします。10〜20mm以上の大きな病変であれば複数箇所に局注して調整していきます。なお、局注により粘膜下層にスペースができて固有筋層と十分解離されれば、インプランテーションの問題は回避され、腫瘍内局注も許されると考えます。

局注材は何を使用していますか?

藤井良い膨隆形態を作るには局注材の選択も鍵になります。以前は、生理食塩水やグリセオール®(グリセリン)を使っていましたが、現在は、ヒアルロン酸ナトリウム0.4%溶液のムコアップ® を使用しています。

局注材としてムコアップ® を使用された症例を紹介していただけますか?

藤井EMRでムコアップ®を使った3症例を紹介します。一つは、直腸上部Raのカルチノイド(写真(1)参照)で7mm の病変です。今回、紹介する直腸Raでは、直腸下部Rbとは異なり、腸管穿孔のリスクがあるため、慎重な内視鏡治療が要求されます。本症例も我々が考案したキャップ吸引+バンド下切除(ESMR-L)により切除治療をおこないました。その時の注意点として、局注において確実に固有筋層と解離させるために粘稠度の高いムコアップ®を原液2〜3ml注入し、病変が十分に持ち上がったことを確認し、キャップ内に病変を吸引しバンディング。さらに、穿孔のリスクを低減するために、固有筋層と十分に解離されるようムコアップ®を追加局注して、バンドの下をスネアにて切除しました。病理学的に、病変はカルチノイドであり、固有筋層の付着無く完全切除されておりました。

拡大内視鏡像(写真(3)の病変)の画像

拡大内視鏡像(写真(3)の病変)

2例目は、盲腸の病変(写真(2)参照)です。盲腸は、解剖的な特性か、EMRの局注において病変が持ち上がりにくい部位です。施行した病変は、大きさ20mmのM〜SM1がんの側方発育型腫瘍/顆粒型(LST-G)と診断しました。本病変の中央部では硬い印象があり、盲腸という場の特性も相まって局注におけるnon-lifting sign陽性が予測されましたが、ムコアップ®原液の局注により扁平な形で全体に粘膜膨隆が得られ、EMRによる一括切除ができました。病理学的にも完全切除であり、SM1(200μm)に浸潤する高分化腺癌でありました。

3例目は、25mm の横行結腸に存在するLST-NG 病変(写真(3)参照)です。ESDの適応も考えましたが、拡大観察で不整V型pitもなく、粘膜内病変であると診断し、EPMRを行いました。このときは、ムコアップ®を希釈して局注し、病変全体の粘膜膨隆が得られ、4分割のEPMR にて切除しました。病理学的には、中等度異型腺腫でありました。

ムコアップ®を使用された印象などをお聞かせください。

藤井比較検討はできていませんが、今回紹介した3例はムコアップ® により、期待通りにうまく粘膜下局注ができたといえます。ムコアップ®では粘膜膨隆が良く、良い感触を持っています。ただし、粘稠度が高いために流入速度が遅くなって持ち上がりにストレスを感じることがありますので、ハイフロータイプ(23G)の局注針を使用したり、生理食塩水で希釈(生食1:ムコアップ®4の割合)したりして、現在、検討しているところです。今回、紹介した最初の2例では高粘稠度の局注液が好ましいと判断して、原液を使用しました。ムコアップ®原液か希釈して使用するかは、病変の特性や存在部位などを考慮して、適宜使い分けするようにしています。

写真(1)直腸Ra カルチノイド

写真(1)直腸Ra カルチノイド

写真(2)盲腸LST-G・写真

写真(2)盲腸LST-G・写真

写真(3)横行結腸LST-NG

写真(3)横行結腸LST-NG

施設の紹介

医療法人隆風会 藤井隆広クリニック

〒104-0061 東京都中央区銀座4-13-11 銀座M&S ビル7F

  • 院長 : 藤井隆広
  • 提携医療機関 : 国立がんセンター中央病院、国立がんセンター東病院、聖路加国際病院

消化管内視鏡/検査の概要

  • 大腸内視鏡検査数: 年間1415 件(2007年)
    うち大腸腫瘍性病変に対する内視鏡治療は5割を占める