1. HOME >
  2. 感染管理情報TOP >
  3. 製品関連情報誌 >
  4. 内視鏡関連情報誌 >
  5. 2009年5月 Vol.16

内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2009年5月 Vol.16

特別インタビュー 内視鏡室と消化器内視鏡技師の今後について

広島大学病院 内視鏡診療科教授 田中 信治 先生

この記事のテーマ
  • 内視鏡業務

消化器内視鏡による診断・治療は高度化、細分化して発展しており、今後も新しい技術や機器などが導入されていくことが見込まれています。それに伴って、内視鏡室のあり方が問われ、消化器内視鏡技師に求められる役割も重要性が増していくと思われます。そこで、消化器内視鏡診療で指導的役割を担っている広島大学病院内視鏡診療科教授の田中信治先生からお考えなどをうかがいました。

広島大学病院 内視鏡診療科教授 田中 信治 先生

内視鏡診療と内視鏡室の今後

日本における消化管内視鏡は、1950年に開発された胃カメラを機に、ファイバースコープ、電子内視鏡などの開発、普及をみるに至り、飛躍的に発展しました。それに伴い、臨床応用面で、早期がんの診断学の確立、診断領域の拡大、さらに内視鏡治療術も著しい進歩を遂げています。

内視鏡によるがんの早期発見、早期治療は、医療費抑制にも有用

内視鏡診療の今後についてお考えをお聞かせください。

田中内視鏡診療に対するニーズは高まっており、今後も内視鏡検査件数・治療件数は増えていくことが推測されます。それは、高齢者の増加や食生活の変化などによって、わが国はがん大国になっていることによります。なかでも大腸がんは増加しています。国立がんセンターがん対策情報センターの統計によると、2005年のがん死亡率で大腸がんは、男性は、肺がん、胃がん、肝臓がんに次いで4位、女性は1位、男女合わせると3位となっていますが、疫学的予測では、2015年には男女ともに大腸がんが1位となっています。胃がんも減ってはいません。

がんは早期発見、早期治療が大事なわけですが、大腸がんや胃がんなどは内視鏡検査を行うことによって、早期発見が容易になることから、治療においても外科手術や抗がん剤による治療よりも、内視鏡を使っておこなう方が医療費抑制に貢献できます。したがって、日本消化器内視鏡学会や日本消化器内視鏡技師会などがもっと一般市民への広報活動を強化して、内視鏡による早期発見・早期治療の有用性をアピールしていかなくてはいけないと思っています。

完結的診療への進展により内視鏡室のあり方が問われる

化器内視鏡の検査件数が増えているだけでなく、機器や診療内容も進歩していますね。

田中そうです。内視鏡検査による疾患・病変の診断の進歩とともに、内視鏡治療術では先進的治療手技を確立する施設が増えつつあります。ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)をはじめ、EIS(内視鏡的静脈瘤硬化療法)、EVL(内視鏡的静脈瘤結紮術)、胆膵系の処置などによって、消化器内視鏡の領域は完結的な診療に近づいてきています。

そうすると、内視鏡室のあり方も変わっていきますか?

田中完結的診療になれば、検査の延長という感覚の内視鏡室は変わらざるを得ないでしょう。内視鏡治療では、たとえばセデーションをおこなうようになり、術前、術中、術後の管理をきちんとできるスタッフや設備・環境が求められます。

先日も、シドニーで大腸ESDのライブデモンストレーションをおこなってきましたが、そこでは手術室と同じような体制が整っていました。日本でも内視鏡的治療は、手術室に近い環境でおこなうべきだと思います。

1,100㎡規模の「内視鏡センター」を開設する予定

広島大学病院の内視鏡診療科の概要を教えてください。

田中当院では平成10年4月に中央検査部内視鏡室より発展し「光学医療診療部」として独立しました。そして、患者さんや一般の方にわかりやすい名称に変更する目的で、平成21年1月から「内視鏡診療科」という名称に標榜変更しました。

年間の消化器内視鏡診療件数は13000件以上で、国立大学病院ではトップクラスの実績になります。内視鏡治療は増えており、早期の食道咽頭がん・胃がん・小腸/大腸がんの診療実績ではとくに高い評価を受けています。大きな腫瘍でも最新の機器による高度な精査を行い、適応のあるものは内視鏡的切除によって根治的治療をおこなっています。また,カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡による全小腸の診断や治療も積極的におこなっています。

内視鏡診療科での今後の計画をお聞かせください。

田中4年後の平成25年に、現在の入院病棟の前に新しい外来・中央診療等が新築される予定です。その際は、ハード面において1,100㎡規模の放射線透視室も完備した「内視鏡センター」に発展する予定です。現在は350㎡余りですから、約3倍に拡張整備されます。

胆膵疾患の内視鏡治療や食道・胃静脈瘤硬化療法などは、現在放射線部の透視室でおこなっていますが、新しい内視鏡センターでは 2つ透視室を作り、広いスペースの内視鏡診療室を7つ作りますから合計 9室になります。透視室では、気管支鏡もおこなうようにします。増加している内視鏡治療などに対応するために、約20床のリカバリールームと患者さん専用の大腸内視鏡前処置室を作り、洗浄・消毒および薬剤管理をするスペースも広くとって充実させたいと考えています。

消化器内視鏡技師の今後

1981年に消化器内視鏡技師制度が発足。日本消化器内視鏡学会の資格試験により認定された消化器内視鏡技師を中心に設立した日本消化器内視鏡技師会は活発な活動を続けて現在に至っています。消化器内視鏡診療に関わる前処置、洗浄・消毒、機器管理、検査・治療の介助などの研究発表を行う研究会の運営や、消化器内視鏡業務に携わっている者の教育・研修をおこなっています。しかし、消化器内視鏡技師は学会認定を得ても、給与体系などでメリットは少なく、内視鏡室に有資格者がいない施設も少なくないのが現状です。内視鏡治療の進歩とともに、消化器内視鏡技師の今後のあり方が問われています。

内視鏡医と情報共有できる消化器内視鏡技師が求められる

消化器内視鏡技師に求めることなどをお聞かせください。

田中内視鏡診療の進展とともに、内視鏡に関する専門知識、手技への理解があるスタッフが求められます。医療が高度化、細分化しており、医師が全てをカバーするのは困難になってきていますので、医師と内視鏡診療に関する情報を共有できる内視鏡技師が必要になるでしょう。内視鏡に詳しい看護師が術前、術中、術後の管理をきちんとしていくことも不可欠になります。

情報共有することは重要になると思われますから、日本消化器内視鏡技師学会や研究会で情報収集する以外に日本消化器内視鏡学会にも参加して、最先端の治療がどれくらい進んでいるかを知ることも望まれます。日本消化器内視鏡学会では、感染症対策や偶発症など消化器内視鏡技師にも参加してもらいたいセッションもあります。

今年の秋からは、再び、日本消化器内視鏡技師学会が日本消化器内視鏡学会と同じ地域で同時開催し交流できるようになったことは、内視鏡医と消化器内視鏡技師の双方にとって良いことだと思っています。

田中信治先生の写真

広島大学病院 内視鏡診療科教授
田中信治先生

「国家認定のために消化器内視鏡技師としての資格価値をアピールしてもらいたい」

消化器内視鏡技師資格の国家認定が望まれる

現在の消化器内視鏡技師は学会認定ですが、日本消化器内視鏡技師会では国家認定推進委員会で国家資格認定を目指しています。

田中私も、国家認定にして消化器内視鏡技師資格のステータスを高めて内視鏡業務に従事してもらいたいと願っています。そのためには、日本消化器内視鏡技師会内だけでなく日本消化器内視鏡学会と一緒になって議論して、厚生労働省に働きかけていくべきでしょう。

レントゲン室に診療放射線技師を配置しなければならいように、内視鏡室にも消化器内視鏡技師資格を有するスタッフがいないと支障をきたす状況になっているといった資格価値を説得できれば国家認定の可能性があると思います。

さらには、消化器内視鏡技師がいかに内視鏡室に必須であるかを一般市民にもアピールして支持を得ていくことも有用でしょう。たとえば、安全な内視鏡検査には、洗浄・消毒に関する知識を持ち、機器管理などをおこなう消化器内視鏡技師が不可欠であることを情報発信していく方法があります。

技師会の国家認定推進委員会では、国家認定の前提として消化器内視鏡技師の業務標準化について研究しています。

田中消化器内視鏡技師の業務は大きく分けて、①オリエンテーションから術前、術中、術後にわたって患者さんを管理する業務、②生検を含め、医師がおこなう内視鏡検査・治療を介助する業務、③内視鏡の洗浄・消毒を含めた機器の管理業務があげられます。いずれも、内視鏡診療の高度化に伴ってレベルアップすることが求められる業務であり、技師会で十分検討してもらいたいと思います。

内視鏡室でのチーム医療について、お考えをお聞かせください。

田中内視鏡室は内視鏡医のほか、看護師、内視鏡技師、臨床工学技士、看護助手、医療事務など様々な職種のスタッフによって運営されていますが、それぞれの役割分担を明確にすべきでしょう。その上で、お互いの役割と業務について共通認識と理解がないとチーム医療は成り立ちません。

その他内視鏡室の運営面では、当院のような大学病院では看護師が不足しており、一般病院では医師不足が問題になっていますので、人材を効率的に活用する必要があります。また、内視鏡診療が高度化している現在の状況で、消化器内視鏡技師としての専門性を追求し、果たすべき役割を見直すことによって、内視鏡室のクオリティ向上につながることを期待しています。

施設の紹介

広島大学病院

〒734-8551 広島県広島市南区霞 1-2-3

  • 院長:越智光夫
  • 病床数:720床(医科680床、歯科40床)
  • 診療科:34科

広島大学病院外観