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  5. 2009年5月 Vol.16

内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2009年5月 Vol.16

施設レポート ESD、EMRの質向上への取組み
〜内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ®を使った実技訓練(Hand-on Training)を実施〜

留萌市立病院・消化器病センター

この記事のテーマ
  • ESD/EMRエデュケーション

北海道留萌管内は、日本海に面した南北に細長く約155km続く地域です。留萌管内で唯一の市・留萌市は、人口が4万人を超えた昭和40年をピークに減少し続けて平成21年3月現在は2万6千人弱になりました。市政の財政基盤も揺らぐ中で、重要課題として留萌市立病院の改革プランが策定されています。その病院改革の目玉の一つとして期待されているのが、消化器病センターです。そこで、同センター長として、内視鏡による診断と治療の質向上をはかっている南伸弥先生から、同センターの特徴およびESD、EMRのレベルアップに対する取り組みなどをうかがいました。

留萌市立病院・消化器病センター

恵まれた環境で開設した消化器病センター

消化器病センターが開設された経緯を教えてください。

現在、当院ではさまざまな病院改革が進められていますが、その中の1つに“地域完結型の医療” を目指すことが掲げられています。この地域は隣接する総合病院が非常に遠く、さらに雪が降る冬は一層交通の便が悪くなるためです。やむを得ず旭川や札幌などの遠方の病院へ通院されている患者さんのお話を聞きますと、健康な方でも行き来するのが非常に大変だと思いますし、また入院となった場合はサポートする御家族の負担もさらに大変になります。当院としての特色を打ち出し、地域へもアピールしようということで、院長の笹川裕先生の発案により平成20年6月に消化器病センターが開設されました。

南伸弥先生の写真

消化器病センター長
南伸弥先生

その他、消化器病センターの特徴をあげてください。

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)など高度な内視鏡治療等も行える施設を、とのことで厳しい財政状況ではありますが、開設以来診断・治療に必要な機器、特に内視鏡関連のものはすべて揃えていただいています。

また、越湖進副院長をはじめとする外科の先生や、このような地方では珍しいのですが病理診断科の池田英之先生も常勤されており、三科の連携により定期的なカンファレンスはもちろんのこと、何かあればすぐに連絡を取り合うようにしています。どの科の先生も非常にフットワークが軽いため、常に最適な治療計画を立てられます。

さらには、専門知識を持った検査専門の看護師が対応していることがあげられます。時にはアドバイスをもらいながら、より円滑に検査・治療が行えるようここでもコミュニケーションを密にとっています。また、患者さんに親身になって接し、非常に丁寧な対応をする姿をみて、こちらも見習わなければと思うこともしばしばです。以上より、地方の病院ではありますが、診療面では恵まれた環境が整っていると思います。

また、患者さんに対しては、検査をする場合に術前・術中・術後としっかり納得していただけるようお話しているほか、できるだけ患者さんの都合に合わせて診療対応できるように調整しており、そうした積み重ねが地域の皆さんからの信頼につながっていけば、と考えています。

高度な診断・治療が行える大きな総合病院と小回りの効く小さな病院の両方の長所を兼ね備えた施設となるよう努力しております。

ESDを施行する際には、全員で観察

内視鏡治療のうち、ESDに関して質向上のために取り組んでいることがありましたら、お聞かせください。

学会や研究会などに参加して達人の技をライブデモなどで見る機会が多いといいのですが、学会などが開催される大都市へ当地から行くことは容易ではありません。ですので、ESDを施行する際は緊急検査以外の検査・治療はなるべく予約をしないようにして、極力消化器内科医全員が内視鏡室に入り手技を検討しています。また全例録画をしているので、振り返っての検討もしています。さらに、病理診断科の協力を仰ぎ診断に耐え得る切除標本であったか、剥離深度は適切であったかなどこちらも全例検討しています。

ESDの手技で留意されていることは何でしょうか?

一番重要なことは、病理診断に耐え得るよう病変をしっかり一括で切除することと考えています。これをスムーズに行うために術中の偶発症をしっかり避けなければなりません。最も怖い偶発症は穿孔ですが、そのためには切除する粘膜にしっかり厚みを持たせて確実な隆起形成をすることが大切になります。

確実な粘膜隆起形成には、局注材の選択が重要になります。私が以前在籍していた国立がんセンター中央病院では当時ヒアルロン酸ナトリウムの治験を行っていたこともあり、その有用性に早くから関心を持っていました。その後製造承認を受けて発売されたヒアルロン酸ナトリウムの0.4%溶液・ムコアップ®を発売直後より全例に使っています。

局注材としてムコアップ®を使った感触などをお聞かせください。

良い隆起形態を作りやすく、またその隆起をしっかり保持しますので、術中の穿孔予防に非常に効果的だと思います。また、病変を切除した後の人工潰瘍底にも障害を与える心配が少なく、術後の穿孔予防にも有用だという感触を持っています。他の局注材では、隆起形態を保っても組織に障害が起きやすかったり、あるいはその逆であったりと一長一短ですが、そういった意味でムコアップ®は非常にバランスがとれている局注材と考えます。

ムコアップ®の注入チェックや内視鏡手技の練習を実施

局注材のムコアップ®注入時の圧などを消化器病センター内で検討されましたか?

大腸EMRを施行する際、ムコアップ®の原液では違和感があり使いにくいこともあるのでは、とセンター内で議論していた昨年11月に、ジョンソン・エンド・ジョンソン社が持ってきた実技訓練(Hands-on Training)モデルを使い、ムコアップ®の使用実感をチェックしました。

その結果、ムコアップ®の使用方法は変更されたのでしょうか?

ムコアップ®の希釈度合いを確かめて、大腸EMRでは生食で50%に割って使うことにしました。その他は従来通り、大腸ESDでは原液のまま、胃ESDでは生食で50%希釈して使うことを確認しました。また、他の局注材とどう違うかも比較検討しました。

その他、実技訓練(Hands-on Training)モデルを使った感想をお聞かせください。

豚の食道〜胃の部位を使っていますが、内視鏡手技の非常に良い練習になります。局注材を使った粘膜隆起形成のコツやスコープの操作方法、ESDに用いる処置具の扱い方といったことをチェックすることができます。あえて筋層を貫いて穿孔をおこしてみる感覚やその穿孔をクリップで縫縮する体験ができるという利点もあります。

ESDやEMRは、こうしたより実戦に近い形で練習を行うことがレベル向上への近道と考えます。

実技訓練(Hands-on Training)モデルを使った内視鏡手技練習

実技訓練(Hands-on Training)モデルを使った内視鏡手技練習

ムコアップ®を使った粘膜隆起デモ

ムコアップ®を使った粘膜隆起デモ

施設の紹介

留萌市立病院

〒077-8511 北海道留萌市東雲町2丁目16番

  • 院長 : 笹川裕
  • 病床数 : 354床

留萌市立病院外観

消化器内視鏡/検査の概要

  • 内視鏡検査件数:3,571件(平成20年)
    (内訳)
     上部消化管 2,323件
     ・上部消化管EMR 4件、ESD 40件(平成19年)
     下部消化管 1,120件
     ・下部消化管EMR 195件、ESD 6件(平成19年)
     ERCP 128件
  • スコープ本数:16本
    (内訳)
     上部消化管用 11本
     下部消化管用  5本
  • 洗浄消毒器設置台数:2台
  • 内視鏡検査ベッド:3床
  • 医師数:7名
  • スタッフ数 :
    看護師10名(うち消化器内視鏡技師1名)、看護助手1名

留萌市立病院 スタッフのみなさん

前列左から
宮島治也先生(部長)、齊藤忠範先生(診療部長)、笹川裕院長、南伸弥先生(消化器病センター長)
後列左から
佐々木法子さん(看護師、消化器内視鏡技師)、野原薫さん(看護主任)、上原昌恵さん(看護師)、山本ひとみさん(看護師)、 浜松ゆかりさん(看護師)、東辻里美さん(看護師)、吉崎尚子さん(看護師)、野田さやか先生(医長)、平子匡先生(副医長)