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内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2009年10月 Vol.17

特別インタビュー 安全なESD施行のためのトレーニング

NTT東日本関東病院 消火器内科・内視鏡センター 医長 大圃 研(おおはた けん) 先生

この記事のテーマ
  • ESD/EMRエデュケーション

ESD(Endoscopic submucosal dissection 内視鏡的粘膜下層剥離術)の開発により、従来は外科手術が必要だった大きな早期がんも消化器内視鏡で切除できるようになりました。しかし、ESDは内視鏡医であっても習熟を要する高レベルの治療法です。そこで、NTT東日本関東病院で内視鏡医を対象にESDの指導を実践している消化器内科・内視鏡センター医長の大圃研先生から、医師への指導要領およびESDの施行に伴う今後の内視鏡室のあり方などについてうかがいました。

NTT東日本関東病院 消火器内科・内視鏡センター 医長 大圃 研 先生

ESDに関する医師教育の概要

ESD介助40例、ESD切除後焼灼20例を経験してから施行にあたる

現在、大圃先生のもとで内視鏡的粘膜下層剥離術(以下、ESD)に関する研修をされている先生方の内訳を教えてください。

大圃合計4名で、卒後7年目が1名、6年目が2名、5年目が1名という内訳です。ESDの研修を開始する前提としては、内視鏡医として内視鏡検査経験を重ねて基本的な手技ができていることが条件になります。一概に卒後年数の基準や消化管内視鏡検査を何例経験すればよいといった基準はありません。経験数が多くても基本が足りないと判断すれば、当院でのESD施行基準をクリアしてもらうために、再度基本からやり直してもらっています。

その他、どのようなことがESDを学ぶ医師に求められますか?

大圃胃のESDから始めていますが、実際に施行するには、以下の経験や技能、知識を有してもらうことが条件になります。

  • 上部消化管内視鏡検査1000例以上を経験する
  • 確実な狙撃生検能
  • 腫瘍の範囲診断能
  • ESD偶発症と対策の知識
  • 内視鏡処置具(デバイス)、高周波装置、局注液など周辺機器類などの理解

その上で、まずESD介助業務を40例くらい徹底して行い、ESD切除後の焼灼も20例くらい経験してからESDを施行させています。

ESDの症例にコンスタントに触れることが求められる

ESDの技術を習得するために必要な要件を教えてください。

大圃合計4名で、卒後7年目が1名、6年目が2名、5年目が1名という内訳です。ESDの研修を開始する前提としては、内視鏡医として内視鏡検査経験を重ねて基本的な手技ができていることが条件になります。一概に卒後年数の基準や消化管内視鏡検査を何例経験すればよいといった基準はありません。経験数が多くても基本が足りないと判断すれば、当院でのESD施行基準をクリアしてもらうために、再度基本からやり直してもらっています。

その他、どのようなことがESDを学ぶ医師に求められますか?

大圃どんな教育プログラムであっても必要なのはESD症例経験数であり、一定期間にコンスタントに症例に触れなければ習得が難しいでしょう。それは、手で覚えた感覚が大事だからです。たとえば、1か月に1例だけESDに触れた場合と1週間に1例の場合では、同じ10症例経験したとしても上達速度が全く違うと思います。当院では、胃のESDだけで年間200例超を数えますので、研修している4名の先生には上達しやすい環境にあるといえます。

胃のESD習得のための一般的なプログラムでは、対象病変として胃の前庭部を経験してから、胃角・体部小彎へと難易度の高い部位へステップアップしていくことが推奨されています。当院でも前庭部を2例経験することからはじめていますが、その後はコンスタントに症例に触れるため病変部位は問わず、難しい症例でも一部だけでも行うようにしています。切開も剥離も難しい場合は、マーキングだけでも施行させています。

その場合、上級医がいつでもリカバーできるように、バックアップ体制を万全に整えておくことが欠かせません。術者には数百症例の一つかもしれませんが、患者さんにとっては一生に一度の大イベントであることを常に念頭に置いて施行しなければなりません。

ESD施行前のトレーニング方法

術前のイメージトレーニングが重要な時間になる

安全なESDを施行するために、どのようなトレーニングを行っていますか?

大圃当院では、翌週に施行するESDの各病変について、術前のイメージトレーニングをしています。治療前に全例を内視鏡検査しており、記録をした動画を使いながら、ストラテジーを立てて確認していきます。

イメージトレーニングが、ESDの安全な施行と医師の技術習得のために最も重要な時間になりますので、1例ごとに綿密に検討していきます。まず、病変の内視鏡動画をみて各医師にシミュレーション・ストラテジーを発表させてから、上級医である私からストラテジーを確認していきます。たとえば、病変部から5mm離してマーキングするといっても、実際の画面をみて場所を示さないと正確な位置がつかみにくいものです。また、シミュレーション通りにいかないこともしばしばありますから、その場合の次善策を考えておくこともします。

医師自身が施行した症例の録画を観て、見直すことも大事です。その際に必ず等倍速で再生して、自身の戸惑いなどを客観的に分析するようにしています。

シミュレーションに使用するイメージ図

ESD施行前に1例ごとにストラテジーを立てていく。マーキング、隆起形成、切開などをイメージした図。

豚の食道〜胃を使った実技訓練モデルを活用している

イメージトレーニングでは、隆起を作ることもイメージするのですね。

大圃そうです。どの位置の粘膜下層に局注針を打って、どのように針先をコントロールしていくと隆起がどのようにできるかをイメージするようにします。なるべく良い粘膜隆起形態を作るためには、局注材の選択が重要になります。当院では、ヒアルロン酸ナトリウム0.4%溶液・ムコアップ®を使っていますが、時間的にも隆起が長く保持できるメリットも得られます。切開や剥離が難しい場合でも確実に手技を行うための余裕ができるので、安全なESDを施行するために欠かせない局注材といえます。

他にESDの実技を練習する方法がありましたら教えてください。

大圃豚の食道〜胃を使った実技訓練(Hands on Training)モデルを使っています。局注材のムコアップ®による隆起形成を確かめるためにジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社が提供したものですが、局注針を打ったり、高周波を使ってナイフで切開したりする模擬体験もできます。実際の現場では指導が難しい、局注針の針先の角度や向きなど細かい指示もできます。特にESDを始める医師にとっては経験すべき訓練方法といえるでしょう。

ESDを習得したくても、長期間の研修に行けない内視鏡医にアドバイスをお願いします。

大圃学会やライブデモに参加することは当然ですが、それ以上に実際にESDを施行している生の医療現場を見学することが大事です。術者がどんな点に苦労しているかなどを観察しなければなりません。それも1回だけの見学ではだめでしょう。半年間新幹線で毎週1回、当院に見学に来られた内視鏡医もいます。なお当院では、術前のイメージトレーニングから見学できます。

内視鏡室とスタッフのあり方

外回りの看護師は、第2介助者としての役割を担う

ESDは何人体制で施行していますか?

大圃最低、術者と介助者、外回りと記録を担当する看護師の3名体制です。当院の場合、介助者は教育の目的もあって研修をしている医師があたり、看護師は消化器内視鏡技師の資格取得者が多くあたっています。

外回りの看護師の役割を教えてください。

大圃術中モニタリングとして、血圧、脈拍、SpO2をチェックしてもらうこと、患者さんの状態を観察してもらうこと、そして、介助者が介助しやすいようにアシストする第2介助者としての役割があります。

ESDの進行状況をみて、局注針や局注材、ナイフなどを渡すことですが、当院の場合は主任看護師の佐藤絹子さんをはじめESDに習熟した消化器内視鏡技師がいますので、テンポ良く次に必要なデバイスを渡してくれます。たとえば、介助者は次に術者が使用するナイフを持っていますので、術者が渡す使用済みのナイフは第2介助者の看護師が受け取り、ナイフに付いた焦げを拭き取ってくれるので助かっています。ESDを安全で円滑に進めるには、チームワークが大切な要素になります。

大圃 研先生の写真

NTT東日本関東病院
消火器内科・内視鏡センター 医長
大圃 研先生

看護師が、はじめてESDの施行に臨む場合の留意点を教えてください。

大圃私は他施設で、ESDの導入指導をしていますが、そうした施設の看護師はESDの経験はありません。したがって、事前にESDの概要を学んでもらい、ビデオでESDのプロセスを知ってもらえれば、あとは私から局注針やナイフの渡し方などを説明します。止血鉗子を開いたり、クリップが打てれば十分です。基本的には通常の内視鏡検査でおこなっていることができれば、難しくはないでしょう。

内視鏡室のシステムも変わっていくだろう

消化器内視鏡技師の位置づけについてどのようにお考えですか?

大圃看護師が一所懸命に勉強をして消化器内視鏡技師の資格を取得しても、病院からは専門職や技術職という認識を持ってもらえないことが少なくないようです。せっかくESD施行チームの一員となっていても、外来部門の看護師という位置づけで別の部門に異動させられてしまうのは残念です。

最後に、ESDに関する内視鏡室の現状と今後のあり方についてお聞かせください。

大圃おそらくESDを施行している多くの施設の内視鏡室は、内視鏡検査の延長で機器類や設備の整備、人材育成をしてきているのが現状でしょう。ESDをはじめとして内視鏡治療が進化したことに伴って、内視鏡室のシステムも変えていかなければならないと思います。しかし、一方ではムコアップ®が開発され、機器類も進歩しており、私がESDに取組んだ頃と比較して簡素で安全にできるようになってきています。また、新しい内視鏡治療も登場してきていますので、10年後の内視鏡室は現在とは違った光景になるかもしれません。

内視鏡室主任看護師 佐藤絹子さんに聞く

消化器内視鏡技師をはじめ、内視鏡室スタッフがESDに取り組む要点をお聞かせください。

佐藤通常の内視鏡検査と比べて、ESDの現場は緊張した雰囲気に包まれ、長時間に及ぶこともあります。したがって、冷静に対応するためには、自身のマインドコントロールが求められます。当院では、ESDの現場見学からはじめて、指導者に付いて習得していく手順を踏んでいます。ESDを研修している医師と同様に症例経験が大事だと思います。

ESDをはじめ内視鏡治療術の普及に伴い、滅菌処理するべき機器が増えています。ディスポーザブルの処置具を多く使いますが、単回使用のデバイスは安全使用の観点から、1回の使用で破棄しましょう。

佐藤絹子さんの写真

施設の紹介

NTT東日本関東病院

〒141-8625 東京都品川区東五反田5-9-22

  • 病院長 : 落合滋之
  • 病床数 : 665床(一般病棟615床、精神病棟50床)
  • 診療科 : 28科
  • 内視鏡室ESD症例数(2008年実績) :
    胃ESD 204例、食道ESD 27例、大腸ESD 70例

NTT東日本関東病院外観