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内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2009年10月 Vol.17

施設レポート 履歴管理をシステム化し、内視鏡の洗浄・消毒の質を保証

岩手医科大学附属病院

この記事のテーマ
  • 洗浄消毒記録
  • 製品導入効果

岩手県盛岡市に位置する岩手医科大学附属病院は、特定機能病院として高度な医療を安全に提供するとともに、県の基幹病院として地域の医療機関と連携をはかる中心的な役割を担っています。消化器内視鏡治療においても、県内外から患者さんを受け入れて先進的な治療を提供しています。そこで、消化器・肝臓内科 准教授の千葉俊美先生から、同科における診療上の特徴とともに内視鏡室のリスクマネジメントの観点から洗浄・消毒の履歴管理に取り組まれたきっかけについてうかがいました。また、内視鏡診療部主任の井上さんから、内視鏡の洗浄・消毒履歴管理の実際の方法をうかがいました。

岩手医科大学附属病院

大学病院だからこそ医療安全対策(リスクマネジメント)でも手本になるべき

内視鏡室の特徴について教えてください。

千葉当院は岩手県のほぼ中央に位置しており、青森県南部、秋田県の一部を含む広い地域から、内視鏡治療を目的に患者さんが来られます。大学病院であるということから内視鏡治療においてはEMR、ESDに積極的に取り組んでおり、治療成績も安定して残してきています。このような環境からか、ローテーションで内視鏡室に配属される看護師さんも、皆さん、積極的に消化器内視鏡技師の認定を受けています。スタッフの意識の高さが、内視鏡室全体によい影響を与えてくれています。

千葉 俊美 先生の写真

消化器・肝臓内科 准教授
千葉 俊美 先生

内視鏡室の医療安全対策(リスクマネジメント)については、どのようにお考えですか。

千葉当院は県の中心的な病院ですので、地域の他施設に対しても手本となるような内視鏡室であるべきだと考えています。最新の内視鏡技術は当然として、感染対策に関しても、他施設に先駆けた取り組みをしていかなければならないと考えています。近年、リスクマネジメントの手法として洗浄・消毒の記録を残すことが求められています。これまで当院内視鏡室では、内視鏡の洗浄・消毒の履歴管理を比較的早くから手書きで行っていましたが、医療安全対策をより充実したものにするため、このたびプロセスモニター(ジョンソン・エンド・ジョンソン)を導入しました。これによりリスクマネジメントに取り組む姿勢を病院内外に示し、その他施設での履歴管理の取り組みを後押しすることに繋がれば大変大きな意義があると感じています。

新しい履歴管理システムの効果についてお聞かせください。

千葉我々医師にとっては、患者さんが望む内視鏡治療を成功させることが最大の目的です。治療に専念するための環境づくりという面で、プロセスモニターが導入されたことで内視鏡室のスタッフの業務負担感が減り、その分検査や治療の介助といった業務へ意識を傾注できますから医師、スタッフ両方にとって有益です。また、最近の内視鏡治療はEMR、ESDのような外科手術的治療も多く行うようになっていますので、今まで以上に厳重な清潔性の確保・維持が必要です。しかし、リスクはゼロではないので、万が一感染が疑われる問題が起こった場合にも、すぐに必要な情報を検索して取り出せるという安心感があることもまた非常に有益だと思います。

洗浄・消毒履歴を電子データ化することにより安心感が増す

内視鏡の洗浄・消毒に関する取り組みを教えてください。

井上当院では、消化器内視鏡技師会の「洗浄・消毒に関するガイドライン(第2版)」が発表されて履歴管理が話題になり始めた頃から、手書きによる履歴管理を始めました。洗浄消毒器ごとに記録用紙を用意して、スコープの洗浄開始時間、洗浄回数、スコープの番号、洗浄担当者のサイン、消毒薬の交換日と交換した担当者名などを記入していました。履歴管理は万が一の時に備えて日々の洗浄・消毒の履歴を1例漏らさず記録していくことが求められますが、手書きによる管理だと、検索の容易さ、記録の長期保存という観点から不安がありました。社会的にも院内感染が話題になっていますし、日々の業務で患者さんに接していると患者さんがご自身の検査に使用されるスコープの安全性について強い関心を持っていることが窺えました。このような状況から、当院の感染対策室や事務部門からも、洗浄・消毒に関してしっかりとした履歴を残すようにと言われていましたが、手書きによる履歴管理では洗浄器の運転状況まで含めた詳細な情報をまとめて残すことは難しいため、履歴管理を電子データとして記録するシステムを導入する必要性を感じていました。

井上 正弘さんの写真

内視鏡診療部 主任看護師
井上 正弘さん

履歴管理システムの導入を検討する上で、考慮した点を教えてください。

井上従来、当院内視鏡室では消毒薬としてフタラール製剤と過酢酸製剤の2剤を異なる洗浄消毒器で併用していましたが、洗浄・消毒の履歴管理を行う上で消毒薬の濃度管理は欠かせない要素と考えていました。それまで消毒薬の濃度管理は専用の濃度判定試験紙で行っていましたが、濃度管理データも電子化することを目指しました。そこで消毒薬を1剤に統一し洗浄消毒器を一新しました。もう一点、履歴管理を行う上で重要なこととして洗浄消毒器の詳細な運転履歴がデータとして残せることが希望でした。洗浄消毒器が適切に稼働していることが洗浄・消毒の質を保証する上で、ガイドラインに則った用手洗浄と濃度管理とともに大前提だと考えました。洗浄消毒器の運転履歴データとしては、消毒薬の交換だけではなく、フィルターの交換、エラー発生の時刻とその内容などが電子データとして残せることを重視しましたね。

現在の履歴管理手順を教えてください。

井上内視鏡検査の受付時に、診察券の患者さんのID番号をスコープと対にして検査室から洗浄室に持っていきます。洗浄室でスコープを洗浄消毒器にかける際に、洗浄担当者が患者さんのID番号をハンディターミナルに打ち込みます。洗浄消毒器、スコープ、洗浄担当者はバーコード化されていますので、ハンディターミナルでバーコードを読み込むだけです。パソコンのクリック操作で洗浄消毒器の運転履歴データを取り込むと、ハンディターミナルで入力したデータと洗浄消毒器のデータがパソコンのデータベース上で統合されます。このような手順となったおかげで履歴管理に関する作業が随分簡略化されました。

履歴管理システムの導入を契機により高度な安全対策に取り組んでいきたい

履歴管理システムを導入したことで、スタッフの方が感じる効果にはどのようなものがありますか。

井上プロセスモニターの導入で洗浄・消毒の履歴はしっかり残っていますが、感染対策室からは、抜き打ちでスコープのチェックを行い、予備洗浄不足がないかどうか、細菌検査などを通じて消毒がきちんと行われているかを確認する必要があるのではないかとも言われています。今後はそれらが十分に行われていることを定期的に確認することで、スコープの安全性をより高度に保証できる体制ができると考えています。現在のところ、内視鏡検査が原因で感染が発生したことはありませんし、患者さんからカルテ開示を求められたこともありませんが、今までなかっただけで明日あるかもしれません。もしそうなっても、スコープの洗浄・消毒をしっかり行っているという質の保証ができれば、内視鏡検査による感染の可能性を否定する材料になるため、有用だと考えています。

ハンディーターミナルによる洗浄消毒器の履歴管理

ハンディーターミナルによる洗浄消毒器の履歴管理

施設の紹介

岩手医科大学附属病院

〒020-8505 手県盛岡市内丸19-1

  • 院長 : 小林 誠一郎
  • 病床数 : 1,166床

岩手医科大学附属病院外観

  • 内視鏡治療および検査件数 : 6,911件
    (内訳)
     上部消化管 5,102件
     下部消化管 1,628件
     気管支鏡 118件
     カプセル内視鏡 63件
  • 洗浄消毒器設置台数 : 7台
  • 内視鏡検査ベッド数 : 4床
  • 医師数 : 10名
  • スタッフ数 :
    看護師7名(消化器内視鏡技師5名)、看護補助1名

岩手医科大学附属病院 スタッフのみなさん

前列左から 千葉俊美先生(准教授)、井上正弘さん(主任看護師)
後列左から 田鎖由里さん(看護師)、橋本彩さん(看護師)、古水香子さん(看護師)、竹内可愛さん(看護師)、平賀千絵さん、阿部由悦さん(看護師)