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内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2010年5月 Vol.18

座談会 中材室での滅菌業務を参考にして
内視鏡の洗浄・消毒に関する質保証を考える

愛知県厚生連海南病院 医療安全管理部 感染対策室 感染管理責任者・看護師長 島崎 豊 氏

社会医療法人生長会府中病院 感染管理室室長・感染管理認定看護師 高橋 陽一 氏

愛媛大学医学部附属病院 光学医療診療部・副看護師長 天野 利江 さん

この記事のテーマ
  • 洗浄消毒記録
  • 消毒薬濃度管理
  • 保守点検

消化器内視鏡分野はESD、EMRなど治療術の普及などに伴って洗浄・消毒の質向上が問われています。そこで、中央材料(中材)室での滅菌業務を参考に、今後の内視鏡の洗浄・消毒に関する質保証について検討する座談会を開催。中材室業務で指導的役割を担っている愛知県厚生連海南病院感染管理責任者の島崎豊氏と、内視鏡室側からは府中病院感染管理室室長の高橋陽一氏、愛媛大学医学部附属病院光学医療診療部副看護師長の天野利江さんにお集まりいただき、中央材料室と内視鏡室での相違点や共通点などを情報交換しました。

[画像]島崎 豊氏、高橋 陽一氏、天野 利江さん

滅菌と消毒の質保証について

滅菌も消毒も、全工程を管理することが質保証につながる

中材(中央材料)室での滅菌業務に関する質保証の要点についてお聞かせください。

島崎病院機能評価Ver.6.0の洗浄・滅菌に関する評価項目に「滅菌が保証されている」と示されていますが、それは化学的インジケータ(CI)、生物学的インジケータ(BI)などを用いて滅菌器での滅菌を確認することだけではありません。滅菌物の回収→洗浄→包装→滅菌→滅菌評価→保管→払い出しまでの一連の作業の流れを管理していくことが大事です。内視鏡室での洗浄・消毒と同様に洗浄も重要になります。

高橋内視鏡室では高水準消毒剤による消毒を行っていますが、その濃度と消毒時間を管理する以外に消毒を保証するインジケータはありません。そのため、洗浄・消毒の全工程を管理しようということで履歴管理の必要性が問われるようになりました。履歴管理は洗浄・消毒を含めた一連の工程の記録だと私は思います。

天野洗浄・消毒を確実にするには、それに関わる人が洗浄消毒をマニュアル通りに行なうことです。そして、行ったことを記録に残すことが洗浄・消毒の質保証になります。記録に残すことは、責任を持って洗浄・消毒をすることにつながり、適切な洗浄・消毒を行っていたかを振り返るためにも有用です。

高水準消毒剤の正しい濃度管理が問われる

中材室でのCI、BIの使われ方を教えてください。

島崎以前は、BIを重視していましたが、生物の死滅を最終確認する意味合いで使われるようになっています。最近は、滅菌工程を全体的に管理するためにCIなどによる判定を重視するようになっています。

高橋内視鏡ではBIに相当するインジケータはありませんが、CI的に適切な消毒が維持されているか、という点で、高水準消毒剤の濃度管理が重要になります。テストストリップなどを使って濃度判定していましたが、最近では器械でデジタル測定できるようになって精度がアップしています。

天野人間の目で判断するテストストリップでは、私自身も判断に迷って不安に思うことがありました。濃度を正しく判定するには、器械で測定をしていくことが今後望まれます。

島崎濃度判定は洗浄消毒器の使用回数を基準に行う施設が多いと思いますが、高水準消毒剤の中には日数による劣化もありますので、最低限、毎朝、測定する必要があるでしょう。

島崎 豊氏の画像

愛知県厚生連海南病院 医療安全管理部 感染対策室  感染管理責任者・看護師長
島崎 豊 氏

「医療機器類に限らず工業製品には100%完全なものはありません」

洗浄消毒器の保守・点検について

洗浄消毒器は、日常点検とメーカーによる点検が必要

病院機能評価Ver.6.0では医療機器の管理が問われていますが、内視鏡の洗浄消毒器の管理についてはどのようにお考えですか?

高橋 内視鏡の洗浄消毒器はメンテナンスをしてこそ機能を発揮するものです。それには、メーカーによる定期点検と院内スタッフによる日常点検があります。平成19年からは各医療機関で医療機器安全管理者を置くようになっていますから、内視鏡室でも医療機器安全管理者の協力を得て管理していくとよいでしょう。

天野洗浄消毒器の機種によって点検項目が定められていると思いますが、当院では毎朝始業前に、コネクターから水が出ているかなどの機能チェックや消毒剤の濃度測定を行い、その結果を記録に残しています。その上で、メーカーによる定期的な点検も行っています。洗浄消毒器の点検も洗浄・消毒の質保証として大切だと思います。

高橋 陽一氏の画像

社会医療法人生長会府中病院 感染管理室室長・感染管理認定看護師
高橋 陽一 氏

「内視鏡の洗浄消毒器はメンテナンスをしてこそ機能を発揮するものです」

中材室での滅菌器や洗浄器の点検状況についてお聞かせください。

島崎滅菌器は法的な点検項目があり、保健所によるチェック対象にもなっています。一方、洗浄装置(ウォッシャーディスインフェクターなど)には法的義務はありませんが、機能テストをして洗浄評価をする施設が増えています。管腔状器材の中にどれだけ汚染物が残っていたかをチェックする方法も確立しつつあります。洗浄評価を重視する背景としては、プリオン病対策があり、もう一つは「医療現場における滅菌保証のガイドライン2005」に示されたこともあげられます。

機器の不具合に気づく感性とスタッフの倫理観が問われる

滅菌器や内視鏡の洗浄消毒器を含めた医療機器類の取り扱いに関して留意する点をお聞かせください。

島崎 医療機器類に限らず工業製品には100%完全なものはありません。使っているうちに何かしら不具合が生じるものです。また、手術器械類が複雑化しており、洗浄装置や滅菌器はそれに十分対応できる機能にはなっていません。したがって、私たちは機械に使われるのではなく、人が機械を使って不具合を発見することが大事です。中材室ではたくさんの機器を扱っており、ちょっと不具合があると“あっ、いつもと違う”と察知する感性こそ、専門職である私たちプロに求められる資質ではないでしょうか。

天野私の施設では、スコープの使用前に、定められた点検項目に沿って日常点検を行い記録に残すように指導しています。1日の検査終了後の洗浄・消毒・片付けの時も、スコープを触ったり、動かしたりすることによって、曲がりがちょっとおかしいとか異常に気づくことができます。洗浄消毒器やスコープの日常点検をマニュアル化して意識して行う事で異常を早期に発見することもできます。

正しい洗浄・消毒作業や濃度測定、機器の日常点検などを励行していくための要件をお聞かせください。

島崎やはり教育が重要になります。ただし、中材室の業務を委託業者が請け負っている施設が多くあり、委託業者には常勤の方とパートの方もおられますので、教育を徹底することが難しくなっている現状があります。

高橋内視鏡室も医療資格のない人が洗浄・消毒に関与している施設が多くなっています。医療の知識がない人にも確実に実行してもらうためには理解しやすいマニュアルの作成と教育が必要でしょう。

天野たとえば、洗浄消毒器からスコープを取り出す時に洗浄チュ―ブがコネクターから外れていることを見つけた場合に、忙しいからそのまま取り出すか、洗浄チューブを直してもう一度洗浄消毒器を回すか、といった問題になると、倫理的な点からも医療に関与する者としての自覚を促す教育が重要になると思います。また、記録を残す必要性を理解してもらう事で、責任を持って洗浄消毒業務をおこなってもらえると思います。

今後の内視鏡室での感染管理について

院内のICTと一緒に設備などの改善を図るといいい

内視鏡室の今後の感染対策について課題提起をお願いします。

高橋内視鏡の歴史をみると、50年ほどで飛躍的に向上しました。それに伴って洗浄・消毒の質も上がってきました。「消化器内視鏡のマルチソサエティガイドライン」も示されましたが、それに対応できる設備が整っていなかったり、構造的に問題がある施設も少なくないのが現状です。例えば、検査ベッドのある傍で洗浄していたり、換気設備がなかったりしています。

島崎中材室においても同様の課題がありますが、問題解決のためには、内視鏡室や中材室の部署だけで発信するのではなく、院内のICT(Infection Control Team)や安全管理委員会と一緒になって病院管理者に伝えていくとよいと思います。

あと、消化器以外の診療科や病棟で使用している軟性内視鏡の洗浄・消毒の問題があります。それを中央管理化してトータルにマネジメントしていくにもICTの関与が欠かせません。

天野当院でもICTとの連携によって、耳鼻科など他の診療科で行っている内視鏡の洗浄・消毒情報が入るようになり、洗浄消毒方法などの相談を受たり、内視鏡室からも情報提供するようにしています。

その他、内視鏡治療処置術の普及に伴って、シングルユース器材(SUD)が増え、それがリユースされる問題があります。経済的な観点からリユースを行っている施設がまだ多くあるのではないかと思いますが、日本消化器内視鏡技師会の安全管理委員会では、SUDのシングルユースを厳守するための活動を進めています。

ガイドライン遵守を啓発していく

滅菌でも消毒でも100%質保証することは難しいだろうと思いますが、最低限遵守すべきことを教えてください。

島崎病院機能評価Ver.6.0の滅菌保証に関する受審では「医療現場における滅菌保証のガイドライン2005」を遵守しているかどうかが問われますが、ガイドライン遵守は内視鏡室の病院機能評価審査でも同じでしょう。もし何か感染に関するクレームなどがあった場合も、ガイドラインを遵守していれば施設は守られます。

まずは各施設において質保証のための消毒剤の濃度管理、工程記録、機器のメンテナンスに対する取り組みが望まれます。

天野洗浄・消毒に関するガイドラインを知らない施設や、遵守できていない施設があります。蓋をしないで高水準消毒剤による用手消毒を行っている施設もありました。また、1人とか2人しか内視鏡室スタッフがいない施設には情報が行き渡りにくいという問題があり、四国ではそのような小規模施設を対象にした研修会に取り組んでいます。

高橋そうした施設には、内視鏡技師会の支部研究会などへの参加を呼びかけていますが、足を運んでもらうのは容易ではありません。地域での地道なネットワークづくりとともに、この「ニューススコープ」のような情報誌を幅広く配布していくことも大事だと思います。

天野 利江さんの画像

愛媛大学医学部附属病院 光学医療診療部・副看護師長
天野 利江 さん

「記録を残していかないと洗浄・消毒の質保証にはなりません」

本「ニューススコープ」では、今回はじめて中材室の状況を島崎さんからご紹介いただきましたが、最後に感想をお願いします。

島崎 内視鏡室も中材室も、医療機器を安全な状態に再生して患者さんに提供する部署です。今後は、院内でも情報交換をして、良いところは採り入れていくことが望まれます。

高橋中材室も内視鏡室もそれぞれのエリア内で業務が完結するので、他の部門からは見えない点が多くあります。しかし共通点も多いので、ICTが橋渡し役となり情報収集と発信を活発にしていきたいと思います。

天野SUDのリユースなどお互いに共通する課題もありますので、両者の情報交換は意義があると思います。