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  5. 2010年5月 Vol.18

内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2010年5月 Vol.18

施設レポート NBI併用拡大内視鏡で質の向上をはかりスタッフ教育の充実に取り組む

石川県立中央病院 消化器内科

この記事のテーマ
  • ESD/EMRエデュケーション

地域の基幹病院として、地域がん診療連携拠点病院、三次救急医療施設、災害拠点病院でもある石川県立中央病院。消化器内科では、質の高い診断・診療を進めるとともに、365日24時間体制で救急・処置に対応しています。また、ほぼ全例でNBI併用拡大観察を行うなど、先進的な取り組みにも意欲的です。そこで、消化器内科科長の土山寿志先生に、主にESDに対する安全面での取り組みやスタッフ指導についてうかがいました。

石川県立中央病院

ほぼ全例でNBI併用拡大観察を用いてハイレベルな内視鏡診断・治療を実践

消化器内視鏡診療方針や特徴をお聞かせください。

土山地域基幹病院の消化器内科の使命として、咽喉頭から肛門までの全消化管および肝臓、膵臓を幅広く診療する必要があります。母子医療センターも併設しているため、新生児を含む小児に対しても内視鏡検査・処置を行っていることも大きな特徴です。また、365日24時間体制で救急対応を敷いており、緊急内視鏡処置も行っています。

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療によって安全かつ確実に治癒できることは患者さんにとって大きなメリットです。ESDを含め質の高い内視鏡治療を提供することを方針とし、地域最後の砦となることを目指しています。そのため、内視鏡医とスタッフが知識と技術の習得を目指して日々努力・研鑽しております。また、がんの早期発見、側方伸展範囲診断、深達度診断が重要と考え、診断能向上のための教育に力を入れています。

どのような内視鏡診断を行っているか、教えてください。

土山 NBI(Narrow BandImaging : 狭帯域光観察)と拡大観察によって内視鏡診断は大きく変わり、NBI併用拡大内視鏡が注目されています。特に咽喉頭と食道領域では従来の白色光観察に比べて早期発見率が高くかつ深達度診断能も良好です。胃領域では、白色光観察や色素内視鏡観察では側方進展範囲診断が困難だった症例の診断が可能になり、大腸領域でも従来の色素を用いた拡大観察とほぼ同等の診断能が簡単に得られるようになりました。

またNBI併用拡大観察によって、がん・非がんの質的診断が容易になったこともメリットです。結果として生検数が減り、患者さんの負担軽減はもちろん、内視鏡スタッフや病理医の業務軽減にもつながっています。当院では、ほぼ全例の上部・下部消化器内視鏡検査でNBI併用拡大観察を行っています。

土山 寿志先生の写真

消化器内科 科長
土山 寿志(どやま ひさし) 先生

ESDの治療戦略を術前に担当医と話し合ったり、トラブルにも対処できる能力が求められる

ESDなどの内視鏡術に関してスタッフに求めていることをお教えください。

土山消化管や胆膵などの病態の知識や、スコープや処置具、高周波発生装置、局注材などに関する知識を理解することが重要です。そのため院内で各種マニュアルを作成するともに勉強会や意見交換の場を設けてお互いに理解を深めるように努めています。文章からの知識だけでは不十分ですから、現場での施行見学や実際に介助を行ったり、院外での学会や研究会でのライブデモンストレーションに積極的に参加するなどして、知識と実践が確実に結びつく指導を行っています。言葉では表現しにくい細かなノウハウや、偶発症などのトラブルへの対処法は、そのような形で経験を積まないとなかなか身につくものではありません。

一方、内視鏡医は手技の引き出しを多く持つことが不可欠です。それによって瞬時の正しい判断が行え、うまくいかなかった場合もすぐに次の手を打つことができるようになります。

瞬時の判断は、介助者にも求められる能力ですね。

土山その通りです。当内視鏡室では内視鏡技師が第二介助だけでなく第一介助にもつきますので、とくにESDでは術前に担当医と治療戦略を話し合っています。そして、術中は内視鏡技師は医師に言われた処置具をただ渡すだけでなく、もし医師が間違ったと思われる判断をしたら、それを指摘できるだけの力量も求められます。また、例えば止血したい血管と直交するように、医師に指示されずともさりげなく止血鉗子を回転させるような高いレベルを目標に教育しています。

スタッフに求められる資質として、その他にどのようなものが挙げられますか。

土山誠実、勤勉であることはもちろんですが、少し恐がりくらいの人がいいのではないかと思います。つまり、何か問題が起きたときに、少し間をおいて考える慎重さが必要です。慎重さは、特に小児の内視鏡ではより求められる資質ですね。そして、内視鏡室内でチーム医療を実践するためのコミュニケーション能力とともに、麻酔科や小児科など他科との連携能力も必要だと思います。

ムコアップ®によって、レジデントでも容易に上手な膨隆をつくれるようになった

ESDにおける手技のポイントは何でしょうか。

土山粘膜下局注によっていかに良い膨隆形態をつくるかが重要です。ヒアルロン酸ナトリウムは他の局注材に比べて膨隆が長時間持続するため、安全にESDを行えるとの学会報告があり、当院ではESD導入当初から使用し、その有用性や安全性を実感していました。以前は、食道・十二指腸ESDに限定してヒアルロン酸ナトリウム製剤とグリセオールの混合液を使用していましたが、ムコアップ®の登場はまさに待望していたものでした。現在は胃と大腸のみの適用になっていますが、食道、十二指腸でもムコアップ®の有用性を感じています。軟らかく薄い大腸の壁が硬さをもって厚くなることによって、より安全かつ確実なESDが可能になりました。発売当初は胃ではムコアップ®を使用せず、グリセオールを使用していましたが、現在は、安全性の確保と手技時間短縮に有用であることから全例にムコアップ®を使用しています。今後、食道や十二指腸においての適用拡大を期待しております。

内視鏡医であってもESDは習熟を要しますが、私が指導する研修医は以前より術中穿孔が少なくなっています。それは当初からムコアップ®を使っているためだと思います。膨隆が持続するためにあわてずに切ることができ、バックアップする私としても安心感があります。胃角部や体下部の病変では胃の空気を抜いて処置しなければならないこともありますが、ムコアップ®は適度な硬さがあるため病変部がつぶれずにより安全に剥離できます。

大腸のEMRでは局注による膨隆の手技が重要になりますが、ムコアップ®を使うことによってレジデントでも容易に上手な膨隆を得ることができるようになったと感じています。

その他、ESDやEMRをより安全に施行する上で留意されている点をお教えください。

土山100%の安全性・確実性を求める努力はもちろん怠ってはいけませんが、残念ながら限界が存在することも理解して治療にあたらなければなりません。勇気ある撤退のタイミングを適切に判断することも大事ですし、偶発症発生時には他科との連携も含めた迅速かつ確実な対応が重要です。ESD、EMR、緊急内視鏡をはじめとする内視鏡治療時には上級医がバックアップする体制をとっていますが、スタッフも事態を予測して適切な対応をすることが望まれます。

写真(1)直腸Ra カルチノイド

食道:約2/3周性の表在癌。かなり剥離が進んだ状況であるが、ムコアップ®にて十分な粘膜下層の膨隆が形成できている。

写真(2)盲腸LST-G・写真

胃:体部小彎-後壁の早期癌。十分な脱気にて近接視野を確保して剥離を行っているが、ムコアップ®を局注した 粘膜下層は固さを持って膨隆が崩れず、安全にESDを施行できる。

写真(3)横行結腸LST-NG

大腸:1cm超のLST。ムコアップ®によるしっかりとした半球状の膨隆にてEMRが容易となる。

施設の紹介

石川県立中央病院

〒920-8530 石川県金沢市鞍月東2-1

  • 院長 : 山田 哲司
  • 病床数 : 662床

石川県立中央病院外観

消化器内視鏡治療/検査の概要

  • 内視鏡治療および検査件数 : 約10,000件(2009年)
    ESD症例数(2009年)
     胃ESD : 226例
     大腸ESD : 61例
     食道ESD : 146件
  • 内視鏡検査ベッド : 4床
  • 医師数 : 11名(うちレジデント5名)
  • スタッフ数 :看護師17名※(うち消化器内視鏡技師6名)
            洗浄員1名、受付1名)
    ※救急外来と業務兼任。日勤帯は6名。

石川県立中央病院 スタッフのみなさん

前列左から 竹村健一先生、山田真也先生、土山寿志先生、金子佳史先生
後列左から 富永桂先生、三輪一博先生、大矢志保さん(看護師)、松井亮太先生、根布由紀さん(看護師)、吉田尚弘先生、平野桂先生、宮岸幸江さん(看護師)、伊藤錬磨先生、大箱泰子さん(看護師)、木藤陽介先生、江並美紀さん(看護師)、澤村俊孝先生、中西宏佳先生