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内視鏡関連情報 NEWS SCOPE | ASP Japan合同会社 〜2014年9月 Vol.20

特別インタビュー 洗浄・消毒の自動化こそが安心できる内視鏡を提供する
〜Charles E. Edmiston Jr.先生に米国の最新動向を聞く

Professor of Surgery & Hospital Epidemiologist,
Department of Surgery Medical College of Wisconsin Milwaukee, Wisconsin USA
Charles E. Edmiston Jr., PhD., CIC

大阪府立成人病センター 消化管内科部長(日本消化器内視鏡学会)石原 立 先生

山口大学病院薬剤部 准教授(日本環境感染学会)尾家 重治 先生

平塚胃腸病院検査部(日本消化器内視鏡技師学会会長)田村 君英 様

ワタキューセイモア株式会社 学術担当部長/東京医療保健大学大学院 准教授(日本環境感染学会)伏見 了 先生

この記事のテーマ
  • 内視鏡管理
  • 洗浄
  • 消毒
  • メンテナンス

2013年10月に東京都内で開催された「第71回日本消化器内視鏡技師学会」のランチョンセミナーでは、米国ウィスコンシン大学病院で院内感染管理にあたっているCharles E. Edmiston Jr.先生が「見てみよう!世界の内視鏡洗浄・消毒」のテーマで登壇。内視鏡の洗浄工程の重要性、各国における考え方やガイドライン、洗浄消毒器の発展について説明し、「内視鏡管理・洗浄・消毒・メンテナンスについて世界的な統一基準が必要」と強調されました。
ご講演後には、日本の有識者の先生方と日本における内視鏡管理と洗浄・消毒における問題とその解決策について活発に意見交換されました。その模様を紹介します。

[画像]Charles E. Edmiston Jr.先生

洗浄前リークテストの徹底で年間の内視鏡修理代が半分以下に

Edmiston消化器内視鏡検査中のサルモネラ菌、緑膿菌、H. pylori、種々のグラム陰性菌、B型肝炎・C型肝炎ウイルスなどへの感染例が報告されています1)。米国消化器内視鏡学会(ASGE)と米国病院疫学学会(SHEA)は2011年に発表した共同ガイドラインで「今日までに報告されたすべての消化器内視鏡検査関連で発生した病原体伝播は、決められた洗浄・消毒ガイドラインの非遵守、または機器の不具合が原因」2)と述べています。機器の不具合とは内視鏡または内視鏡自動洗浄消毒器の構造上の問題であり、不十分な処理とは、不十分な洗浄(すべてのチャネルを洗浄しなければならない)、不十分または効果のない消毒(浸漬時間、 チャネルへの灌流、有効濃度、効果のない消毒薬、不適切な消毒薬)です。本日はこの「不十分な処理」についての問題を探り、解決方法を見つけていければと考えています。

石原日本の消化器内視鏡医は検査や治療を積極的に行っており、世界的に見ても日本では消化器内視鏡が多用されています。我々は安全な内視鏡診断と治療を提供したいと考えており、安全な再使用の方法についてお聞きしたいですね。

田村内視鏡の洗浄消毒のプロフェッショナルとして、日本と米国の違いを伺いたいと思っています。

尾家私は消毒薬とその毒性について研究しており、Edmiston先生が編集委員を務められた“Infection Control and Hospital Epidemiology”誌に、日本の施設におけるアルデヒド系消毒剤の誤った使い方について書いた論文を投稿して掲載された経験もあります3)。本日は高水準消毒薬について教えていただければと存じます。

伏見まずは内視鏡洗浄におけるリークテストの位置づけについて先生のご意見を伺いたいと存じます。さまざまなガイドラインには「洗浄の前に漏水検知(リークテスト)が必要」と記載されており、私もそう考えています。リークテストには3分程度かかりますが、すべての使用済み内視鏡について洗浄の前に実施すべきと考えています。以前の勤務先ではすべての使用済み内視鏡についてリークテストを行っていましたが、当初は医師から「リークテストは要らないから早く戻してくれ」と言われていました。米国では実際にすべての使用済み内視鏡についてリークテストを行っているのでしょうか。

Edmiston先生のご苦労は私にも理解できます。70年代に私が内視鏡技術者として働いていたとき、実は何本もの内視鏡を壊してしまいました。皆『時間内に戻さねば』というプレッシャーを抱えているのですね。現在、米国ではリークテストは最初の予備洗浄の後に行われています。消化器内視鏡の再生処理の過程である@予備洗浄、Aリークテスト、B洗浄、Cすすぎ、D高水準消毒、Eすすぎ、F乾燥、Gの保管における2番目のプロセスとして位置づけられていますが(図1)、実際にはリークテストが抜かされている場合もあるでしょう。米国では各施設の手順が公開されており、施設の公表データを見れば手順がステップ化されているかどうかも分かります。内視鏡の洗浄消毒とメンテナンスに従事するスタッフの最も重要な資質は、この作業の重要性を十分に理解して誠意をもって取り組むことですが、それでもリークテストは『できれば省略したい行程』と思われているのが実情です。洗浄・消毒を自動化・システム化することの大きなメリットは、限られた時間で洗浄できること、リークテストを含めてすべての行程が100%確実に、しかも効率的に行われることです。

伏見我々の施設でリークテストを徹底したら年間の修理代860万円が半分以下の400万円に抑えられました。これについては公表していきたいと考えています。

Edmiston素晴らしいですね。それは是非ともデータを揃えて報告すべきと思います。稼働率の向上にもつながると思います。

図1 内視鏡の洗浄消毒の過程

図1 内視鏡の洗浄消毒の過程

洗浄方法を根本から見直しての感染対策が必要

田村2つお聞きしたいことがあります。1つは、洗浄後の内視鏡チャンネル内においては汚れが落としにくいなどの情報についてです。例えば日本の水は清浄と言われているのですが、バイオフィルムを形成する際に水が要因となるようなことはあるのでしょうか。また、これについてSGNA(Society of Gastroenterology Nurses and Associates、米国内視鏡看護協会)などに関連するデータがありますか。もう1つは、バイオフィルムは取り除くのが難しく、そのままチャンネルの中に収まっているのかということです。これらの問題に参考になるデータはありますでしょうか。

Edmiston最初のご質問については、気管チューブやレーザー内視鏡チューブのデータはありますが、消化器内視鏡についてのデータはありません。残念ながらバイオフィルムは洗浄消毒の過程でも根絶できません。

ATP検査のベースを1から50までとした場合、我々が小さなブラシを使って洗浄後の内視鏡内のチャネル内をなぞり、培養したときには350から375のレベルでした。ベースラインは1から50だったのですよ。また、この内視鏡は使用されていませんでした。したがって洗浄中に何かが混入したと考えられます。それが何かは分かっていないのですが。

この試験から「洗浄プロセス」の定義を評価することが必要との結論に至りました。研究者にとって今後が楽しみになってきました。ある研究者はタンパク質を、ある研究者は免疫グロブリンを研究するでしょう。

現在、洗浄消毒の過程で内腔ルーメンをブラシでゴシゴシやる方法では十分には洗浄できないことが分かりました。腹腔鏡を壊して中を調べた結果、特に使い込んだデバイスではブラシでゴシゴシやったために内腔ルーメンの形状が変形し、バイオフィルム(図2)を形成しやすいことが判明しました。この問題についてはまだまだ検討すべき余地があり、研究者が注目し始めたところです。

内視鏡表面に認められた壊死組織片の組成は、血液などの体液中に存在するタンパク質、脂肪、炭水化物、多様な化学塩などであり、洗浄剤はこれらの様々な汚染に対して広いスペクトルを持ち、洗浄する機器を傷つけないことが必要です。この点で界面活性剤を用いている酵素洗浄剤は汚れを分解します。

一方、直接的に菌体を測定する方法として、現在は培養を必要としない、細菌のDNA塩基配列を解析する技術が出てきています。ただし、これは菌が生きているか死んでいるかの判断はできません。本当に正確な判断のためには破壊検査しかないのが実情です。

田村 君英 様の写真

田村 君英 様
平塚胃腸病院検査部(日本消化器内視鏡技師学会会長)

図2 バイオフィルム

図2 バイオフィルム

米国では学会横断ガイドラインによるコンセンサス作りが進行中

Edmiston私からも1つ質問させてください。洗浄消毒後に2週間吊るされている内視鏡をそのまま使いますか、それとも再洗浄すべきと思いますか。

伏見よい質問ですね。私は再洗浄しないでそれを使います。そうしてはならないというデータを持ってないからです。

石原何日以上なら使ってはならないかについては難しい質問ですね。証明できないしエビデンスもありません。したがって私もその内視鏡を使います。

Edmistonこれについては私も調べており、また、洗浄消毒してから長期間を経過した内視鏡から皮膚の常在菌が同定されたとの報告もあり、私もその可能性はあると考えています。ただ、内視鏡の使用履歴によって菌の付着状況は異なるでしょう。米国周手術期看護師協会(AORN)は「7日以上未使用のものは再洗浄すべき」と唱えています。しかしながらこれについては関連学会ごとに考えが異なっているのが実情です。

伏見 了 先生の写真

伏見 了 先生
ワタキューセイモア株式会社 学術担当部長/東京医療保健大学大学院 准教授(日本環境感染学会)

石原異なった考え方のガイドラインが存在していることの弊害はないのでしょうか。

Edmistonここ2〜3年の間で米国、欧州、オーストラリアの11の関連学会が学会横断型ガイドラインの策定を進めています。我々はこの学会横断ガイドラインによってコンセンサス統一を図ってゆく方針です。このガイドラインは消化器疾患、感染症、感染制御など多面的に検討され、医療側、患者側の視点が盛り込まれた、バランスが取れたものにしていく必要があります。

伏見内視鏡室のゾーニングについて1つ質問があります。手術室では汚染器材の流れなどについてかなり徹底されてきたように思いますが、内視鏡室についてはいかがでしょうか。日本ではまだなかなかできていないように思います。米国の病院施設もいくつか見学しましたが、日本とあまり変わらず、処置室の後方で洗浄や消毒行程を行っていました。私が以前所属していた病院では、使用後の内視鏡をすべて中央滅菌供給部門(CSSD)に運んで処理できるゾーニングに変更しました。

Edmistonゾーニングをしっかり行うとしても、どうしても重複してしまうエリアが生まれてしまいますね。ゾーニングは、概念上(conceptual)のゾーニングと物理的なゾーニングがあると思います。手術室は流れが完璧に一方通行で決められていることが多いですが、それが内視鏡室だとなかなか一方通行だけにならないところに難しさと感じます。幸運なことに先生が勤務されていた施設では一方通行にすることのコンセンサスが取れたのだと思います。しかし、なかなかそれができない施設もあるようですね。

石原 立 先生の写真

石原 立 先生
大阪府立成人病センター 消化管内科部長(日本消化器内視鏡学会)

洗浄消毒の自動化こそが進むべき方向

Edmiston米国で研究開発されている機器は予備洗浄から本洗浄、高水準消毒までのプロセスが自動化されており、我々はその方向を目指して進んでいくべきと考えています。実際、機器は完成していますが、臨床データがまだ十分ではなく、FDAが用手洗浄の要らない内視鏡自動洗浄消毒器を承認した半面、2007年にASGEとSGNAは「ECRの効果が試験によって確認されるまでは、用手洗浄およびブラシ洗浄の手順を省かないように」と勧告しています。先生方は洗浄消毒を自動化することで用手洗浄は不要になると思われるでしょうか。また、どのようにしてこの新しい技術を評価するのか、日本でも普及するかについてお聞かせください。

伏見用手洗浄は個人差が出るし、規格化もできません。私は機械に任せるのが本来のあり方だと考えており、したがって自動化システムを発展させるべきと考えています。現在のシステムがどの程度まで信頼できるのかはわかりませんが、将来的には期待しています。

田村我々も広く洗浄消毒器を導入できればとは考えていますが、各施設のこれまでの体制や習慣を根本から変えることになるので時間はかかるかと思います。しかし、高い品質で洗浄消毒した内視鏡が提供でき、スタッフの感染リスクも低くなることは施設にとっても大きなメリットになることは間違いありません。導入に際して施設幹部を説得するためにはどのようなエビデンスがあればよいか、何かヒントをいただければと思います。

Edmiston自動化システムの有用性を探る試験が日本でも必要だと思われますか。私が思うに2つの施設が同様の手順でそれぞれ試験を行い、同様の結果が出れば十分に説得力を持つと思います。それが出発点ですね。

伏見そうですね。可能であればぜひやってみたいと思います。そして結果として自動化システムのメリットが示されれば、日本においても普及が早くなると思います。

尾家用手洗浄と比較してチャンネル内の菌量などに差が出れば説得力のあるエビデンスになりますね。伏見先生ばかりでなく、ここにいるメンバー全員がやってみたい試験だと思います。

Edmiston大変、有意義な議論でした。本日はありがとうございました。

尾家 重治 先生の写真

尾家 重治 先生
山口大学病院薬剤部 准教授(日本環境感染学会)

文献 1) Nelson DB, Muscarella LF. World J Gastroenterology 2006; 12: 3953-64 2) ASGE, SHEA Multisociety Guidelines Gsatrointestinal Endoscopy 2011; 73: 1075-84 3) Oie S, et al. Infect Control Hosp Epidemiol 2002; 23: 98-9