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滅菌関連情報 PLASMA LINK | ASP Japan合同会社 〜2005年 Vol.10

User Interview 中央病棟の建設を契機に、院内の脱EOG化を実現

杏林大学医学部付属病院

この記事のテーマ
  • EOG排出規制
  • ステラッド®導入効果

杏林大学医学部付属病院は、1日外来患者数2,000名以上、入院患者数約900名の大病院です。3次救急医療までをカバーする高度救命救急センターと総合周産期母子医療センターは24時間体制で運営され、東京西部地区三多摩の中核的医療センターの役割を果たしています。

同院では中央病棟の建設に際して、副院長の齋藤英昭先生のリーダーシップのもとで、発癌性が指摘されているエチレンオキサイドガス滅菌(以下、EOG)をできるだけ減らす方針を決定し、その代替として安全な低温プラズマ滅菌器ステラッド®を導入しました。そこで、齋藤先生と医療器材滅菌室看護師長の千田京子さん、および材料室で滅菌業務を担当されている黒田正敏さんに、ステラッド®導入の経緯やそのメリットなどについて、お話をうかがいました。

杏林大学医学部付属病院

副院長の発案で、院内でのEOG完全廃止を決定

杏林大学医学部付属病院は、特定機能病院として様々な手術に対応できる高度な機能を備えています。手術室は外来部門と中央部門合せて20室あり、年間7,700件以上の手術が行われています。それを陰で支えている部署の1つが医療器材滅菌室です。

医療器材滅菌室では、これまで低温滅菌をEOG滅菌で行っていましたが、EOGの発癌性など健康への悪影響が明らかになり、労働安全衛生法のEOG排出規制強化に対応した設備を整える必要性もでてきました。そこで、副院長の齋藤先生の発案で、医療器材滅菌室が移設される中央病棟の建設に際してEOG滅菌を全面的に見直すことにしたのだといいます。

杏林大学医学部付属病院/副院長 齋藤 英昭 先生

杏林大学医学部付属病院/副院長
齋藤 英昭 先生

杏林大学医学部付属病院/医療器材滅菌室看護師長 千田 京子 さん

杏林大学医学部付属病院/医療器材滅菌室看護師長
千田 京子 さん

同院では従来から滅菌業務を日本ステリ株式会社に委託しているため、実際に滅菌作業を行っているのは病院職員ではありません。しかし、院内にEOG滅菌装置を設置し、そこで作業が行われていたため、滅菌に関わるスタッフの健康と、環境への悪影響が心配されたのです。そこで齋藤先生は、院内での脱EOG化を図るため院内にEOG滅菌装置を置かないという方針を打ち立てました。

それに伴い、千田さん、黒田さんが中心となり、それまでEOG滅菌を行っていた機器・器材の滅菌方法を再検討し、一部は蒸気滅菌が可能な製品に買い替えてもらい、さらにEOGに替わる安全な低温滅菌法として低温プラズマ滅菌器ステラッド®を導入しました。現在、ステラッド®は医療器材滅菌室にステラッド®200が2台、手術室にステラッド®100Sが1台設置されています。

日本ステリ株式会社/第2種滅菌技士 黒田 正敏 さん

日本ステリ株式会社/第2種滅菌技士
黒田 正敏 さん

齋藤副院長がステラッド®導入を決断した3つの理由

  1. 滅菌時間が短いので器材の回転率が良く、多くの器材を揃えなくてもよい
  2. 発癌性の危険を考えなくてよい
  3. 災害時、電気は最も早く復旧するため電気のみで稼動するステラッド®は利便性が高い

院内スタッフの協力を得るには、滅菌に対する教育が必要

ステラッド®の導入に当たって同院では、CDCのガイドラインにそった形での洗浄、消毒、滅菌方法の見直しを行いました。そして、EOG滅菌を行っていた全ての再使用器材について、滅菌レベルまで本当に必要なのか、必要であればプラズマ滅菌に対応しているかどうかを確認しなければなりませんでした。手術室が20室もある同院では、膨大な数の器材が使われており、確認作業には8か月もかかったそうです。苦労してすべてのアイテムを調査し終えた結果、超音波検査のプローブ類など器材の製造年月日が古くプラズマ滅菌対応になっていないものと、スコープ類などプラズマ滅菌対応かどうか不明のものを合わせて40〜60アイテム(全体の約5%)が残り、それらはEOG滅菌を外注することになりました。今後購入する器材については、できるだけプラズマ滅菌対応のものを選択するよう各部署に依頼し、外注のEOG滅菌を減らしていく努力を続けているそうです。

このように脱EOG化を実現するためには、各部署の協力が必須です。当初は現場スタッフのプラズマ滅菌に対する理解・認識が薄かったため、千田さん、黒田さんは医師や看護師を集めて説明会を開き、現場にも出向いて詳しい調査や説明を行いました。

「医療器材滅菌室の業務自体、あまり理解されていない部分があり、また、医療器材滅菌室から供給される器材は完全に滅菌されているという信頼感があるなど、一般の医療従事者は滅菌業務については関心が高くないのが現状です。それらも含め、今後はニュースレターを発行するなど、滅菌に対する教育が必要になってくると思います」と千田さんはいいます。

ステラッド®導入により機器の使用効率が向上、滅菌不良も事前に阻止できるので安心

同院で実際に滅菌業務に携わっている日本ステリ株式会社の黒田さんに、プラズマ滅菌とEOG滅菌との違いを尋ねると、「ステラッド®の導入によって安全性の面で安心感が得られたのはもちろんですが、滅菌に要する時間も大幅に短縮されました。また、使用済み器材は、洗浄後の乾燥が不十分だと滅菌不良が起りますが、ステラッド®プラズマ滅菌は器材の乾燥が十分でない場合、それを検出して自動的に停止し、滅菌不良を事前に阻止できるため、安心して滅菌できた器材を提供できます」とのこと。

医療器材滅菌室看護師長の千田さんは、「滅菌時間が短縮されたことで、当日回収した使用済み器材をその日のうちに再度供給できるようになり、数が少ない医療器材などは効率よく使用できるようになりました。例えば、以前は古い器材と新しい器材を併用して手術を行っていたようなケースでも、今は新しい器材のみを午前と午後の2回使用できるようになったわけです。また、EOG滅菌装置を残した場合と比べて、常備しておかなければならない器材数が3分の1に減るので、その分だけコスト削減になったと思います」と、ステラッド®導入の利点を挙げてくださいました。

医療器材滅菌室に置かれたステラッド®200

医療器材滅菌室に置かれたステラッド®200

さらに、ステラッド®は電気の供給さえあれば稼動でき、しかも短時間での滅菌が可能なため、大きな災害が起きたときなどにも役立つ可能性があります。「もちろん、ステラッド®購入の初期投資やプラズマ滅菌に対応していない器具・器材の買い替えコストも計算に入れて導入を検討することが大切だ」と、齋藤先生はいいます。EOG滅菌の発癌性の懸念や外注EOG滅菌のコスト高の課題なども考慮に入れた上で、「多数の手術をこなしている施設では、プラズマ滅菌により器具を短時間で使い回せることの恩恵をより強く感じるのではないでしょうか」と話されました。

アスベストの事例を教訓に、 危機管理意識をもって脱EOGを推進

EOGの害はわかっていても、施設ごとに様々な事情を抱えており、杏林大学医学部付属病院のようにスムーズに切り替えが進んでいないのが現状です。「当院の場合は中央病棟の建設に際し、齋藤先生にEOGを撤廃する決断があったために、切り替えがうまくいったと思います」と千田さんは指摘します。

EOG廃止を推進された齋藤先生にその理由を尋ねると、「病院としては院内で滅菌業務に従事しているすべてのスタッフの健康を守る必要があり、アスベストの被害が大きな問題になっているように、何年も経ってからEOGの使用を許可した施設の責任が問われることも大いにあり得ます。これから新しい中央材料部を作りたいという施設は、EOG滅菌については、慎重に検討したほうがいいと思います」と答えてくださいました。

施設の紹介

杏林大学医学部付属病院

東京都三鷹市新川6-20-2
病床数:1,162床
手術室数:20室
年間手術件数:7,719件(2004年度)
低温滅菌器構成:
 ステラッド®200 2台
 ステラッド®100S 1台

杏林大学医学部付属病院