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滅菌関連情報 PLASMA LINK | ASP Japan合同会社 〜2006年10月 Vol.12

Special Interview アメリカにおける滅菌の最新事情

元CDC部長、ジョンソン・エンド・ジョンソンASP社学術部長
マーチンS. ファベーロ(Martin S. Favero)Ph.D.

この記事のテーマ
  • 海外情報
  • 滅菌保証

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の元部長であり、現在ジョンソン・エンド・ジョンソンASP社の学術部長を務めるマーチンS. ファベーロ氏が、2006年7月に、東京と大阪で開催されたプロフェッショナル・エデュケーションセミナー2006にて感染制御に関する講演を行うために来日しました。そこで今回、滅菌の先進国であるアメリカの一般的な滅菌方法や最新のモニタリング方法などについてお話を伺いました。

元CDC部長、ジョンソン・エンド・ジョンソンASP社学術部長 マーチンS. ファベーロ(Martin S. Favero)Ph.D.

オートクレーブやプラズマ滅菌がアメリカで滅菌の主流に

アメリカではEOG滅菌器のリスクが各医療機関において十分に認識されており、脱EOGの動きが着実に進んでいると聞きます。そのような状況の中、アメリカの医療機関において、現在どのような滅菌方法が主流なのでしょうか。

マーチン氏(以下M)まず滅菌に関しては、オートクレーブを使用するのが一般的です。そして、熱に対して大変敏感な医療器具は、プラズマ滅菌器を使って滅菌するのが主流になっています。今でもEOG滅菌器を使っているところがあることはありますが、その率は下がってきていると思います。

オートクレーブやプラズマ滅菌がそれだけ一般的になっているということは、アメリカの多くの医療機関においてEOGのリスクが既に認識されているということなんでしょうか。

Mそうですね。各医療機関がEOG滅菌にともなうリスクを認識し始めたことは間違いないでしょう。あと、滅菌の時間が長いことも、EOG滅菌器の使用が減少していることの大きな理由ですね。

例えば今日、EOG滅菌器で医療器具を滅菌したとしたら、その医療器具は明日まで使用できないわけですからね。ちなみに、日本ではまだ国の認可が降りていないのですが、ホルマリン滅菌もアメリカにおいては一般的な滅菌方法なのでしょうか。

Mホルマリン滅菌器はFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を受けていないので、アメリカでは使われておりません。ホルマリンには、人体に呼吸器障害をもたらすなどの毒性があるので、これは私の意見ですが、ホルマリン滅菌器の使用は、今後もアメリカでは認められないと思います。

バイオロジカルインジケータによりスピーディなモニタリングを実現

なるほど。日本においてホルマリン滅菌器の認可が降りたとしても、その導入に際しては慎重な見極めが必要かもしれませんね。
EOG滅菌にしろ、プラズマ滅菌にしろ、安全・確実に滅菌を行うためにはルールに沿って正しく使用するのはもちろんのこと、日常的に滅菌工程をモニタリングする必要があると思います。アメリカで一般的なモニタリングの方法、また、マーチンさんが推奨されるモニタリング方法がありましたら教えてください。

Mアメリカでは、バイオロジカルインジケータやケミカルインジケータなどを使用してモニタリングを行っています。そして、ヨーロッパと違い、アメリカではバイオロジカルインジケータを頻繁に使うべきだという意見があります。さらに、このバイオロジカルインジケータに関しては、酵素を併用したラピッド・エンザイム・リードアウトシステムや、酵素のみからなるインジケータなどを使うべきだという意見もあります。酵素のみからなるインジケータは、バイオロジカルインジケータとケミカルインジケータの中間に位置するといわれています。

バイオロジカルインジケータ(J&J社製)

バイオロジカルインジケータ(J&J社製)

アメリカではなぜ、これらのインジケータが推奨されているのですか。

Mスピードが評価されているのでしょう。例えば、酵素を併用したバイオロジカルインジケータは数時間以内に特定の細菌を検知できます。私が知る限りだいたい3、4時間で検知できますね。酵素のみからなるインジケータであれば、通常 30秒未満で判定を行えます。

そんなに早いんですね。日本においてもこれらのモニタリング方法は有効だと、マーチンさんはお考えでしょうか。

Mはい。やはりこの酵素を併用したバイオロジカルインジケータや、酵素のみからなるバイオロジカルインジケータなどを滅菌物に合わせて使いわけるのが、最も良い方法なのではないかと思います。どちらにせよ、日本においてもバイオロジカルインジケータやケミカルインジケータが、今まで以上に広く使われるようになると思います。

プリオンに汚染した医療器具をいかに滅菌するか

滅菌の質を高めるうえで、滅菌のモニタリングは不可欠であり、今のお話は興味深いですね。
現在、プリオンに汚染された可能性のある手術器具の滅菌方法が世界的に問題になっています。アメリカではプリオンに汚染された可能性のある手術器具の滅菌を行う上で、どのような滅菌方法が有効とされているのでしょうか。

Mクロイツフェルト‐ヤコブ病などの疑いがある患者に使われた医療器具の滅菌方法は、AAMI (Association forthe Advancement of Medical Instrumentation)のガイドラインの中に含まれています。そこで推奨されているのは、例えば、非常に高いリスクを抱えた組織、すなわち脳の組織に接触し、汚染した可能性のある医療器具のクリーニングを徹底的に行い、さらに、摂氏134度で18分間、蒸気滅菌を行う方法です。

プリオンに汚染した医療器具の滅菌に、プラズマ滅菌も有効なのでしょうか。

M今まさに検討している最中なのですが、プラズマ滅菌器をアルカリ性の洗浄液とともに使った場合には、プリオンを不活性化できる可能性があるという1つの検討結果が文献発表されています。ただし、あくまでも検討中であり、最終の結果はまだ出ていません。ですから、現時点では各国で推奨されているガイドラインに従い処理すべきだと思います。

わかりました。最後に、日本の医療従事者に伝えておきたい、感染対策に関する最新の情報がありましたら教えてください。

Mまず、最初にお伝えしたいのはMRSAに関することです。MRSAのような感染症は、今までは院内で感染すると考えられていたわけですが、日本でもアメリカでも、MRSAは何も院内だけで感染するものではなく、市中感染もあり得ることが報告されています。もしMRSAの患者さまがいらっしゃった時、どこどこの病院に原因があるとか、院内が感染源であるという判断をすぐに下すのは尚早であり、今後は市中感染の可能性も疑うべきであると思います。2つめにお伝えしたいのは、鳥インフルエンザに関することです。鳥インフルエンザが世界的により一層広がっていく可能性はあると思いますが、大半の疫学者は、常識的な当たり前の対策を講じれば、十分予防することができると信じています。
例えば、アルコールを含んだハンドジェルなどによる手洗いや、ワクチンなどの接種によって、院内、あるいは市中での感染の広がりを防止できると考えられていますので、日本のみなさまがこのような対策をきちんと行いさえすれば、鳥インフルエンザの感染を極端に恐れる必要はないと思います。

本日は貴重なお話をどうも有難うございました。