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  5. 2007年9月 Vol.14

滅菌関連情報 PLASMA LINK | ASP Japan合同会社 〜2007年9月 Vol.14

Special Report
欧州における滅菌の最新事情と新型過酸化水素低温プラズマ滅菌装置の位置付け

ハレ・ヴィッテンベルク-マルチン・ルター大学教授 ライプチヒ大学病院衛生委員会会長
マリアーヌボーノフリップ(Marianne Borneff-Lipp) 先生

この記事のテーマ
  • 海外情報
[画像] ハレ・ヴィッテンベルク-マルチン・ルター大学教授 ライプチヒ大学病院衛生委員会会長 マリアーヌボーノフリップ先生

ライプチヒ大学病院衛生委員会(ドイツ)の会長などを務めるマリアーヌボーノフリップ先生が、第82回日本医科器械学会大会のランチョンセミナー(座長:東京医療保健大学大学院感染制御学学科長教授大久保憲先生)で講演を行いました。欧州における滅菌の最新事情や過酸化水素低温プラズマ滅菌(以下、低温プラズマ滅菌)の位置付けについて語られた講演の内容をレポートします。

講演の主な内容

  • ドイツにおける医療器材の規制要件
  • ハレ・ヴィッテンベルク大学病院の品質管理サイクル
  • 4大滅菌方法のリスク比較
  • 低温プラズマ滅菌のメリット

欧州の最先端をゆく中央材料室

ボーノフ: 本日は欧州における滅菌の最新事情と低温プラズマ滅菌の位置付けについてお話したいと思います。

私は現在、ドイツのハレ・ヴィッテンベルク−マルチン・ルター大学病院( 以下、ハレ・ヴィッテンベルク大学病院)で働いています。この病院のスタッフは3,500人ほどで、毎年、約3万5,000人の患者さまが来ます。中央材料室は約1,000平方メートルの広さを誇り、ドイツはもちろん、欧州でも、最もモダンで機械化された中央材料室であると言われています。

この最先端の中央材料室を紹介する前に、ドイツにおける医療器材に関連した規制についてお話します。ドイツには、医療器材の汚染防止を目的とする医療機器法という法律や医療機器オペレーター条例、ISO9001、ISO13485、ロバート・コッホ研究所の推奨など厳しい制約があります。

このような法律や規制を遵守し、様々な認証を取得するためには、徹底した品質管理を行う必要があります。品質管理の工程としてはまず滅菌のすべてのステップを文書化し、さらにステップごとに品質ガイドブックを制作する必要があります。そのうえで、どのステップにおいても将来的にミスが起きないように徹底した内部監査を行い、内部トレーニングも継続的に実施しなければいけません(図1参照)。

ハレ・ヴィッテンベルク-マルチン・ルター大学病院

ハレ・ヴィッテンベルク-マルチン・ルター大学病院

ボーノフ先生の貴重な講演を聞けるとあって多くの関係者が来場

ボーノフ先生の貴重な講演を聞けるとあって多くの関係者が来場

図1 品質管理の工程

  • 消毒または滅菌処理ごとの文書化
  • 工程パラメータの文書化
  • 責任の文書化
  • 文書の保管
  • 品質ガイドブックの制作
  • ミスを避けるための内部監査
  • 継続的な内部トレーニング

高圧蒸気滅菌と低温プラズマ滅菌について

では実際に、医療器材を処理するサイクルを説明したいと思います。使用した医療器材は中央材料室に移送します。次に、洗浄、消毒を行います。我々の病院には自動のトンネル型洗浄器があり、一方から使用した医療器材を入れて、反対からきれいになったものが出てくるというワンウェイシステムになっています。このシステムを採用することで、汚染された医療器材と洗浄された医療器材を完全に分けることができます。

洗浄、消毒が終わると仕分けを行い、各医療器材の情報をデータベースに保存します。そして、それぞれの医療器材を検査して、必要な修理、保守を行い、包装します。また、我々の病院はバーコードシステムを採用しており、すべての医療器材をバーコードによって管理。どの患者さまに使われたのか、どの滅菌プロセスにあるのか、といった履歴を追跡できるようにしています。この履歴情報は30年間保存され、どの患者さまにどの医療器材が使われたかが30年間わかるようになっています。

ハレ・ヴィッテンベルク大学病院の中央材料室に設置された3台の高圧蒸気滅菌器と2台のステラッド®

ハレ・ヴィッテンベルク大学病院の中央材料室に設置された3台の高圧蒸気滅菌器と2台のステラッド®

そして、滅菌業務は特別なトレーニングを受け、資格を得たスタッフが行います。現在、欧州で採用されている主な滅菌方法としては、高圧蒸気滅菌、ホルマリン滅菌、 EOG滅菌、低温プラズマ滅菌の4つが存在しますが、私たちの中央材料室では、高圧蒸気滅菌と低温プラズマ滅菌を採用しています。高圧蒸気滅菌は、布地、金属、ガラス、そして、合成材料の一部の滅菌に適しています。一方、低温プラズマ滅菌は、布地には適していませんが、金属、ガラス、合成材料の滅菌には適し、さらに4つの滅菌方法の中で唯一、内視鏡などのエレクトロニクスにも適合しています。

低温プラズマ滅菌の滅菌精度を検証

次に4つの滅菌方法が抱えるリスクについてお話したいと思います。まず毒性に関して比較してみると、特にEOG滅菌は、発ガン性があるということがリスクとして挙がりますし、エネルギー消費量も非常に高いです。高圧蒸気滅菌は、技術的、毒性学的には特に課題はないですが、エネルギー消費量が比較的高いという課題があります。低温プラズマ滅菌は毒性学的なリスクが低く、エネルギー消費量も非常に低いということで、他の滅菌方法と比べ、利点があると言えます。

ただ、医療器材を滅菌するうえで、これらのポイントと共に、どれくらいの精度で滅菌を行えるかということがとても重要になってきます。そこで、低温プラズマ滅菌の滅菌精度を明らかにするために、試験検体あたり 10個のバイオロジカルインジケーターを用いた定量的評価試験を行いました。

試験はステラッド® 100Sとステラッド® 200、およびステラッド®の最新機種であるステラッド® NX™の3つを使って実施しました。メーカーの推奨条件を確認するための模擬検体を使った試験と、臨床条件下での滅菌効果を確認するための医療器材を使った試験を行いました。なお、これらの試験はすべてハーフサイクルで実施しました。

そして試験の結果、すべてのステラッド® が、メーカーが掲げる推奨条件において、滅菌が可能であることはもちろん、メーカーの推奨条件より厳しい環境においても滅菌できるという結果が確認されました。また、実際に医療器材を使用した試験によって、内視鏡などの管腔内部の滅菌精度や、ステラッド® NX™についてはブースター無しで管腔内部を滅菌できることが明らかになりました(図2参照)。

加えて、ステラッド®には、使用に際しての規制が最小限、あるいはほとんどないというメリットや、稼働コストが低いため、最初の投資が中長期的には相殺されるというメリットがあります。そして、ステラッド®はサイクルタイムが短く、なかでもステラッド® NX™は最短で28分と短いため、医療器材の回転率が上がり、高価な医療器材の購入を最小限に抑えられ、医療器材の投資コストも抑えられるというメリットもあるということが言えます。

日本でこのようにお話させていただいたことを大変嬉しく思います。ご清聴有り難うございました。

大久保: お話の前半に出た、ボーノフ先生が働いているハレ・ヴィッテンベルク大学病院は、ドイツ工業規格、欧州規格、ISO 規格などを取得した、素晴らしい病院だそうです。それから、お話の後半には、ステラッド®のいろいろなデータが紹介され、特にステラッド® NX™に関しては、ブースターが不要で、なおかつ、短時間で滅菌できることなど、その特性についてご説明いただきました。ボーノフ先生、本日は有り難うございました。

東京医療保健大学学科長教授 座長 大久保 憲 先生

座長 大久保 憲 先生
東京医療保健大学学科長教授

図2 定量的評価試験に用いた検体と試験結果

検体種類 対象滅菌器 対象検体 Log減少値 ブースター サイクル

模擬検体

ステラッド®NX™

テフロン 1x 350mm

6.3

no

std.ハーフ

テフロン 1x1000mm

6.2

no

ステンレス 1x 150mm

6.2

no

ステンレス 1x 400mm

6.2

no

ステンレス 1x 500mm

6.2

no

adv.ハーフ

ステラッド®100S

テフロン 1x 500mm

6.2

no

ショートハーフ

ステンレス 3x 400mm

6.2

no

テフロン 2x1500mm

6.2

no

ショートハーフ

ステンレス 1x 500mm

6.3

no

ステラッド®200

テフロン 1x 500mm

6.2

no

ショートハーフ

ステンレス 3x 400mm

6.3

no

試験器材

ステラッド®NX™

尿管鏡 1.7x 485mm

6.2

no

adv.ハーフ

腹腔鏡  5x 330mm

6.2

no

std.ハーフ

胃鏡 2.8x1160mm

6.2

no

adv.ハーフ

ステラッド®100S

尿管鏡 1.7x 485mm

5.7※

yes

ロングハーフ

腹腔鏡  5x 330mm

6.2

no

ショートハーフ

胃鏡 2.8x1160mm

6.2

no

ショートハー フ

頭蓋鏡 0.6x 700mm

6.3

yes

ロングハーフ

ステラッド®200

尿管鏡 1.7x 485mm

6.1

yes

ロングハーフ

腹腔鏡  5x 330mm

6.0

no

ショートハーフ

胃鏡 2.8x1160mm

6.1

no

ショートハー フ

頭蓋鏡 0.6x 700mm

6.1

yes

ロングハーフ

青字:製造元推奨適用外 ※初期菌数が少なかったため5.7が最大