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滅菌関連情報 PLASMA LINK | ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 ASP事業部 〜2009年7月 Vol.16

Special Report
CJD対策は2006年から実施。ガイドライン2008年度版にも速やかに移行できました。

愛媛大学医学部附属病院(愛媛県東温市)

この記事のテーマ
  • ガイドライン
[画像] 愛媛大学医学部附属病院(愛媛県東温市)

愛媛大学医学部附属病院は、CJD対策にいち早く取り組んできました。他院に先駆けて対策を講じられた経緯や運用実態、ガイドラインに沿った洗浄・滅菌方法の使い分け、さらに、二次感染を徹底的に防ぐための独自の工夫について、眼科の大橋裕一教授と、手術部の栗田衛看護師長、中央材料部の本園薫副師長と八木久夫さんに、それぞれの立場からお話を伺いました。

器材に応じた、低温・高温滅菌の使い分け

愛媛県の県庁所在地、松山市の東側、東温市にある愛媛大学医学部附属病院は、「愛媛県民から信頼され愛される病院」「患者様の立場に立てる医療人の養成」「愛媛で育ち、世界に羽ばたく医療の創造」を目標に掲げ、優れた医療従事者を輩出しています。また、卒業後も愛媛県に残って働く学生が多いことも特徴の一つです。

また同院は、地域の医療をリードする、愛媛県内で唯一の大学病院として、愛媛県に多いと言われる脳卒中やガンに関しても先進的な医療の研究を続けており、人材面でも技術面でも、活力に満ちた病院です。

眼科 教授 大橋 裕一 先生

眼科 教授 大橋 裕一 先生

同大教授で、感染症に詳しい眼科の大橋裕一生は、2008年に厚生労働省が制定した「プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版)要約」における第8章眼科治療の執筆者です。

そこにも書かれている異常プリオンの不活性化策のうち、大橋先生は「SDSでの煮沸消毒は、原理としては素晴らしいのですが、現場への適用には限界があるのでは?」とのご意見です。というのも、この方法では、実際に器材の素材劣化が懸念されるほか、作業従事者に危険が及ぶ可能性もあるからです。したがって、「現場としては、アルカリ洗浄とオートクレーブまたは過酸化水素低温ガスプラズマによる不活性化策が受け入れやすいですね」と続けられ、さらに、「眼科用の精緻な器具については、現在、超音波処理を併用した弱アルカリ洗浄とプラズマ滅菌の組み合わせで処理しています。この手法は、眼科の手術器具には非常に向いているので、今後、広がっていくと考えています」と付け加えられました。

2008年度のガイドライン策定後もまだ課題は山積しています。大橋先生は、「眼科と同様に、ガイドラインでハイリスク手技と規定されている整形外科医、脳神経外科医の先生方と共にリスクを伴う手術について、保険点数加算の要望書を厚生労働省に提出しようと考えています」と意気盛んで、ハイリスク手技に用いる手術器材のディスポ化を進めるとともに、処理作業に必要な器材の購入を促進し、患者や医療従事者の負うリスクを減らすことを目的とされています。

CJD患者の症状は白内障と合併の可能性もある

眼科医としての大橋先生は、「高齢者に多い白内障の患者さんが、CJDに感染していないかを見破る努力をしてほしい」と強い眼差しで語ります。人間の視覚の中枢は後頭葉にあります。ここにハイデンハイン型と呼ばれるCJDの病巣ができると視力が低下しますが、白内障を合併していると、白内障が原因だと思い込んでしまう危険性があります。「高齢者で認知障害や神経症状のある場合には、一度はCJDを疑って欲しいと思います。それが二次感染を食い止めることにもつながりますから」と力説されました。

「CJDの二次感染を防ぎたい」という大橋先生の考え方は、同院内での滅菌への取り組み方にも表れています。一見CJD対策が不要そうに見える器材に関しても、ガイドラインに沿った洗浄・滅菌処理がなされているのです。

すべての器材へのCJD対策は手間のかかることではない

同院には手術室が10室あり、年間約4,500件(2008年度)の手術が行われています。そのうちハイリスク手技を伴う手術は、約800件(表)。ハイリスク手技には用いていない器材も、2008年のガイドラインに準拠した方法で滅菌を行っています。手術部の栗田衛師長はその理由を「どの患者さまにどの器材を使ったのかの履歴を取ることが難しい現状から、器材を分けて処理を行うのは現実的ではないと考えました。すべての器材についてCJD対策をとることは、それほどの手間ではありません」と説明します。病棟で使われた器材の滅菌を担当する中央材料部も考え方は同じです。これまでCJD罹患患者に使用した器材の滅菌依頼は受けたことはないそうですが「依頼される器材はどれも、CJDに感染した患者さまに使われたものとみなしています」と中央材料部の八木久夫さんは語ります。

中央材料部 医療機器操作員 八木 久夫 さん

中央材料部 医療機器操作員 八木 久夫 さん

表 手術件数とハイリスク手技の割合(2008年)

表 手術件数とハイリスク手技の割合(2008年)

過去に長時間の高温処理で、器材が使用できなくなったことも

同院でのCJD対策への取り組み開始は、2006年に遡ります。2005年に日本脳神経外科学会から出された方針に沿い、脳神経外科手術に用いた器材に、オートクレーブで132℃、60分の処理を施していました。しかし、現場では混乱が起こりました。「器材の痛みが激しく、数回の滅菌で20万円近くする鑷子を含む、200万円分くらいのセットが1年くらいで使えなくなったことがあります。使用には耐えても、変色してしまうものは数え切れないほどでした」(栗田師長)。

手術部 看護師長 栗田 衛 さん

手術部 看護師長 栗田 衛 さん

2008年に出されたガイドラインでは、アルカリ洗浄を前提に、高温処理にかける滅菌時間は長くても18分に短縮され、低温処理が必要な器材には過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌と組み合わせた処理が推奨されています。同院では、このガイドラインに先駆けて、器材の滅菌に関してルールを設けました。これが実現したのは、学会や研究会に積極的に参加して情報を収集し、手術部、中央材料部、それから感染対策担当者らの間で連絡を密にとっていた結果です。

このルールに従い、同院では、従来からの洗浄・滅菌法の変更に加え、ディスポ化が可能な器材はディスポ化することにしました。その上で、そのいずれにも不向きなものは、過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌と組み合わせた処理をしています。もちろん、どの器材がどの滅菌器での処理で劣化しないかについては、「不明な点があれば、製造業者の方に持ち帰って検討していただいています」と中央材料部の本園薫副師長は言います。こうすることで、それまでのような器材の劣化に歯止めをかけることができました。

新器材購入は現場への投資 手術件数や収益の増加にもつながる

滅菌方法の変更に伴っては、新たな器材の購入も必要でした。病院長らは非常によく理解を示してくれたそうです。「病院の収入のうち、手術部の収入は15% 程度と言われています。手術部の体制を整えることは、病院を支えることにもなるからです」(栗田師長)。同院では法人化後、収入が飛躍的に増加していますが、そこには積極的な先行投資のコンセプトがあります。特に、設備や体制が整っている中央手術部では、2010年春、さらに手術室が2室増えます。この増築により、年間手術件数が1割は増えるのではないかと栗田師長は考えています。

中央材料部 副師 長本園 薫 さん

中央材料部 副師 長本園 薫 さん

本園副師長も、「施設にはそれぞれの事情があると思いますが」と前置きしたうえで、「二次感染は、決して起こしてはいけないものです。病院で生活されている患者さまや医療従事者のためにも、早期に対応していくことが必要ではないでしょうか」と穏やかに語ります。

ガイドラインに準じた器材処理方法の特性を見極め科別に器材を使い分け

同院で新しいガイドラインに沿った滅菌方法がスタートしたのは、2008年12月です。手術部では、従来から所持していた過酸化水素プラズマ滅菌器を更新したうえ、NXタイプを追加で購入しました。NXタイプの追加を決めた理由は、「滅菌サイクルが1サイクルで済むためスピードが速いことと、微細で繊細なものも滅菌が可能だからです」(栗田師長)。

過酸化水素プラズマ滅菌の前には、ガイドラインにある通り、アルカリ洗剤での洗浄を行っています。CJD対策を取る前は、中性洗剤を使っていましたが、「アルカリ洗剤に変えたことで、洗浄結果が目に見えて良くなった」と栗田師長は言います。洗浄については、原則としてウォッシャー・ディスインフェクターで行い、一部を手洗いしています。その際には、ゴーグル、マスク、手袋などを着用し、洗浄者の安全を確保しています。

2サイクルの確認は2人でダブルチェック 経験豊富な看護師が担当する

ハイリスク手技に用いた低温処理が必要な器材を処理する際は、アルカリ洗剤洗浄と過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌2サイクルを組み合わせて行うことがガイドラインで推奨されています。ここで注意していることは「何回目の滅菌サイクルなのか分からなくなることを防ぐために、滅菌前後には必ず経験豊富な看護師が立ち会うこととし2人でダブルチェックを行うことで、ミスを避ける工夫をしています」と説明します。

中央材料部では「器材は毎回リパッケージをします。インディケーターもすべて入れ換えています。これは滅菌の有効期限が切れた器材を再滅菌する際と同様の考え方です」と八木さんは語ります。

感染の防止に対する意識が高く、洗浄・滅菌の過程からミスを排除する取り組みを続ける同院は、今後も、掲げた目標の通りに、愛媛県民から信頼され、かつ、喜ばれる医療を提供し続ける存在であり続けることでしょう。

施設の紹介

[画像] 愛媛大学医学部附属病院

愛媛大学医学部附属病院

愛媛県東温市志津川
病床数:606床
手術室数:10室
(救命処置室含む)
手術件数:4,560 件
(2008年度)

愛媛大学医学部附属病院のウェブサイト

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