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滅菌関連情報 PLASMA LINK | ASP Japan合同会社 〜2009年11月 Vol.17

Special Report
酸化エチレンガス排出規制とCJD対策をサプライセンター主導で早期実現

大阪府済生会中津病院(大阪府大阪市)

この記事のテーマ
  • EOG排出規制
  • ガイドライン
[画像] 大阪府済生会中津病院(大阪府大阪市)

2009年3月末で、大阪府済生会中津病院では酸化エチレンガス滅菌器(EOG滅菌器)の使用を停止。2008年に改正された「大阪府生活環境の保全等に関する条例」と、「プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版)要約」を合わせて考慮した結果でした。これら一連の変更は、サプライセンターのスタッフの素早く的確な判断と行動あってのことでした。

大阪・梅田の中心街から歩いて5分ほどのところにある大阪府済生会中津病院は、全26科、病床数778床の総合病院で、急性期から回復期まで、幅広い患者を受け入れる体制が整っています。

9室ある手術室のうち7〜8室が常に使用されており、「土曜日もフル稼働状態で、手術件数は2006年は約4,300件、2007年は約4,500件、2008年は4,821件と年々増加し、地域での役割はますます高まっていると言えるでしょう」と院長補佐の戸田常紀先生は語ります。

副院長 戸田 常紀 先生の写真

副院長
戸田 常紀 先生

同院では2009年3月末で、EOG滅菌器の利用を絶ちました。現在、滅菌が必要な器材は、3台あるオートクレーブか、2009年に入って購入した過酸化水素低温プラズマ滅菌器で処理しています。

条例改正もガイドラインも待っていたものでした

ここに至った背景には、2008年3月に大阪府が改正し、2009年4月から施行した「大阪府生活環境の保全等に関する条例」と、2008年9月に厚生労働省の示した「プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版)要約」の存在がありました。

「大阪府生活環境の保全等に関する条例」の改正では、EOG滅菌の際に使用する酸化エチレンに排出規制が設けられました。

「安全性の確保のため、待っていたものがやっと来たという感じでした」と語るのは、当時のサプライセンター師長で、現在は感染管理認定看護師(ICN)として務める堀越敦子さん。

整形外科部長 大橋 弘嗣 先生の写真

整形外科部長
大橋 弘嗣 先生

感染管理認定看護師 堀越 敦子 さんの写真

感染管理認定看護師
堀越 敦子 さん

同院では当初、EOG滅菌器を使い続けることを前提に、「ガスの無毒化装置の導入を検討しました」とサプライセンター 看護助手の平松 治さんは当時を振り返ります。

大阪府の説明会に出席し、すでに無毒化装置を設置していた四国の病院へも見学へ行くなどして研究を重ねてきた平松さんですが、不安を感じていたと言います。「無毒化装置をつけてその場はしのげても、近い将来、より規制が進めば、EOG滅菌器は使えなくなるだろうと思ったからです」。

しかし、改正された条例には速やかに従わなくてはなりません。そこで院内での手続きを重ね、無毒化装置の設置でほぼ決定した2008年9月に、「プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版)要約」が発表されたのでした。

「待ちに待ったものでした」と平松さんは言います。実は同院では、2005年に日本脳神経外科学会から出された方針に準拠しようとしたのですが、そこに示されている滅菌方法での運用は、現実的なものではなかったからです。ところが2008年に出されたガイドラインでは、過酸化水素低温プラズマ滅菌器を使用する、現場でも導入のしやすい処理法が推奨されていました。また、EOG滅菌では、CJD対策に不十分であることもわかりました。

そこで、過酸化水素低温プラズマ滅菌器を導入し、その代わりにEOG滅菌器に無毒化装置をつけるのではなく、廃止することで、サプライセンターとしては方向性が固まったのです。

委員会の開催を待たず関連医師の内諾を取り付けた

そこでまず行ったことは、ハイリスク手技を用いた手術に関連する各診療科の部長医師からの内諾を得ることでした。奮闘したのはサプライセンター師長の生川里依子さんです。器材購入を決定するのは病院長や総長ですが、「先生方の使う器材の滅菌方法を変えることになるので、先生方にも、導入への働きかけに協力をしていただきたいと考えました」と話します。周囲の協力も得て医師のもとへ足を運び、各科からOKの返事を取り付けました。翌日には、サプライセンターから院長へ、各科の部長らの署名・捺印入りの要望書を提出しています。

戸田先生は「正式な委員会の開催を待っていては遅いという判断があれば、こういった連携を行うことは珍しいことではありません」と言います。普段からの信頼関係があってこそのことでしょう。院内の手術連絡会議で過酸化水素低温プラズマ滅菌器の新規購入の承認が得られたのは、ガイドラインの発表から40日後というスピーディさでした。

サプライセンターからの「EOG廃止、プラズマ導入」という希望を聞いた医師は全員が協力的だったと言います。各科とも、それまでEOGで滅菌してきた器材は、完全にSUD(使い捨て)化するか、オートクレーブまたは過酸化水素低温プラズマ滅菌器での処理が可能なものへ変更することになりました。

整形外科部長の大橋弘嗣先生は「調査の結果、当科の場合は、オートクレーブまたは過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌で処理できないものは、タニケットくらいであることがわかりました」と言います。

同院の整形外科は特に関節鏡手術や脊椎外科の、ハイリスク手技を伴う手術が多いことが特徴です。他人からの骨の移植も行っています。

そこで過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌で処理できるタニケットのサンプル集めに3カ月間をかけ、比較し、それまで使っていたものに最も使い勝手の近いものを、新たに使用するようにしました。

表 手術件数とハイリスク手技の割合(2008年)

表 手術件数とハイリスク手技の割合(2008年)

カードやマーク、手書きメモで滅菌記録の管理を徹底

サプライセンターに導入された過酸化水素プラズマ滅菌器は、1日2〜3回使用されています。

滅菌前のアルカリ洗剤による洗浄には、ウォッシャー・ディスインフェクターを用いています。洗剤の選択はメーカーの協力のもと、大阪市の排水基準まで中和できるかどうかや耐腐食性などが考慮して行われました。

ハイリスク手技に用いられた器材のうち、オートクレーブで処理できないものは、ガイドラインに沿って、アルカリ洗剤による洗浄ののち、過酸化水素プラズマ滅菌器に2サイクルかけられます。

サプライセンター 師長 生川 里依子 さんの写真

サプライセンター 師長
生川 里依子 さん

サプライセンター 副長 高田 祐治 さんの写真

サプライセンター 副長
高田 祐治 さん

サプライセンター 看護助手 平松 治 さんの写真

サプライセンター 看護助手
平松 治 さん

目の前にある器材が1サイクル目なのか2サイクル目なのか、あるいはハイリスク手技に用いたものであるのかないのかを混同しないよう、サプライセンターではきめ細かな工夫をしています。

まず、器材を並べたトレイに入れるために「プラズマ1回目」「プラズマ2回目」と書いたカードを準備しています(写真1)。

「2サイクルと聞いて一番に考えたのは、これを間違えないようにすることでした。ルールを決め、1カ月くらいの期間をかけて練習を行いました」と生川さん。今は、「1サイクル目が終わって取り出した時には、『プラズマ2回目』のカードをすぐに入れるようにしています」とサプライセンター副長の高田祐治さんは説明します。

また、ハイリスク手技に用いた器材であることが一目でわかるよう、パッケージにはプリオンを示すPの文字を記しています(写真1)。

滅菌処理が終わると、滅菌管理記録用紙に手書きで何を滅菌したかを記録し、それを滅菌器の印刷記録とともに、保管しています(写真2)。

この手順は、何度かの研修を通して作業スタッフ全員に徹底されています。過酸化水素プラズマ滅菌器の導入以前から使ってきた手順書の必要部分を差し替え、すぐに参照できる体制を整えています。高田さんは「稼働してから特に手順を修正した点はありません」と笑顔で話します。

そこまで厳密な手順を全員が順守しているにも関わらず、平松さんは「過酸化水素プラズマ滅菌器の導入で、効率があがりました」と断言します。実は、規模の大きな病院にも関わらず、サプライセンターはほぼ10人で切り盛りしていると言います。しかも、勤務時間は9時から17時までです。

写真1 滅菌工程「過酸化水素プラズマ滅菌器」で滅菌する場合」

写真1
滅菌工程「過酸化水素プラズマ滅菌器」で滅菌する場合」

写真2 滅菌管理記録用紙

写真2 滅菌管理記録用紙

必要なのは心構えと志 それが感染を未然に防ぐ

サプライセンターで長く尽力してきた経験のある医療安全管理者の奥村和子さんは、同院の特徴に、滅菌作業を外部機関にほとんど委託していない点を挙げます。「サプライセンターは、当院の『かなめ』だと考えています。滅菌保証されたものを提供して、最高の状態で使っていただくことを基本においています。ですから、サプライセンターは質を落とすわけにいかないのです」と現在の滅菌器を選んだ理由をきっぱりと言います。

堀越さんもICNの立場から、心構えの大切さを強調します。「新型インフルも、来るかもしれないと思っていればスムーズに対応できるのと同じです。EOGの排ガス規制も、東京、大阪で始まっているので、他の地域でも始まるものだと思っていた方がいいのではないでしょうか」とアドバイスします。

医療安全管理者 奥村 和子 さんの写真

医療安全管理者
奥村 和子 さん

戸田先生は今の医療機関に求められているものは、安全対策と、個人情報などの守秘と考えています。その安全対策の大きな柱となるのは医療事故防止、そして感染の防止です。「評価は後からついてきます。
なによりも、病院に何が求められているかを、管理者の一人として考えるべきです」と話します。

整形外科部長の大橋先生は、「学会などでの情報交換を通じて整形外科医はみな、プリオン対策の必要性を認識しているはずです」と指摘します。そして「CJDはかかってしまったら治療はできませんし、検出も難しい。ですから、十分な滅菌で予防するのが何よりも大事です」と力強く語ります。

それぞれ立場は異なるものの、志の高い医療人の集う同院だからこそ、素早い条例対策、そしてCJD対策がとれたのでしょう。
今後もますます、大阪府済生会中津病院は、大阪の中心地において不可欠な存在となっていくに違いないでしょう。

施設の紹介

[画像] 大阪府済生会中津病院

大阪府済生会中津病院

大阪市北区芝田2丁目10番39号
病床数:778床
手術室数:9室
手術件数:4,821 件
(2008年度)

済生会中津病院は「介護老人保健施設ライフケア中津」「中津特別養護老人ホーム喜久寿苑」「大阪乳児院」「大阪府立整肢学院」「中津看護専門学校」からなる『中津医療福祉センター』の中心的役割を担う。

大阪府済生会中津病院のウェブサイト

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