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滅菌関連情報 PLASMA LINK | ASP Japan合同会社 〜2009年11月 Vol.17

Special Report
常に最新・最良の医療を提供するためにマイナーチェンジを繰り返す

医療法人医仁会 中村記念病院

この記事のテーマ
  • ガイドライン
[画像] 医療法人医仁会 中村記念病院

2008年9月、「プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版)要約」が公開されました。

公開以前からプリオン対策に着目し、公開後いち早く動き始めた病院があります。日本初の脳神経外科専門病院として誕生し、常に最新・最良の医療を目指している医療法人医仁会中村記念病院です。ガイドライン導入に当たっては、「マニュアルをマイナーチェンジしただけ。大きな労力はかからなかった」と語る診療部 部長の大里俊明先生。看護部手術室の山田眞弓師長、藤原睦主任とともにお話を伺いました。

脳神経外科専門病院として開院以来の24時間救急体制を堅持

中村記念病院は、1967年に日本初の脳神経外科専門医院として開設されました。
開院以来、24時間救急医療体制を守り続け、札幌市の一次・二次救急指定病院として、市内はもちろん、近隣市町村からの救急医療に貢献しています。

「当院には、年間約1万件の救急外来がありますが、その半数は救急車による搬入です。繁華街が近いことから、特に頭部外傷が多いのですが、脳卒中も年間約1,000件に上り、脳梗塞はその7割に達します。その現状に対し、夜間の救急体制は医師3人で臨み、放射線技師2人、看護師2人が当直しています。こうした救急医療体制は、先代院長である故・中村順一氏が貫いてきた『来る者は拒まず』という姿勢が、中村記念病院の遺伝子として脈々と受け継がれているからに他なりません。さらに近年では、地域の病院とともに、脳卒中連絡協議会を立ち上げ、地域連携による救急体制の構築にも取り組んでいます」と大里先生は話します。

診療部 部長/脳卒中センター 副部長/日本脳神経外科学会 専門医/日本脳卒中学会 専門医 大里 俊明 先生 の写真

診療部 部長
脳卒中センター 副部長
日本脳神経外科学会 専門医
日本脳卒中学会 専門医
大里 俊明 先生

脳神経外科・神経内科・耳鼻科・眼科・整形外科・心臓血管外科・一般外科・内科・放射線科・麻酔科・リハビリテーション科と診療科目も充実している中村記念病院の最大の特徴は、脳神経疾患に特化した医療体制にあります。「脳卒中センター」に次いで、2009年には「脳腫瘍センター」、「ガンマナイフセンター」を新たに開設し、その他にも、モービルMRIによる「脳の検診」を道内各地で毎年実施するなど、医療活動は多岐にわたります。

大里 俊明 先生の写真

脳神経外科医・神経内科医合わせて40数名という厚い医師層は、国内を見渡しても例がないうえ、最新の手術用顕微鏡をはじめとする先進の医療技術・設備が積極的に整備されていることも注目される点です。

既存マニュアルをマイナーチェンジ 処理方法が明確に

中村記念病院の1 年間の手術件数は1,099件(2008年度)。その内、脳神経外科645件(脊椎5件を含む)と、ハイリスク手技が全手術の約6割にものぼる同院にとって、「プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版)要約」の導入は、大変な苦労があったにちがいありません。ところが、大里先生からは「既存のマニュアルを見直して、マイナーチェンジしただけです。特に大きな労力はかかりませんでした」と意外な答えが返ってきました。

以前も、ガイドラインや指針などが公開されるたびに、院内のマニュアルや体制を見直し、マイナーチェンジを繰り返してきたため、今回は洗浄剤を変更しただけで、大きな見直しは必要なかったといいます。さらに、山田師長は「現場での混乱もありませんでした。むしろ、滅菌方法が明確になったおかげで、それまでの不安が解消され、業務が格段にやりやすくなりました。スタッフもみんな喜んでいます」と話します。

看護部 手術室 師長 山田 眞弓 さんの写真

看護部 手術室 師長
山田 眞弓 さん

長時間の高温滅菌で器材が著しく劣化したことも

CJD対策について中村記念病院はどのように改善を続けてきたのでしょうか。2005年当時まで話は遡ります。

「2005年11月に、社団法人日本脳神経外科学会から『緊急の御連絡とお願い』という文書が届きました。その文書には、『手術器具セットの消毒は、高圧蒸気滅菌法でオートクレーブを用い、常時132℃ 60分に設定』することと、『使用セット番号、患者さんの氏名や使用日時等を必ず記録し保存する』ことが明記されていました。しかし、当院の高圧蒸気滅菌器(以下オートクレーブ)では、文書に示された設定(132℃、60分間)に対応できない機種でした。時期を同じくして、手術室の改築があり、オートクレーブも移設する計画がありましたので、検討した結果2台とも最新の機種に買い換えていただきました」(山田師長)。

看護部 手術室 主任 藤原 睦 さんの写真

看護部 手術室 主任
藤原 睦 さん

当時は、そのオートクレーブ2台と、過酸化水素プラズマ滅菌器1台、ウォッシャー・ディスインフェクター1台という体制で滅菌業務を行い、酸化エチレン滅菌(以下EOG)については2001年に特化則によるEOG排出規制が示されたのをきっかけに、EOG滅菌器を廃止ししていたので、どうしてもEOG滅菌が必要な器材は週に1回外注に出していました。

「洗浄は、基本的にウォッシャー・ディスインフェクターに中性酵素洗剤を入れて行っていましたが、対応できない分については、用手洗浄で行っていました」(山田師長)。

しかし、文書の通りに滅菌すると器材が著しく劣化するという新たな問題が発生しました。「長時間(132℃、60分間)オートクレーブにかけると、金属製の器材の表面が木のように凸凹してしまいました。また、洗浄前の一次消毒に次亜塩素酸ナトリウムを使っていましたが、ひどい悪臭の上に、鋼製小物やマイクロ尖刀なども錆びてしまい、ことごとく使えなくなってしまいました。このときの損失は計り知れません」(藤原主任)。

その後、オートクレーブの設定時間を変更しましたが、現場のスタッフたちが不安を抱えながら業務を続けていたと言います。
そんな中で、2008年5月、山田師長がある研修会で「ハイリスク手技に用いた手術器具を介するCJD二次感染等について」という通知を耳にしました。

「過酸化水素プラズマ滅菌器が滅菌方法のひとつに加えられていたことが、私たちにとってはうれしい発見でした」と藤原主任。
さらに、山田師長も「明確な指針が示されていたので、『仕事がもっとやりやすくなるかもしれない』と思いました。すぐに情報を集め、手術部長に相談し、院内の感染対策委員会にはかりました。そして、滅菌方法を改めて見直し、それまで使用していた中性酵素洗剤をウォッシャー・ディスインフェクターと同じメーカーのアルカリ洗剤に切り替えました」と話します。

プラズマ滅菌器は2台体制にオートクレーブは134℃、18分で統一

「その後、2008年9月に公開された『プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版)要約』では、通常の過酸化水素プラズマ滅菌器の場合は2サイクル、NXタイプであれば1サイクル処理が推奨されており、さらに明確な対応ができると感じました」(藤原主任)。

「2008年12月には、従来使用していた200ℓタイプから、NXタイプと100ℓタイプの2台体制に更新しました。現在、当院ではハイリスク手技で使用した器材はNXタイプに、病棟や外来での再滅菌物に関しては100ℓタイプを使用しています」(山田師長)。ハイリスク手技で使用した器材もその他の器材も全て1サイクル処理なので、払いだした際の混乱はなかったと言います。

「それ以外の運用面においては効率化のために、器材を多少追加購入して、基本器材(写真1)のセット化を充実させるというマイナーチェンジでしたので、特別なチームを編成することはありませんでした。スタッフへの周知徹底は、リンクナース2名が積極的に取り組んでくれました。スタッフの疑問に答えるようなQ&A形式の見やすいマニュアル(写真2)を作成し、滅菌業務のポイントを中央材料室の各所に表示してくれています。ひと目でわかると、スタッフたちにも好評です」(藤原主任)。

現在、滅菌器の1日の稼働率は、オートクレーブが1台あたり1.3〜1.8回、過酸化水素プラズマ滅菌器NXタイプが1.2回、100ℓタイプが1.1回です。

「ハイリスク手技で使用した器材は、ウォッシャー・ディスインフェクター洗浄、用手洗浄に関わらず、オートクレーブの滅菌時間を一律18分間に統一しています。ただし、非耐熱器材については、過酸化水素プラズマ滅菌器NXタイプにかけています」(山田師長)。

写真1 基本器材セット

写真1 基本器材セット

写真2 オリジナルの作業マニュアル

写真2 オリジナルの作業マニュアル

セミナーなどで情報収集し常に迅速な対応を

「プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版)要約」をスムーズに導入できた理由を、大里先生は次のように話します。
「最新・最良の医療が提供できるように、マイナーチェンジを繰り返すことが大切ではないでしょうか。小さな改善であれば、大きな労力はいりませんが、いったん面倒くさがってしまうと、対応が遅れてしまい、現場も混乱してしまいます。当院では、スタッフたちがいろんな情報を持ってきてくれます。私たち感染対策委員会は、それに対して院内の手続きをとるだけです。院内には、感染制御のみを専門にやっている人間はいません。

藤原 睦 さん、山田 眞弓 さんの写真

それぞれがさまざまな役割を兼務しています。その中で、一人ひとりが自分の仕事に誇りを持ち、常に最良の医療を患者さんに提供しようと頑張っています。みんな明るく、コミュニケーションも盛んで、チームワークの中で、さまざまな問題を解決していきます。どんな仕事も最後は『人』なんでしょうね」。

「手術室では、スタッフ全員が患者さんのために一つの目標に向かって、一人ひとりの仕事に精一杯取り組みます。その目標が達成されたときは、この上ない喜びに包まれます。良い仲間に囲まれて幸せです」(藤原主任)。

最後に大里先生は「ガイドラインに『ハイリスク』という言葉があります。まさに私たち医者や看護師は常にハイリスクにさらされているわけです。日頃から標準予防策をきちんと実践することが大切で、その延長としてハイリスク手技対策があるととらえています。そう考えれば、私たちが選ぶべき道は自然と見えてくるはずです」と締めくくられました。

ガイドラインに沿った滅菌処理体制をいち早く確立した中村記念病院は、これからも地域から信頼される存在としてさらに発展していくことは間違いないでしょう。

施設の紹介

[画像] 医療法人医仁会 中村記念病院

医療法人医仁会 中村記念病院

北海道札幌市中央区南1条西14丁目
病床数:504床
手術室数:4室
手術件数:1099 件
(2008年度)

医療法人医仁会 中村記念病院のウェブサイト

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