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  5. 2010年5月 Vol.18

滅菌関連情報 PLASMA LINK | ASP Japan合同会社 〜2010年5月 Vol.18

User Report ガイドラインより厳しい自主基準
すべての器材についてより詳しい滅菌の記録を残す

独立行政法人 労働者健康福祉機構 関東労災病院
(神奈川県川崎市)

この記事のテーマ
  • 滅菌保証

関東労災病院は、日本医療機器学会(旧 日本医科器械学会)が推奨するガイドラインより厳しい自主基準で、滅菌保証に取り組んでいます。目的は患者を感染症から守ること。そのために、日常の滅菌保証手順を確立し、また、万一リコールが起きた時のためのマニュアルも用意しました。ここにいたるまでの経緯と実際の運用について伺いました。

独立行政法人 労働者健康福祉機構 関東労災病院(神奈川県川崎市)

過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌器は一日あたり6回から7回稼働

関東労災病院は1953年に、京浜重化学工業地帯での労働災害による被災労働者対策と地域医療の充実を図る目的で設立されました。「現在は、対象を労働者に限ることなく、川崎市中原区を中心とした地域住民の予防および治療のために力を尽くしています」と麻酔科部長の横田 哲也先生が説明するように、東急目黒線沿線における中核病院として、地域における救急・急性期・高度先進医療を提供しています。

10室ある手術室では、2009年に5,782件の手術が行われました。1980年にスポーツ障害や外傷の治療を目的にした日本で初めてのスポーツ整形外科を備えた同院らしく、「手術のうちの約半数が整形外科で、インプラントを扱うことが多いです」と手術室の師長補佐である昆野 亞友子さんは話します。

手術に必要な器材の滅菌には、ハイスピードを含めてオートクレーブを3台、ホルマリンガス滅菌器を1台、ステラッド® 100Sを1台、中央材料室で運用しています。

「感染は多くの患者さまの命に関わるので、感染を防ぐための滅菌は非常に重要です。この部分は、安心して中央材料室に任せています」と横田先生が言うように、感染のない病院を実現するため、これらの滅菌器がフルに活用されています。滅菌器のうち、最も使用頻度が高いのはステラッド® 100Sで、一日あたり6回から7回稼働させています。

マーケティング室プロダクトグループ主事 丹波 正寿 氏

麻酔科 部長
横田 哲也 先生

TP事業部開発グループ主事 土田 和俊 氏

看護部 手術室 師長補佐
昆野 亞友子 さん

同院の中央材料室では、滅菌器の稼働前には、滅菌物の乾燥が十分に行われているか、チャンバーに異常がないかなどの目視によるチェックが行われています。

また、実際に滅菌作業が行われたことの確認のため、ステラッド® 100Sの使用時にはすべての器材に化学的インジケーター(CI)を挿入しています。

器械は壊れることもあるし人間の行動には間違いもある

さらに、同院では生物学的インジケーター(BI)も稼働時には毎回必ず使用しています。これは日本医療機器学会(旧 日本医科器械学会)が刊行した「医療現場における滅菌保証のガイドライン 2005」で推奨されている「少なくとも1日1回以上」を上回る、厳しい滅菌保証のチェック体制です。BIを培養する際には、毎回比較対象となる陽性コントローラーも用いています。

もちろん、毎回BIを使用すればその分コストはかかります。「コストが気にならないわけではありませんが、きちんと滅菌を行うこと、そして滅菌の保証を行うことが中央材料室の役割です。もし患者さまに感染が発見された場合でも、しっかり滅菌管理しているので、その記録を提示できることで滅菌作業が原因ではないことを示せることが重要だと考えています」と手術室の看護師長兼中央材料室の看護師長である石黒 美津子さんは言います。

同院では、2004年にステラッド® 100Sを導入して以来、CIおよびBIを毎回使用する体制を変えていません。

看護部 手術室 看護師長 石黒 美津子 さん

看護部 手術室 看護師長
石黒 美津子 さん

同院の中央材料室が、ここまで厳格な滅菌保証のシステムを導入した背景には、当初は使い慣れていない滅菌器だからこそ、滅菌保証を念入りに行いたいというスタッフの思いがありました。滅菌が正常に行われたか、あるいは不良だったかの判定をBIで行う場合は、CIでの判定に比べて時間がかかるため、判定結果が出る前に払い出しを行うこともあります。しかし、「器械は壊れることもありますし、人間のすることには間違いもあります」という石黒さんの言葉に表われるように、すべての滅菌サイクルにBIを用いて滅菌保証を得て、万一、滅菌不良と疑われた場合には、器材のリコールを最小限に抑えられること(表参照)に、同院は大きな意味を見いだしています。

表 リコールの範囲(毎日4サイクル滅菌している場合)

表 リコールの範囲(毎日4サイクル滅菌している場合)

滅菌作業に対する高い意識を共有し徹底した手順の確立を実現

同院が取っているリコール対策の一つとして、すべての滅菌バッグに何月何日の何回目に滅菌を行ったものかが、明確にわかるようにスタンプを押しています(写真2参照)。

滅菌保証記録用紙(写真1参照)と照らし合わせることで、どの器材がどのような条件下で滅菌作業が行われたかが把握できます。BIを入れた時間と取り出した時間も記録し、滅菌作業者が記録したものは必ず滅菌責任者が最終確認をします。これらのチェックシートはすべて、ファイルに綴じた状態で保管されています。

滅菌手順にミスがあったり、事故につながりかねない事態が生じた場合には、その場で写真を撮り、レポート形式で滅菌に関わるスタッフ全員が情報共有できるような体制も整っています。

写真2 全滅菌バッグをスタンプで管理

写真2 全滅菌バッグをスタンプで管理

写真1 滅菌保証記録用紙

写真1 滅菌保証記録用紙

このような徹底した体制を確立した背景には、「スタッフの一人ひとりが滅菌作業に対する高い意識を共有している」という特長が同院の中央材料室にはあると石黒さんは言います。それは「器械的制御の監視と記録」「CI」「BI」は日常のモニタリング方法として、それぞれが異なる役割を持っていて、それらすべてを使用してきっちりと管理することが重要だというものです。

マニュアルは患者を守るために万一の回収でも迅速対応を可能にする

これまで同院では、滅菌不良によって器材のリコールを経験したことはありません。しかし予知できない地震のように、いつ万一のことが起きても被害を最小限に食い止めるために、しっかりとしたリコールマニュアルが用意されています(写真3参照)。

「いざというときにスタッフ全員が統一した考えで行動できるので、マニュアルの存在は大きいと思います」と、石黒さんはその存在意義を強調します。

もしリコールマニュアルがなく、その場での判断を強いられれば、人はいろいろなことを考えてしまい必ずパニックになります。そのために必要な範囲に十分な通達ができず、器材の速やかな回収ができなくなってしまいます。

器材の回収が遅れると、滅菌が保証されていない器材で手術が行われるかもしれません。患者が感染症に罹患する可能性も高くなります。同院ではまず、これを最大のリスクと考えています。

写真3 リコールマニュアル

写真3 リコールマニュアル

そのほかにも、回収作業に中央材料室のスタッフ全26名がかり出されるとなると、ほかの滅菌作業に影響が出て、予定されていた手術が行えなくなる可能性が高くなります。これは病院の信用の失墜、または高額の訴訟などにつながりかねません。マニュアルは、こういった事態も想定して用意されました。

「先日、ある患者さまにプリオン病感染の疑いがかかりました。結局は陰性でしたが、突発的な事態が発生したときの対策は事前に準備すべきだと実感しました」と感染管理認定看護師の藤井 春子さんも話します。

看護部 感染管理認定看護師 藤井 春子 さん

看護部 感染管理認定看護師
藤井 春子 さん

病院機能評価Ver.6.0受審に向けさらに滅菌保証を深掘りする

「滅菌や感染への関心が高まったのは、過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌器の導入前後のころ」と藤井さんは言います。導入にあたり、どの器材にはどのような滅菌方法が適しているかを考え直す中で、スタッフの意識も変わっていきました。現在では、手術室の感染リンクナースの努力もあり、各病棟においても、「感染とは何か」「どうやったら防げるか」を考える研修会が毎月開催されています。

同院ではまもなく、病院機能評価のVer.6の審査を受ける予定です。病院機能評価Ver.6では、滅菌保証が重要なポイントとして指摘されています。石黒さんは「今後さらに、『滅菌の保証とはどういうことか』について、関係各部署と連携をして、考えを深めていきたいと考えています」と展望を語ってくれました。

写真4 生物学的インジケーター

写真4 生物学的インジケーター

施設の紹介

独立行政法人 労働者健康福祉機構 関東労災病院

神奈川県川崎市中原区木月住吉町1丁目1番
病床数:610 床 手術室数:10 室 手術件数:5,782 件(2009年度)

独立行政法人 労働者健康福祉機構 関東労災病院のウェブサイト

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関東労災病院

関東労災病スタッフ